働き方改革を推進するための関係法律の整備に関する法律による改正後の労働基準法の施行について

皆さん、こんにちは。

「改正後の労働基準法の施行について(基発0907第1号平成30年9月7日)」の行政文書のコピペです。

自分の教材作成資料としてアップしました。

はじめに

働き方改革を推進するための関係法律の整備に関する法律(平成30年法律第71号。以下「整備法」という。)の公布については、平成30年7月6日付け基発0706第1号・職発0706第2号・雇均発0706第1号「働き方改革を推進するための関係法律の整備に関する法律について」により通知したところであるが、整備法による改正後の労働基準法(昭和22年法律第49号。以下「新労基法」という。)、働き方改革を推進するための関係法律の整備に関する法律の施行に伴う厚生労働省関係省令の整備等に関する省令(平成30年厚生労働省令第112号。以下「整備省令」という。)による改正後の労働基準法施行規則(昭和22年厚生省令第23号。以下「新労基則」という。)及び労働基準法第三十六条第一項の協定で定める労働時間の延長及び休日の労働について留意すべき事項等に関する指針(平成30年厚生労働省告示第323号。以下「指針」という。)の内容等は以下のとおりであるので、これらの施行に遺漏なきを期されたい。

なお、新労基法第41条の2の内容(高度プロフェッショナル制度)等については、追って通知する。

第1 フレックスタイム制(新労基法第32条の3及び第32条の3の2並びに新労基則第12条の3関係)

1 趣旨

フレックスタイム制は、一定の期間(清算期間)の総労働時間を定めておき、労働者がその範囲内で各日の始業及び終業の時刻を選択して働くことにより、労働者が仕事と生活の調和を図りながら効率的に働くことを可能とし、労働時間を短縮しようとする制度である。

整備法においては、子育てや介護、自己啓発など様々な生活上のニーズと仕事との調和を図りつつ、効率的な働き方を一層可能にするため、フレックスタイム制がより利用しやすい制度となるよう、清算期間の上限の延長等の見直しを行ったものであること。

なお、フレックスタイム制の運用に当たっては、使用者が各日の始業・終業時刻を画一的に特定することは認められないことに留意すること。

2 清算期間の上限の延長(新労基法第32条の3第1項関係)

仕事と生活の調和を一層図りやすくするため、フレックスタイム制における清算期間の上限をこれまでの1箇月以内から3箇月以内に延長したものであること。

3 清算期間が1箇月を超え3箇月以内である場合の過重労働防止(新労基法第32条の3第2項関係)

清算期間を3箇月以内に延長することにより、清算期間内の働き方によっては、各月における労働時間の長短の幅が大きくなることが生じ得る。

このため、対象労働者の過重労働を防止する観点から、清算期間が1箇月を超える場合には、当該清算期間を1箇月ごとに区分した各期間(最後に1箇月未満の期間を生じたときには、当該期間)ごとに当該各期間を平均し1週間当たりの労働時間が50時間を超えないこととしたものであること。

また、フレックスタイム制の場合にも、使用者には各日の労働時間の把握を行う責務があるが、清算期間が1箇月を超える場合には、対象労働者が自らの各月の時間外労働時間数を把握しにくくなることが懸念されるため、使用者は、対象労働者の各月の労働時間数の実績を対象労働者に通知等することが望ましいこと。

なお、整備省令による改正後の労働安全衛生規則(昭和47年労働省令第32号)第52条の2第3項に基づき、休憩時間を除き1週間当たり40時間を超えて労働させた場合におけるその超えた時間が1月当たり80時間を超えた労働者に対しては、当該超えた時間に関する情報を通知しなければならないことに留意する必要があること。

加えて、清算期間が1箇月を超える場合であっても、1週平均50時間を超える労働時間について月60時間を超える時間外労働に対して5割以上の率で計算した割増賃金の支払が必要であることや、法定の要件に該当した労働者について労働安全衛生法(昭和47年法律第57号)に基づき医師による面接指導を実施しなければならないことは従前と同様であり、使用者には、長時間労働の抑制に努めることが求められるものであること。

4 完全週休2日制の場合の清算期間における労働時間の限度(新労基法第32条の3第3項関係)

完全週休2日制の下で働く労働者(1週間の所定労働日数が5日の労働者)についてフレックスタイム制を適用する場合においては、曜日のめぐり次第で、1日8時間相当の労働でも清算期間における法定労働時間の総枠を超え得るという課題を解消するため、完全週休2日制の事業場において、労使協定により、所定労働日数に8時間を乗じた時間数を清算期間における法定労働時間の総枠とすることができるようにしたものであること。

この場合において、次の式で計算した時間数を1週間当たりの労働時間の限度とすることができるものであること。

合格者(女性)

従来、運用上の特別ルールだったものを法制化。


 

5 労使協定の締結及び届出(新労基法第32条の3第4項及び新労基則第12条の3関係)

フレックスタイム制の導入に当たっては、新労基法第32条の3第1項の規定に基づき、就業規則等の定め及び労使協定の締結を要するものであるが、今回の改正により、清算期間が1箇月を超えるものである場合においては、労使協定に有効期間の定めをするとともに、新労基則様式第3号の3により、当該労使協定を所轄労働基準監督署長に届け出なければならないものであること。

6 清算期間が1箇月を超える場合において、フレックスタイム制により労働させた期間が当該清算期間よりも短い労働者に係る賃金の取扱い(新労基法第32条の3の2関係)

清算期間が1箇月を超える場合において、フレックスタイム制により労働させた期間が当該清算期間よりも短い労働者については、当該労働させた期間を平均して1週間当たり40時間を超えて労働させた時間について、労働基準法第37条の規定の例により、割増賃金を支払わなければならないものであること。

7 法定時間外労働となる時間フレックスタイム制

フレックスタイム制を採用した場合に法定時間外労働となるのは、以下の(1)及び(2)に示す労働時間であること。なお、上記4の特例に留意すること。

(1)清算期間が1箇月以内の場合

従前のとおり、清算期間における実労働時間数のうち、法定労働時間の総枠を超えた時間が法定時間外労働となるものであること。具体的な計算方法は、次の式によること。

(2)清算期間が1箇月を超え3箇月以内の場合

次のア及びイを合計した時間が法定時間外労働となるものであること。

ア 清算期間を1箇月ごとに区分した各期間(最後に1箇月未満の期間を生じたときには、当該期間)における実労働時間のうち、各期間を平均し1週間当たり50時間を超えて労働させた時間。具体的な計算方法は、次の式によること。

イ 清算期間における総労働時間のうち、当該清算期間の法定労働時間の総枠を超えて労働させた時間(ただし、上記アで算定された時間外労働時間を除く。)

8 罰則(新労基法第120条関係)

新労基法第32条の3第4項に違反した使用者に対しては、新労基法第120条第1号の罰則の適用があること。

9 施行期日(整備法附則第1条関係)

フレックスタイム制に係る改正規定の施行期日は、平成31年4月1日であること。

わかりやすいフレックスタイム制のまとめ

第2 時間外労働の上限規制(新労基法第36条及び第139条から第142条まで、新労基則第16条等並びに指針関係)

1 趣旨

長時間労働は、健康の確保だけでなく、仕事と家庭生活との両立を困難にし、少子化の原因や、女性のキャリア形成を阻む原因、男性の家庭参加を阻む原因となっている。
これに対し、長時間労働を是正すれば、ワーク・ライフ・バランスが改善し、女性や高齢者も仕事に就きやすくなり、労働参加率の向上に結びつく。

こうしたことから、時間外労働の上限について、現行の労働基準法第三十六条第一項の協定で定める労働時間の延長の限度等に関する基準(平成10年労働省告示第154号。以下「限度基準告示」という。)に基づく指導ではなく、これまで上限無く時間外労働が可能となっていた臨時的な特別の事情がある場合として労使が合意した場合であっても、上回ることのできない上限を法律に規定し、これを罰則により担保するものであること。

2 新労基法第36条第1項の協定の届出(新労基法第36条第1項並びに新労基則第16条及び第70条関係)

新労基法第36条第1項の協定(以下「時間外・休日労働協定」という。)の届出様式を改めたものであること。

具体的には、時間外・休日労働協定に特別条項(新労基法第36条第5項に規定する事項に関する定めをいう。以下同じ。)を設けない場合にあっては新労基則様式第9号により、特別条項を設ける場合にあっては新労基則様式第9号の2により、所轄労働基準監督署長に届け出なければならないものであること。

併せて、新労基法第36条第11項に規定する業務に対応した様式(新労基則様式第9号の3)、新労基法第139条第2項、第140条第2項、第141条第4項又は第142条の規定により読み替えて適用する新労基法第36条の規定に対応した様式(新労基則様式第9号の4から第9号の7まで)を整備したものであること。

3 時間外・休日労働協定における協定事項(新労基法第36条第2項及び新労基則第17条第1項関係)

時間外・休日労働協定において、以下の(1)から(5)までの事項を定めることとしたものであること。

(1)新労基法第36条の規定により労働時間を延長し、又は休日に労働させることができることとされる労働者の範囲(新労基法第36条第2項第1号関係)

時間外・休日労働協定の対象となる「業務の種類」及び「労働者数」を協定するものであること。

(2)対象期間(新労基法第36条第2項第2号関係)

時間外・休日労働協定により労働時間を延長し、又は休日に労働させることができる期間をいい、時間外・休日労働協定において、1年間の上限を適用する期間を協定するものであること。
なお、事業が完了し、又は業務が終了するまでの期間が1年未満である場合においても、時間外・休日労働協定の対象期間は1年間とする必要があること。

(3)労働時間を延長し、又は休日に労働させることができる場合(新労基法第36条第2項第3号関係)

時間外労働又は休日労働をさせる必要のある具体的事由について協定するものであること。

(4)対象期間における1日、1箇月及び1年のそれぞれの期間について労働時間を延長して労働させることができる時間又は労働させることができる休日の日(新労基法第36条第2項第4号関係)

整備法による改正前の労働基準法における時間外・休日労働協定は、労働基準法施行規則第16条第1項において「1日」及び「1日を超える一定の期間」についての延長時間が必要的協定事項とされているが、今般、新労基法第36条第4項において、1箇月について45時間及び1年について360時間(対象期間が3箇月を超える1年単位の変形労働時間制により労働させる場合は1箇月について42時間及び1年について320時間)の原則的上限が法定された趣旨を踏まえ、整備法の施行後の時間外・休日労働協定においては「一日」、「一箇月」及び「一年」のそれぞれの期間について労働時間を延長して労働させることができる時間又は労働させることができる休日の日数について定めるものとしたものであること。

(5)労働時間の延長及び休日の労働を適正なものとするために必要な事項として厚生労働省令で定める事項(新労基法第36条第2項第5号及び新労基則第17条第1項関係)

ア 時間外・休日労働協定の有効期間の定め(新労基則第17条第1項第1号関係)

時間外・休日労働協定(労働協約による場合を除く。)において、当該時間外・休日労働協定の有効期間を定めるものであること。

イ 新労基法第36条第2項第4号の規定に基づき定める1年について労働時間を延長して労働させることができる時間の起算日(新労基則第17条第1項第2号関係)

時間外・休日労働協定において定めた新労基法第36条第2項第4号の1年について労働時間を延長して労働させることができる時間を適用する期間の起算日を明確にするものであること。

ウ 新労基法第36条第6項第2号及び第3号に定める要件を満たすこと。(新労基則第17条第1項第3号関係)

時間外・休日労働協定で定めるところにより時間外・休日労働を行わせる場合であっても、新労基法第36条第6項第2号及び第3号に規定する時間を超えて労働させることはできないものであり、時間外・休日労働協定においても、この規定を遵守することを協定するものであること。

これを受け、新労基則様式第9号及び第9号の2にチェックボックスを設け、当該チェックボックスにチェックがない場合には、当該時間外・休日労働協定は法定要件を欠くものとして無効となるものであること。

エ 限度時間を超えて労働させることができる場合(新労基則第17条第1項第4号関係)

時間外・休日労働協定に特別条項を設ける場合において、限度時間(新労基法第36条第3項の限度時間をいう。以下同じ。)を超えて労働させることができる具体的事由について協定するものであること。

オ 限度時間を超えて労働させる労働者に対する健康及び福祉を確保するための措置(新労基則第17条第1項第5号関係)

過重労働による健康障害の防止を図る観点から、時間外・休日労働協定に特別条項を設ける場合においては、限度時間を超えて労働させる労働者に対する健康及び福祉を確保するための措置(以下「健康福祉確保措置」という。)を協定することとしたものであること。なお、健康福祉確保措置として講ずることが望ましい措置の内容については、指針第8条に規定していること。

カ 限度時間を超えた労働に係る割増賃金の率(新労基則第17条第1項第6号関係)

時間外・休日労働協定に特別条項を設ける場合においては、限度時間を超える時間外労働に係る割増賃金率を1箇月及び1年のそれぞれについて定めなければならないものであること。
なお、限度時間を超える時間外労働に係る割増賃金率については、労働基準法第89条第2号の「賃金の決定、計算及び支払の方法」として就業規則に記載する必要があること。

キ 限度時間を超えて労働させる場合における手続(新労基則第17条第1項第7号関係)

限度基準告示第3条第1項に規定する手続と同様のものであり、時間外・休日労働協定の締結当事者間の手続として、時間外・休日労働協定を締結する使用者及び労働組合又は労働者の過半数を代表する者(以下「労使当事者」という。)が合意した協議、通告その他の手続(以下「所定の手続」という。)を定めなければならないものであること。

また、「手続」は、1箇月ごとに限度時間を超えて労働させることができる具体的事由が生じたときに必ず行わなければならず、所定の手続を経ることなく、限度時間を超えて労働時間を延長した場合は、法違反となるものであること。

なお、所定の手続がとられ、限度時間を超えて労働時間を延長する際には、その旨を届け出る必要はないが、労使当事者間においてとられた所定の手続の時期、内容、相手方等を書面等で明らかにしておく必要があること。

4 健康福祉確保措置の実施状況に関する記録の保存(新労基則第17条第2項関係)

使用者は、健康福祉確保措置の実施状況に関する記録を当該時間外・休日労働協定の有効期間中及び当該有効期間の満了後3年間保存しなければならないものであること。

5 限度時間(新労基法第36条第3項及び第4項関係)

時間外・休日労働協定において新労基法第36条第2項第4号の労働時間を延長して労働させる時間を定めるに当たっては、当該事業場の業務量、時間外労働の動向その他の事情を考慮して通常予見される時間外労働の範囲内において、限度時間を超えない時間に限るものとしたこと。

また、限度時間は、1箇月について45時間及び1年について360時間(対象期間が3箇月を超える1年単位の変形労働時間制により労働させる場合は、1箇月について42時間及び1年について320時間)であること。

6 特別条項を設ける場合の延長時間等(新労基法第36条第5項関係)

時間外・休日労働協定においては、上記3に掲げる事項のほか、当該事業場における通常予見することのできない業務量の大幅な増加等に伴い臨時的に限度時間を超えて労働させる必要がある場合において、1箇月について労働時間を延長して労働させ、及び休日において労働させることができる時間並びに1年について労働時間を延長して労働させることができる時間を定めることができることとしたものであること。

この場合において、1箇月について労働時間を延長して労働させ、及び休日において労働させることができる時間については、上記3(4)に関して協定した時間を含め100時間未満の範囲内としなければならず、1年について労働時間を延長して労働させることができる時間については、上記3(4)に関して協定した時間を含め720時間を超えない範囲内としなければならないものであること。

さらに、対象期間において労働時間を延長して労働させることができる時間が1箇月について45時間(対象期間が3箇月を超える1年単位の変形労働時間制により労働させる場合は42時間)を超えることができる月数を1年について6箇月以内の範囲で定めなければならないものであること。

7 時間外・休日労働協定で定めるところにより労働させる場合の実労働時間数の上限(新労基法第36条第6項及び新労基則第18条関係)

使用者は、時間外・休日労働協定で定めるところにより時間外・休日労働を行わせる場合であっても、以下の(1)から(3)までの要件を満たすものとしなければならないこと。

また、以下の(2)及び(3)の要件を満たしている場合であっても、連続する月の月末・月初に集中して時間外労働を行わせるなど、短期間に長時間の時間外労働を行わせることは望ましくないものであること。

なお、労働者が、自社、副業・兼業先の両方で雇用されている場合には、その使用者が当該労働者の他社での労働時間も適正に把握する責務を有しており、以下の(1)から(3)までの要件については、労働基準法第38条に基づき通算した労働時間により判断する必要があること。

その際、労働基準法における労働時間等の規定の適用等については、平成30年1月31日付け基発0131第2号「副業・兼業の促進に関するガイドライン」の周知等について」の別添1「副業・兼業の促進に関するガイドライン」を参考とすること。

(1)坑内労働その他厚生労働省令で定める健康上特に有害な業務について、1日における時間外労働時間数が2時間を超えないこと。(新労基法第36条第6項第1号及び新労基則第18条関係)

整備法による改正前の労働基準法第36条第1項ただし書と同様の内容であること。

(2)1箇月における時間外・休日労働時間数が100時間未満であること。(新労基法第36条第6項第2号関係)

1箇月について労働時間を延長して労働させ、及び休日において労働させた時間の合計時間が100時間未満であることを規定したものであること。

(3)対象期間の初日から1箇月ごとに区分した各期間の直前の1箇月、2箇月、3箇月、4箇月及び5箇月の期間を加えたそれぞれの期間における時間外・休日労働時間数が1箇月当たりの平均で80時間を超えないこと。(新労基法第36条第6項第3号関係)

時間外・休日労働協定の対象期間におけるいずれの2箇月間ないし6箇月間における労働時間を延長して労働させ、及び休日において労働させた時間の1箇月当たりの平均時間が80時間を超えないことを規定したものであること。

8 厚生労働大臣が定める指針(新労基法第36条第7項から第10項まで関係)

厚生労働大臣は、時間外・休日労働協定で定める労働時間の延長及び休日の労働について留意すべき事項、当該労働時間の延長に係る割増賃金の率その他の必要な事項について、労働者の健康、福祉、時間外労働の動向その他の事情を考慮して指針を定めることができるものとし、今般、指針を定めたものであること。
労使当事者は、当該時間外・休日労働協定の内容が指針に適合したものとなるようにしなければならないものであること。

また、行政官庁は、指針に関し、労使当事者に必要な助言及び指導を行うことができるものとし、当該助言及び指導を行うに当たっては、労働者の健康が確保されるよう特に配慮しなければならないものであること。

指針の内容等については、下記11のとおりであること。

9 適用除外(新労基法第36条第11項関係)

新たな技術、商品又は役務の研究開発に係る業務については、専門的、科学的な知識、技術を有する者が従事する新たな技術、商品又は役務の研究開発に係る業務の特殊性が存在する。

このため、限度時間(新労基法第36条第3項及び第4項)、時間外・休日労働協定に特別条項を設ける場合の要件(新労基法第36条第5項)、1箇月について労働時間を延長して労働させ、及び休日において労働させた時間の上限(新労基法第36条第6項第2号及び第3号)についての規定は、当該業務については適用しないものであること。

なお、新たな技術、商品又は役務の研究開発に係る業務とは、専門的、科学的な知識、技術を有する者が従事する新技術、新商品等の研究開発の業務をいうものであること。

10 適用猶予(新労基法第139条から第142条まで並びに新労基則第69条及び第71条関係)

以下の(1)から(4)までに掲げる事業又は業務については、その性格から直ちに時間外労働の上限規制を適用することになじまないため、猶予措置を設けたものであること。

(1)工作物の建設等の事業(新労基法第139条及び新労基則第69条第1項関係)

工作物の建設その他これに関連する事業として厚生労働省令で定める事業(以下「工作物の建設等の事業」という。)については、平成36年3月31日までの間、新労基法第36条第3項から第5項まで及び第6項(第2号及び第3号に係る部分に限る。)の規定は適用しないこととし、同年4月1日以降、当分の間、災害時における復旧及び復興の事業に限り、新労基法第36条第6項(第2号及び第3号に係る部分に限る。)の規定は適用しないこととしたものであること。

ア 猶予対象となる事業の範囲(新労基則第69条第1項関係)

新労基法第139条により時間外労働の上限規制の適用が猶予される工作物の建設等の事業の範囲は、新労基則第69条第1項各号に掲げる事業をいうものであること。

新労基則第69条第1項第2号に規定する事業とは、建設業に属する

事業の本店、支店等であって、労働基準法別表第1第3号に該当しないものをいうものであること。

また、新労基則第69条第1項第3号に規定する事業については、当該事業において交通誘導警備の業務を行う労働者に限るものであること。

イ 平成36年3月31日までの新労基法第36条の適用(新労基法第139条第2項及び新労基則第71条関係)

平成36年3月31日(同日及びその翌日を含む期間を定めている時間外・休日労働協定に関しては、当該協定に定める期間の初日から起算して1年を経過する日)までの間、時間外・休日労働協定においては、11日、21日を超え3箇月以内の範囲で労使当事者が定める期間、31年についての延長時間を協定するものであり、限度時間(新労基法第36条第3項及び第4項)、時間外・休日労働協定に特別条項を設ける場合の要件(新労基法第36条第5項)、1箇月について労働時間を延長して労働させ、及び休日において労働させた時間の上限(新労基法第36条第6項第2号及び第3号)についての規定は適用されないものであること。
また、新労基則第17条第1項第3号から第7号までの規定は適用されないものであること。

ウ 平成36年4月1日以降の新労基法第36条の適用(新労基法第139条第1項関係)

平成36年4月1日以降は、災害時における復旧及び復興の事業を除き、工作物の建設等の事業に対して新労基法第36条の規定が全面的に適用されるものであること。災害時における復旧及び復興の事業については、平成36年4月1日以降も、当分の間、1箇月について労働時間を延長して労働させ、及び休日において労働させた時間の上限(新労基法第36条第6項第2号及び第3号)についての規定は適用されず、特別条項において定める1箇月の時間外・休日労働時間数は、労使当事者間において、事業場の実情に応じた時間数を協定するものであること。

(2)自動車の運転の業務(新労基法第140条及び新労基則第69条第2項関係)

自動車の運転の業務については、平成36年3月31日までの間、新労基法第36条第3項から第5項まで及び第6項(第2号及び第3号に係る部分に限る。)の規定は適用しないこととし、同年4月1日以降、当分の間、時間外労働の上限規制として1年について960時間以内の規制を適用することとしたものであること。

ア 猶予対象となる業務の範囲(新労基則第69条第2項関係)

新労基法第140条により時間外労働の上限規制の適用が猶予される自動車の運転の業務の範囲は、新労基則第69条第2項に規定する業務をいうものであり、自動者運転者の労働時間等の改善のための基準(平成元年労働省告示第7号)の対象となる自動車運転者の業務と同義であること。

イ 平成36年3月31日までの新労基法第36条の適用(新労基法第140条第2項及び新労基則第71条関係)

平成36年3月31日(同日及びその翌日を含む期間を定めている時間外・休日労働協定に関しては、当該協定に定める期間の初日から起算して1年を経過する日)までの間、時間外・休日労働協定においては、11日、21日を超え3箇月以内の範囲で労使当事者が定める期間、31年についての延長時間を協定するものであり、限度時間(新労基法第36条第3項及び第4項)、時間外・休日労働協定に特別条項を設ける場合の要件(新労基法第36条第5項)、1箇月について労働時間を延長して労働させ、及び休日において労働させた時間の上限(新労基法第36条第6項第2号及び第3号)についての規定は適用されないものであること。

また、新労基則第17条第1項第3号から第7号までの規定は適用されないものであること。

ウ 平成36年4月1日以降の新労基法第36条の適用(新労基法第140条第1項関係)

平成36年4月1日以降は、当分の間、1箇月について労働時間を延長して労働させ、及び休日において労働させた時間の上限(新労基法第36条第6項第2号及び第3号)についての規定は適用されず、特別条項において定める時間外・休日労働時間数は、労使当事者間において、1箇月については事業場の実情に応じた時間数を、1年については960時間を超えない範囲内の時間数をそれぞれ協定するものであること。

(3)医業に従事する医師(新労基法第141条関係)

医業に従事する医師については、時間外労働の上限規制を適用するに当たって、医師法(昭和23年法律第201号)第19条第1項に基づく応召義務等の特殊性を踏まえた対応が必要であることから、平成36年4月1日から時間外労働の上限規制を適用することとし、具体的な規制の在り方等については、現在、医療界の参加の下で有識者による検討を行っているものであること。

ア 猶予対象となる医師の範囲(新労基法第141条第1項関係)

新労基法第141条第1項に規定する医師の範囲については、有識者による検討結果等を踏まえながら、今後厚生労働省令で定めることとしているものであること。

イ 平成36年3月31日までの新労基法第36条の適用(新労基法第141条第4項及び新労基則第71条関係)

平成36年3月31日(同日及びその翌日を含む期間を定めている時間外・休日労働協定に関しては、当該協定に定める期間の初日から起算して1年を経過する日)までの間、時間外・休日労働協定においては、11日、21日を超え3箇月以内の範囲で労使当事者が定める期間、31年についての延長時間を協定するものであり、限度時間(新労基法第36条第3項及び第4項)、時間外・休日労働協定に特別条項を設ける場合の要件(新労基法第36条第5項)、1箇月について労働時間を延長して労働させ、及び休日において労働させた時間の上限(新労基法第36条第6項第2号及び第3号)についての規定は適用されないものであること。
また、新労基則第17条第1項第3号から第7号までの規定は適用されないものであること。

ウ 平成36年4月1日以降の新労基法第36条の適用(新労基法第141条第1項から第3項まで関係)

平成36年4月1日以降は、当分の間、労働時間を延長して労働させることができる時間を協定するに当たっては、新労基法第36条第2項第2号の対象期間における時間数を協定するものであり、1日、1箇月及び1年の区分は設けないものであること。また、新労基法第36条第2項第3号に基づき協定する時間外労働の原則的上限については、別途厚生労働省令で定めることとしたものであること。

また、時間外・休日労働協定に特別条項を設ける場合の協定事項や時間外・休日労働時間数の上限については、新労基法第36条第5項によらず、別途厚生労働省令で定めることとしたものであること。

さらに、時間外・休日労働協定で定めるところにより労働させる場合の実労働時間数の上限については、新労基法第36条第6項によらず、別途厚生労働省令で定めることとしたものであること。

(4)鹿児島県及び沖縄県における砂糖を製造する事業(新労基法第142条及び新労基則第71条関係)

鹿児島県及び沖縄県における砂糖を製造する事業については、平成36年3月31日(同日及びその翌日を含む期間を定めている時間外・休日労働協定に関しては、当該協定に定める期間の初日から起算して1年を経過する日)までの間、時間外・休日労働協定に特別条項を設ける場合の1箇月についての上限(新労基法第36条第5項)、1箇月について労働時間を延長して労働させ、及び休日において労働させた時間の上限(新労基法第36条第6項第2号及び第3号)についての規定は適用されないものであること。

また、新労基則第17条第1項第3号から第7号までの規定は適用されないものであること。

平成36年4月1日以降は、新労基法第36条の規定が全面的に適用されるものであること。

分かりやすい時間外労働の上限規制のまとめ

11 労働基準法第三十六条第一項の協定で定める労働時間の延長及び休日の労働について留意すべき事項等に関する指針関係

(1)目的(指針第1条関係)

指針は、時間外・休日労働協定で定める労働時間の延長及び休日の労働
について留意すべき事項、当該労働時間の延長に係る割増賃金の率その他の必要な事項を定めることにより、労働時間の延長及び休日の労働を適正なものとすることを目的とするものであること。

(2)労使当事者の責務(指針第2条関係)

時間外・休日労働協定による労働時間の延長及び休日の労働は必要最小限にとどめられるべきであり、また、労働時間の延長は原則として限度時間を超えないものとされていることから、労使当事者は、これらに十分留意した上で時間外・休日労働協定をするように努めなければならないものであること。

(3)使用者の責務(指針第3条関係)

使用者は、時間外・休日労働協定において定めた範囲内で時間外・休日労働を行わせた場合であっても、労働契約法(平成19年法律第128号)第5条の規定に基づく安全配慮義務を負うことに留意しなければならないものであること。

また、使用者は、平成13年12月12日付け基発第1063号「脳血管疾患及び虚血性心疾患等(負傷に起因するものを除く。)の認定基準について」において、11週間当たり40時間を超えて労働した時間が1箇月においておおむね45時間を超えて長くなるほど、業務と脳・心臓疾患の発症との関連性が徐々に強まると評価できるとされていること、2発症前1箇月間におおむね100時間又は発症前2箇月間から6箇月間までにおいて1箇月当たりおおむね80時間を超える場合には業務と脳・心臓疾患の発症との関連性が強いと評価できるとされていることに留意しなければならないものであること。

(4)業務区分の細分化(指針第4条関係)

労使当事者は、時間外・休日労働協定において労働時間を延長し、又は
休日に労働させることができる業務の種類について定めるに当たっては、業務の区分を細分化することにより当該業務の範囲を明確にしなければならないものであること。
これは、業務の区分を細分化することにより当該業務の種類ごとの時間外労働時間をきめ細かに協定するものとしたものであり、労使当事者は、時間外・休日労働協定の締結に当たり各事業場における業務の実態に即し、業務の種類を具体的に区分しなければならないものであること。

(5)限度時間を超えて延長時間を定めるに当たっての留意事項(指針第5条関係)

労使当事者は、時間外・休日労働協定において限度時間を超えて労働させることができる場合を定めるに当たっては、当該事業場における通常予見することのできない業務量の大幅な増加等に伴い臨時的に限度時間を超えて労働させる必要がある場合をできる限り具体的に定めなければならず、「業務の都合上必要な場合」、「業務上やむを得ない場合」など恒常的な長時間労働を招くおそれがあるものを定めることは認められないことに留意しなければならないものであること。

また、労使当事者は、特別条項において1箇月の時間外・休日労働時間数及び1年の時間外労働時間数を協定するに当たっては、労働時間の延長は原則として限度時間を超えないものとされていることに十分留意し、当該時間を限度時間にできる限り近づけるように努めなければならないものであること。
さらに、労使当事者は、時間外・休日労働協定において限度時間を超えて労働時間を延長して労働させることができる時間に係る割増賃金の率を定めるに当たっては、当該割増賃金の率を、労働基準法第三十七条第一項の時間外及び休日の割増賃金に係る率の最低限度を定める政令(平成6年政令第5号)で定める率(2割5分)を超える率とするように努めなければならないものであること。

(6)1箇月に満たない期間において労働する労働者についての延長時間の目安(指針第6条関係)

労使当事者は、期間の定めのある労働契約で労働する労働者その他の1箇月に満たない期間において労働する労働者について、時間外・休日労働協定において労働時間を延長して労働させることができる時間を定めるに当たっては、指針別表の上欄に掲げる期間の区分に応じ、それぞれ同表の下欄に掲げる目安時間を超えないものとするように努めなければならないものであること。

 

(7)休日の労働を定めるに当たっての留意事項(指針第7条関係)

労使当事者は、時間外・休日労働協定において休日の労働を定めるに当たっては労働させることができる休日の日数をできる限り少なくし、及び休日に労働させる時間をできる限り短くするように努めなければならないものであること。

(8)健康福祉確保措置(指針第8条関係)

労使当事者は、時間外・休日労働協定に特別条項を設ける場合において、健康福祉確保措置を協定するに当たっては、次に掲げるもののうちから協定することが望ましいことに留意しなければならないものであること。

1 労働時間が一定時間を超えた労働者に医師による面接指導を実施すること。

2 労働基準法第37条第4項に規定する時刻の間において労働させる回数を1箇月について一定回数以内とすること。

3 終業から始業までに一定時間以上の継続した休息時間を確保すること。

4 労働者の勤務状況及びその健康状態に応じて、代償休日又は特別な休暇を付与すること。

5 労働者の勤務状況及びその健康状態に応じて、健康診断を実施すること。

6 年次有給休暇についてまとまった日数連続して取得することを含めてその取得を促進すること。

7 心とからだの健康問題についての相談窓口を設置すること。

8 労働者の勤務状況及びその健康状態に配慮し、必要な場合には適切な部署に配置転換をすること。

9 必要に応じて、産業医等による助言・指導を受け、又は労働者に産業医等による保健指導を受けさせること。

(9)適用除外等(指針第9条及び指針附則関係)

ア 新労基法第36条第11項に規定する業務(指針第9条関係)

新労基法第36条第11項に規定する業務については、指針第5条、第6条及び第8条の規定は適用しないものであること。また、新労基法第36条第11項に規定する業務に係る時間外・休日労働協定をする労使当事者は、延長時間を定めるに当たっては、限度時間を勘案することが望ましいことに留意しなければならないものであること。

さらに、新労基法第36条第11項に規定する業務に係る時間外・休日労働協定をする労使当事者は、限度時間に相当する時間を超えて労働時間を延長して労働させることができることとする場合においては、当該時間外・休日労働協定において当該時間を超えて労働させる労働者に対する健康及び福祉を確保するための措置を定めるように努めなければならず、当該措置については、指針第8条各号に掲げるもののうちから定めることが望ましいことに留意しなければならないものであること。

イ 新労基法第139条第2項、第140条第2項、第141条第4項又は第142条の規定の適用を受ける時間外・休日労働協定(指針附則第3項関係)

新労基法第139条第2項、第140条第2項、第141条第4項又は第142条の規定の適用を受ける時間外・休日労働協定についても、平成36年3月31日までの間、必要な読替えを行った上で、指針第9条第1項及び第2項を適用するものであること。

ウ 限度基準告示の取扱い(指針附則第2項関係)

限度基準告示は、廃止するものであること。

12 罰則(新労基法第119条関係)

新労基法第36条第6項に違反した使用者に対しては、新労基法第119条第1号の罰則の適用があること。

13 施行期日等(整備法附則第1条及び指針附則第1項関係)

時間外労働の上限規制に係る改正規定の施行期日及び指針の適用日は、平成31年4月1日であること。

14 経過措置(整備法附則第2条及び第3条関係)

(1)時間外・休日労働協定に関する経過措置(整備法附則第2条関係)

新労基法第36条の規定(新労基法第139条第2項、第140条第2項、第141条第4項及び第142条の規定により読み替えて適用する場合を含む。)は、平成31年4月1日以後の期間のみを定めている時間外・休日労働協定について適用するものであること。

平成31年3月31日を含む期間を定めている時間外・休日労働協定については、当該協定に定める期間の初日から起算して1年を経過する日までの間については、なお従前の例によることとし、改正前の労働基準法第36条、労働基準法施行規則及び限度基準告示等が適用されるものであること。

(2)中小事業主に関する経過措置(整備法附則第3条関係)

中小事業主(その資本金の額又は出資の総額が3億円(小売業又はサービス業を主たる事業とする事業主については5千万円、卸売業を主たる事業とする事業主については1億円)以下である事業主及びその常時使用する労働者の数が300人(小売業を主たる事業とする事業主については50人、卸売業又はサービス業を主たる事業とする事業主については100人)以下である事業主をいう。以下同じ。)の事業に係る時間外・休日労働協定(新労基法第139条第2項に規定する事業、第140条第2項に規定する業務、第141条第4項に規定する者及び第142条に規定する事業に係るものを除く。)については、平成32年4月1日から新労基法第36条の規定を適用するものであること。

平成32年3月31日を含む期間を定めている時間外・休日労働協定については、当該協定に定める期間の初日から起算して1年を経過する日までの間については、なお従前の例によることとし、改正前の労働基準法第36条、労働基準法施行規則及び限度基準告示等が適用されるものであること。

また、平成32年3月31日を含む期間を定める時間外・休日労働協定をする労使当事者は、当該協定をするに当たり、新労基法第36条第1項から第5項までの規定により当該協定に定める労働時間を延長させ、又は休日において労働させることができる時間数を勘案して協定をするように努めなければならないものとし、政府は、必要な情報の提供、助言その他の支援を行うものとしたこと。
さらに、行政官庁は、当分の間、中小事業主に対し新労基法第36条第9項の助言及び指導を行うに当たっては、中小企業における労働時間の動向、人材の確保の状況、取引の実態その他の事情を踏まえて行うよう配慮するものとしたこと。

第3 年次有給休暇(新労基法第39条及び新労基則第24条の5等関係)

1 趣旨

年次有給休暇の取得率が低迷しており、いわゆる正社員の約16%が年次有給休暇を1日も取得しておらず、また、年次有給休暇をほとんど取得していない労働者については長時間労働者の比率が高い実態にあることを踏まえ、年5日以上の年次有給休暇の取得が確実に進む仕組みを導入することとしたものであること。

2 年5日以上の年次有給休暇の確実な取得(新労基法第39条第7項及び第8項並びに新労基則第24条の5関係)

(1)使用者による時季指定(新労基法第39条第7項及び第8項関係)

使用者は、労働基準法第39条第1項から第3項までの規定により使用者が与えなければならない年次有給休暇(以下「年次有給休暇」という。)の日数が10労働日以上である労働者に係る年次有給休暇の日数のうち、5日については、基準日(継続勤務した期間を同条第2項に規定する6箇月経過日から1年ごとに区分した各期間(最後に1年未満の期間を生じたときは、当該期間)の初日をいう。以下同じ。)から1年以内の期間に、労働者ごとにその時季を定めることにより与えなければならないものであること。

この場合の使用者による時季指定の方法としては、例えば、年度当初に労働者の意見を聴いた上で年次有給休暇取得計画表を作成し、これに基づき年次有給休暇を付与すること等が考えられるものであること。

ただし、労働基準法第39条第5項又は第6項の規定により年次有給休暇を与えた場合においては、当該与えた年次有給休暇の日数(当該日数が5日を超える場合には、5日とする。)分については、時季を定めることにより与えることを要しないこと。すなわち、労働者が自ら時季指定して5日以上の年次有給休暇を取得した場合や、労働基準法第39条第6項に基づく計画的付与により5日以上の年次有給休暇を取得した場合には、使用者による時季指定は不要であること。

(2)年次有給休暇を基準日より前の日から与える場合の取扱い(新労基則第24条の5関係)

ア 10労働日以上の年次有給休暇を前倒しで付与する場合の取扱い(新労基則第24条の5第1項関係)

使用者は、年次有給休暇を当該年次有給休暇に係る基準日より前の日から10労働日以上与えることとしたときは、当該年次有給休暇の日数のうち5日については、基準日より前の日であって、10労働日以上の年次有給休暇を与えることとした日(以下「第一基準日」という。)から1年以内の期間に、その時季を定めることにより与えなければならないものであること。

イ 付与期間に重複が生じる場合の特例(新労基則第24条の5第2項関係)

上記アにかかわらず、使用者が10労働日以上の年次有給休暇を基準日又は第一基準日に与えることとし、かつ、当該基準日又は第一基準日から1年以内の特定の日(以下「第二基準日」という。)に新たに10労働日以上の年次有給休暇を与えることとしたときは、履行期間(基準日又は第一基準日を始期として、第二基準日から1年を経過する日を終期とする期間をいう。)の月数を12で除した数に5を乗じた日数について、当該履行期間中に、その時季を定めることにより与えることができること。

ウ 第一基準日から1年以内の期間又は履行期間が経過した場合の取扱い(新労基則第24条の5第3項関係)

第一基準日から1年以内の期間又は履行期間が経過した場合においては、その経過した日から1年ごとに区分した各期間(最後に1年未満の期間を生じたときは、当該期間)の初日を基準日とみなして新労基法第39条第7項本文の規定を適用するものであること。

エ 年次有給休暇の一部を基準日より前の日から与える場合の取扱い(新労基則第24条の5第4項関係)

使用者が年次有給休暇のうち10労働日未満の日数について基準日以前の日(以下「特定日」という。)に与えることとした場合において、特定日が複数あるときは、当該10労働日未満の日数が合わせて10労働日以上になる日までの間の特定日のうち最も遅い日を第一基準日とみなして新労基則第24条の5第1項から第3項までの規定を適用するものであること。この場合において、第一基準日とみなされた日より前に、労働基準法第39条第5項又は第6項の規定により与えた年次有給休暇の日数分については、時季を定めることにより与えることを要しないこと。

(3)半日単位の付与

半日単位の年次有給休暇の取扱い年次有給休暇の半日単位による付与については、年次有給休暇の取得促進の観点から、労働者がその取得を希望して時季を指定し、これに使用者が同意した場合であって、本来の取得方法による休暇取得の阻害とならない範囲で適切に運用される限りにおいて、問題がないものとして取り扱うこととしているが、この取扱いに変更はないものであること。

この現行の取扱いに沿って、半日単位の年次有給休暇を労働者が取得した場合については、新労基法第39条第8項の年次有給休暇を与えた場合として取り扱って差し支えないものであること。

また、新労基則第24条の6第1項の規定により労働者の意見を聴いた際に半日単位の年次有給休暇の取得の希望があった場合においては、使用者が新労基法第39条第7項の年次有給休暇の時季指定を半日単位で行うことも差し支えないものであること。

これらの場合において、半日単位の年次有給休暇の日数は0.5日として取り扱うものであること。

3 労働者からの意見聴取(新労基則第24条の6関係)

使用者は、新労基法第39条第7項の規定により、労働者に年次有給休暇を時季を定めることにより与えるに当たっては、あらかじめ、当該年次有給休暇を与えることを当該労働者に明らかにした上で、その時季について当該労働者の意見を聴かなければならないものであること。

また、使用者は、年次有給休暇の時季を定めるに当たっては、できる限り労働者の希望に沿った時季指定となるよう、聴取した意見を尊重するよう努めなければならないものであること。

4 年次有給休暇管理簿(新労基則第24条の7及び第55条の2関係)

使用者は、新労基法第39条第5項から第7項までの規定により年次有給休暇を与えたときは、時季、日数及び基準日(第一基準日及び第二基準日を含む。)を労働者ごとに明らかにした書類(以下「年次有給休暇管理簿」という。)を作成し、当該年次有給休暇を与えた期間中及び当該期間の満了後3年間保存しなければならないこと。

また、年次有給休暇管理簿については、労働者名簿又は賃金台帳とあわせて調製することができるものであること。

なお、年次有給休暇管理簿については、労働基準法第109条に規定する重要な書類には該当しないものであること。

5 罰則(新労基法第120条関係)

新労基法第39条第7項に違反した使用者に対しては、新労基法第120条第1号の罰則の適用があること。

6 施行期日(整備法附則第1条関係)

年次有給休暇に係る改正規定の施行期日は、平成31年4月1日であること。

7 経過措置(整備法附則第4条関係)

整備法の施行の際4月1日以外の日が基準日(年次有給休暇を当該年次有給休暇に係る基準日より前の日から与えることとした場合はその日)である労働者に係る年次有給休暇については、整備法の施行の日後の最初の基準日の前日までの間は、新労基法第39条第7項の規定にかかわらず、なお従前の例によることとし、改正前の労働基準法第39条が適用されるものであること。

第4 中小事業主における月60時間超の時間外労働に対する割増賃金率の適用猶予の見直し(新労基法第138条及び整備法附則第1条関係)

1 趣旨

中小事業主において特に長時間労働者の比率が高い業種を中心に、関係行政機関や業界団体等との連携の下、長時間労働の抑制に向けた環境整備を図りつつ、中小事業主に使用される労働者の長時間労働を抑制し、その健康確保等を図る観点から、月60時間を超える時間外労働の割増賃金率を5割以上とする労働基準法第37条第1項ただし書の規定について、中小事業主にも適用することとしたものであること。

2 猶予措置の廃止(新労基法第138条関係)

上記1の趣旨に基づき、労働基準法第138条を削除し、中小事業主についても月60時間を超える時間外労働の割増賃金率を5割以上としなければならないものとするものであること。

なお、週休制の原則等を定める労働基準法第35条が必ずしも休日を特定すべきことを求めていないことに着目し、月60時間を超える時間外労働に対する5割以上の割増賃金率の適用を回避するために休日振替を行うことにより、休日労働の割増賃金率である3割5分以上の割増賃金率を適用することは、労働基準法の趣旨を潜脱するものであり、望ましくないことに留意すること。

3 施行期日(整備法附則第1条関係)

猶予措置の廃止に係る改正規定の施行期日は、平成35年4月1日であること。

第5 検討規定(整備法附則第12条関係)

1 新労基法第36条の規定に係る検討(整備法附則第12条第1項関係)

政府は、整備法の施行後5年を経過した場合において、新労基法第36条の規定について、その施行の状況、労働時間の動向その他の事情を勘案しつつ検討を加え、必要があると認めるときは、その結果に基づいて所要の措置を講ずるものとされていること。

2 新労基法第139条及び第140条の規定に係る検討(整備法附則第12条第2項関係)

政府は、新労基法第139条に規定する事業及び新労基法第140条に規定する業務に係る新労基法第36条の規定の特例の廃止について、整備法施行後の労働時間の動向その他の事情を勘案しつつ引き続き検討するものとされていること。

3 改正後の各法律の規定に係る検討(整備法附則第12条第3項関係)

政府は、上記1及び2のほか、整備法の施行後5年を目途として、整備法による改正後の各法律の規定について、労働者と使用者の協議の促進等を通じて、仕事と生活の調和、労働条件の改善、雇用形態又は就業形態の異なる労働者の間の均衡のとれた待遇の確保その他の労働者の職業生活の充実を図る観点から、改正後の各法律の施行の状況等を勘案しつつ検討を加え、必要があると認めるときは、その結果に基づいて所要の措置を講ずるものとされていること。

第6 労働基準法施行規則の見直し(新労基則第5条及び第6条の2関係)

1 趣旨

労働政策審議会における建議を踏まえ、労働基準法施行規則について必要な見直しを行ったものであること。

2 労働条件の明示(新労基則第5条関係)

(1)明示しなければならない労働条件を事実と異なるものとしてはならないこと(新労基則第5条第2項関係)

使用者は、労働基準法第15条第1項の規定により明示しなければならないとされている労働条件について、事実と異なるものとしてはならないこととしたものであること。

この場合において、「事実と異なるもの」とは、同条第2項において、労働者が即時に労働契約を解除することができるとされる場合と同様に判断されることに留意すること。

(2)労働条件の明示の方法(新労基則第5条第4項関係)

労働条件明示の方法について、労働者が希望した場合には、1ファクシミリの送信、2電子メール等の送信(当該労働者が当該電子メール等の記録を出力することにより書面を作成することができるものに限る。)により明示することを可能としたものであること。

なお、整備省令による改正後の特定有期雇用労働者に係る労働基準法施行規則第5条の特例を定める省令(平成27年厚生労働省令第36号)第1条及び第2条における計画対象第一種特定有期雇用労働者及び計画対象第二種特定有期雇用労働者に係る労働条件の明示についても同様の改正を行ったものであること。

3 過半数代表者(新労基則第6条の2関係)

時間外・休日労働協定の締結等に際し、労働基準法の規定に基づき労働者の過半数を代表する者を選出するに当たっては、使用者側が指名するなど不適切な取扱いがみられるところである。このため、過半数代表者の要件として、「使用者の意向に基づき選出されたものでないこと」を新労基則において明記したものであること。

また、使用者は、過半数代表者がその事務を円滑に遂行することができるよう必要な配慮を行わなければならないこととしたものであること。

4 施行期日(整備省令附則第1条関係)

上記2及び3に係る改正規定の施行期日は、平成31年4月1日であること。

 

執筆/資格の大原 社会保険労務士講座

金沢 博憲金沢 博憲

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