公的年金の支給額を抑える「マクロ経済スライド」が2019年度(平成31年度)に発動することになりました。
発動は、2005年度の制度スタート以来2回目で、2015年度以来4年ぶりです。
マクロ経済スライドとは、少子高齢化の進展に応じて、年金額の伸びを抑制し、将来世代の給付水準を維持するためのものです。
友蔵「まる子がおばあちゃんになったとき年金をもらえるように、ワシたちの年金をちょっと減らして、貯金しておく仕組みじゃ」
ま「まる子へのお小遣いってことかな?」
友「そうじゃよかわいいまる子へのお小遣いじゃ」
ま「それなら今欲しいねシシシ」
友「・・」
賃金水準や物価水準が上昇時に、マクロ経済スライドは発動します。
近年はデフレ基調できているため、発動条件を満たさない年が多く、今回やっと2回目です。
2015年度は、前年度の消費税引上げによる物価上昇が要因となりましたが、今回も物価上昇の寄与した部分が大きいです。
この記事では、マクロ経済スライドについて解説します。
年金は賃金・物価上昇に応じて増える仕組み
老後の年金は終身年金です。
一般的には65歳から、20年、30年と長い期間に渡って受給を続けることになります。
この間、世の中の物価が上昇しているのにもかかわらず、受給し始めた当初のままの年金額ですと、生活が苦しくなります。
今は牛丼1杯400円程度なのでワンコインで買えますが、30年後には物価の上昇で1,000円になり、ワンコインでは購入できなくなっているかも知れないからです。
すなわち、物価が上昇する中、年金額がそのままですと、購買力が低下してしまうわけです。
そこで、年金の生活保障としての機能を保持するため、世の中の賃金水準や物価変動を年金額に反映させることになっています。
つまり、賃金水準や物価が上がれば年金額も上がる、その逆に賃金水準や物価が下がれば年金額も下がる、仕組みを基本としています。
上昇分を負担するのは現役世代
では、賃金・物価上昇などで高齢者が受給する年金額が上がったときに、その上がった分を負担するのは誰でしょう?
それはそのときの現役世代です。
現役世代が稼いだ給料から保険料が天引きされるなどして、それが増え続ける年金の財源になるのです。
そこで、この年金額の改定については、支え手である現役世代に十分配慮しながら改定します。
例えば手取り賃金が1.0%増えたら、受給世代の年金額も1.0%増やす、というのが基本ルールです。
しかし、これで終わりではありません。
そのありのまま年金額を1.0%増やしたら、そのときはよくても、将来の年金財政が厳しくなり、今の現役世代が将来、不利益を受けることになります。
今後、少子高齢化が進むことが分かっているからです。
すなわち、支え手である現役世代の人口が減少するため、一人あたりの手取り賃金が増えたとしても、全体としての支える能力は弱くなります。
一方で、高齢者の余命は伸び続け、年金の支給期間も徐々に長くなり、生涯の支給総額は増加します。
ありのままに年金額を増やしていくと、将来的に年金財政が厳しくなるのはわかりきっているのです。
少子高齢化の進展に応じて年金上昇を抑制する仕組み
そこで、少子高齢化が進展しても年金制度が維持できるようにするため、その進展具合に応じて年金額の伸びを抑制する仕組みがマクロ経済スライドの仕組みです。
その仕組みは、その年の年金額が増える際に、その伸び幅を少し縮めさせていただきますよ、いえいえ、もちろん伸び幅を縮めるだけですから、前の年の年金額を下回るようなことはしませんよ、というものです。
年金制度を持続させるためにマクロ経済スライドの仕組みが鳴り物入りで導入されたのが平成17年度からですが、実際に発動したのは2回限りです。
「発動しないのがデフォルト」になっている状況を打破するため導入されたのがキャリーオーバー制度です。
すなわち、その年、マクロ経済スライドが発動せず、調整できなかった未調整分は、翌年度以後に繰り越して調整するという仕組みです。
すなわち「ツケ」にしておくということです。
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執筆/資格の大原 社会保険労務士講座
「時間の達人シリーズ社労士24」「経験者合格コース」を担当致しております。
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