令和3年6月、改正育児・介護休業法が成立、公布されました。
改正内容は令和4年1月1日から段階的に施行されます。
そのうち、令和4年4月1日から、
① 育児休業を取得しやすい雇用環境整備
② 妊娠・出産の申出をした労働者に対する個別の周知・意向確認の措置
が企業に義務付けられます。
狙いは、育児と仕事を両立しやすい職場環境を整えることです。
具体的には
①は研修や相談窓口の設置等
②は個別面談や書面による情報提供
といった義務です。
”男性版産休”ともいわれる「出生時育休」に注目が行きがちですが、こちらの改正も、企業として対応が必要な大事な改正です。
育児休業を取得しやすい雇用環境整備
条文は次のとおりです。
(雇用環境の整備及び雇用管理等に関する措置)
第二十二条 事業主は、育児休業申出が円滑に行われるようにするため、次の各号のいずれかの措置を講じなければならない。
一 その雇用する労働者に対する育児休業に係る研修の実施
二 育児休業に関する相談体制の整備
三 その他厚生労働省令で定める育児休業に係る雇用環境の整備に関する措置
新制度及び現行育児休業を取得しやすい雇用環境の整備の措置を事業主に義務付ける規定です。
従来は環境整備に関する規定が存在していませんでしたが、育児休業を取得しやすい職場づくりを狙いとして、義務化されました。
具体的な内容は、研修、相談窓口設置等の複数の選択肢からいずれかを選択します。
環境整備に当たっては、短期はもとより1か月以上の長期の休業の取得を希望する労働者が希望する期間を取得できるよう事業主が配慮することを指針において示す予定です。
妊娠・出産の申出をした労働者に対する個別の周知・意向確認の措置
条文は次のとおりです。
(妊娠又は出産等についての申出があった場合における措置等)
第二十一条 事業主は、労働者が当該事業主に対し、当該労働者又はその配偶者が妊娠し、又は出産したことその他これに準ずるものとして厚生労働省令で定める事実を申し出たときは、厚生労働省令で定めるところにより、当該労働者に対して、育児休業に関する制度その他の厚生労働省令で定める事項を知らせるとともに、育児休業申出に係る当該労働者の意向を確認するための面談その他の厚生労働省令で定める措置を講じなければならない。
2 事業主は、労働者が前項の規定による申出をしたことを理由として、当該労働者に対して解雇その他不利益な取扱いをしてはならない。
労働者又は配偶者が妊娠又は出産した旨等の申出をしたときに、当該労働者に対し新制度及び現行の育児休業制度等を周知するとともに、これらの制度の取得意向を確認するための措置を義務づけます。
従来は、個別周知の努力義務のみで、育児等のための休暇・休業の取得に際し、男性では6割以上が企業からの働きかけがなかったと回答しています。
この個別周知を強化する目的で、義務化されました。
周知の方法は、面談での制度説明、書面等による制度の情報提供等の複数の選択肢からいずれかを選択とする予定です【省令事項】 。
取得意向の確認については、育児休業の取得を控えさせるような形での周知及び意向確認を認めないことを指針において示す予定となっています。
「育児休業とるの?ほんと?」といったような伝え方はNGということですね。
あわせて、妊娠又は出産等についての申出があったこと等を理由とした不利益取扱いの禁止の規定を追加することも規定されています。
不当待遇した企業からの求人受け取り拒否
これに関連して、妊娠・出産や男性の育児休業の申し出などを理由に労働者を不当に扱った企業の求人について、ハローワークや民間事業者が受け取りを拒めるよう政令を改正する予定です。
厚労省からの指導や是正勧告に従わず、公表された企業が対象となります。
法令を順守しない企業を減らし、育児と仕事を両立しやすい環境を整える狙いです。
1.制度の概要
職業安定法第5条の5において、職業紹介事業者等に対し、求人の全件受理の義務を課しているところ、求職者の就業継続に重大な影響を及ぼす求人を未然に排除するため、同条第1項第3号において、一定の労働関係法令に違反する求人者からの求人については受理しないことができることとしている。
違反した場合に求人不受理にできる対象条項は職業安定法施行令、対象となるケースは職業安定法施行規則で規定している。
・労働基準法
・最低賃金法
⇒過去1年間に2回以上、同一条項違反で是正指導を受けた場合:是正後6か月経過まで不受理
送検・公表された場合:送検後1年経過まで不受理
・職業安定法
・雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保等に関する法律
・育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律
⇒法違反の是正を求める勧告等に従わずに公表された場合:是正後6か月経過まで不受理
改正内容
○ 育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律及び雇用保険法の一部を改正する法律の施行に伴い、育介法に以下の規定が新設されることから、職業安定法施行令において、これらの規定に違反し、是正を求める勧告に従わずに公表された場合についても求人不受理とすることができる対象に追加する。
- ① 妊娠又は出産等についての申出をしたことを理由とした不利益取扱いの禁止(改正育介法第21条第2項)
- ② 出生時育児休業申出に関する事業主の雇用管理上の義務(改正育介法第9条の3第1項)
- ③ 出生時育児休業申出をしたこと等を理由とした不利益取扱いの禁止(改正育介法第 10 条)
職業安定法第五条の五第一項第三号の規定に基づき、公共職業安定所、特定地方公共団体及び職業紹介事業者が、育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律の規定のうち、その規定に反して公表等の措置が講じられた者からの求人の申込みを受理しないことができるものを定めた職業安定法施行令第一条第六号に、育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律及び雇用保険法の一部を改正する法律により育介法に新設された妊娠又は出産等についての申出があったこと等を理由とした不利益取扱いの禁止の規定を追加することとする。
3.施行期日等
公布日:①令和3年9月下旬(予定)、②③令和4年1月(予定)
施行日:①令和4年4月1日、②③令和4年 10 月1日
執筆/資格の大原 社会保険労務士講座
「時間の達人シリーズ社労士24」「経験者合格コース」を担当致しております。
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