国民年金第1号被保険者の産前産後期間中の保険料免除【2019年4月スタート】

2019年4月1日からスタートする国民年金第1号被保険者の産前産後休業期間の保険料免除(産休免除)をまとめます。

対象者は?

国民年金の第1号被保険者が出産した場合です。

出産とは、妊娠85日(4か月)以上の出産をいいます。
早産、死産、流産及び人工妊娠中絶された方を含みます。

いつから?

免除制度の施行日は同年4月1日です。

免除期間は、出産予定日又は出産日が属する月の前月から4か月間(多胎妊娠の場合は、出産予定日又は出産日が属する月の3か月前から6か月間)となっています。

・単胎妊娠では4か月分免除されます
・双子などの多胎妊娠では6ヶ月分免除されます

したがって、出産日が平成31年2月1日以降の方は、国民年金の産前産後期間中の免除制度が適用されます。

単胎妊娠では

・2月出産の場合は、4月分の保険料が免除されます。
・3月出産の場合は、4月分と5月分の保険料が免除されます。
・4月出産の場合は、4月分、5月分、6月分の保険料が免除されます。
・5月出産の場合は、4月分、5月分、6月分、7月分の保険料が免除されます。

免除の届出は同年4月1日から可能です。

住民登録をしている市(区)役所・町村役場の国民年金担当窓口へ提出します。

改正の趣旨

「公的年金制度の持続可能性の向上を図るための国民年金法等の一部を改正する法律」(平成28年法律第114号)において、次世代育成支援の観点から、
・ 国民年金の被保険者が出産を行った際には、その出産前後の一定期間の保険料については納付することを要しない
・ 当該期間を保険料納付済期間に算入される
こととされた。

 

まる子「出産すると保険料が免除って話、お母さんも対象なの?」
友蔵「対象にならんぞ。お母さんは、ヒロシの扶養じゃろ。第3号被保険者といってな。もともと保険料を納付する義務がないんじゃ。」
ま「3号?仮面ライダーみたいだね」
友「・・」

 

改正の概要

(1) 産前産後期間に係る国民年金保険料の免除(国民年金法第88条の2)

国民年金第1号被保険者について、出産の予定日(厚生労働省令で定める場合にあっては、出産の日)の属する月(以下「出産予定月」という。)の前月(多胎妊娠の場合は3か月前)から出産予定月の翌々月までの期間に係る保険料は納付することを要しない

出産予定日の属する月と実際の出産日の属する月が乖離した場合であっても、免除する期間は出産予定月の前月から出産予定月の翌々月までの4か月(多胎妊娠の場合は出産予定月の3か月前から出産予定月の翌々月までの6か月)とし、原則として変更は行わない。
なお、出産日以降に届出が行われた場合は、出産日を基準とし同様に取り扱う。(今後、 省令等において定める。)

※ 出産の範囲:健康保険法、労働基準法及び厚生年金保険法等 の他の社会保障制度と同様に、妊娠85日(4か月)以上の出産(死産、流産、早産を含む)

条文で確認

(2) 国民年金の保険料納付済期間とみなす期間(国民年金法第5条)

国民年金第 1 号被保険者について、産前産後期間に係る保険料免除期間(産前産後免除期間)を保険料納付済期間に算入される。
※ 産前産後免除は法定免除・申請免除よりも優先される。条文で確認
※ 産前産後免除期間は死亡一時金、脱退一時金についても、保険料納付済期間に算入される。

条文で確認

(3) 国民年金保険料の額の引上げ(国民年金法第87条)

平成31年度以降の年度の国民年金保険料の額は、産前産後免除期間を保険料納付済期間とみなし、当該期間を年金給付に反映させるために要する財源として、100円が上乗せされ、月額で 17,000 円(平成16年度価格)となる。

平成31年度の保険料額は、17,000円×0.965(保険料改定率)=16,410円となります。

条文で確認

(4) 付加保険料を納付することができる期間(国民年金法第87条の2)

産前産後期間に係る保険料免除は、他の保険料免除とは異なり、所得の有無にかかわらず保険料の負担を免除するものであることから、当該期間についても付加保険料を納付することができる

条文で確認

(5) 国民年金の任意加入等(国民年金法附則第5条など)

国民年金に任意加入している者は、他の保険料免除や猶予と同様に、産前産後期間に係る保険料免除は適用されない

条文で確認

条文で確認

条文の一部が修正された部分は黄色のマーカーを引いています。

(産休中の免除)第八十八条の二【新設】

被保険者は、出産の予定日(厚生労働省令で定める場合にあつては、出産の日。第百六条第一項及び第百八条第二項において「出産予定日」という。)の属する月(以下この条において「出産予定月」という。)の前月(多胎妊娠の場合においては、三月前)から出産予定月の翌々月までの期間に係る保険料は、納付することを要しない。

(用語の定義)第五条

この法律において、「保険料納付済期間」とは、第七条第一項第一号に規定する被保険者としての被保険者期間のうち納付された保険料(第九十六条の規定により徴収された保険料を含み、第九十条の二第一項から第三項までの規定によりその一部の額につき納付することを要しないものとされた保険料につきその残余の額が納付又は徴収されたものを除く。以下同じ。)に係るもの及び第八十八条の二の規定により納付することを要しないものとされた保険料に係るもの、第七条第一項第二号に規定する被保険者としての被保険者期間並びに同項第三号に規定する被保険者としての被保険者期間を合算した期間をいう。
 

(保険料)第八十七条

保険料の額は、次の表の上欄に掲げる月分についてそれぞれ同表の下欄に定める額に保険料改定率を乗じて得た額(その額に五円未満の端数が生じたときは、これを切り捨て、五円以上十円未満の端数が生じたときは、これを十円に切り上げるものとする。)とする。
 
平成三十一年度以後の年度に属する月の月分 一万七千円
 

(付加保険料)第八十七条の二

第一号被保険者(第八十九条第一項、第九十条第一項又は第九十条の三第一項の規定により保険料を納付することを要しないものとされている者、第九十条の二第一項から第三項までの規定によりその一部の額につき保険料を納付することを要しないものとされている者及び国民年金基金の加入員を除く。)は、厚生労働大臣に申し出て、その申出をした日の属する月以後の各月につき、前条第三項に定める額の保険料のほか、四百円の保険料を納付する者となることができる。
 
前項の規定による保険料の納付は、前条第三項に定める額の保険料の納付が行われた月(第九十四条第四項の規定により保険料が納付されたものとみなされた月を除く。)又は第八十八条の二の規定により納付することを要しないものとされた保険料に係る期間の各月についてのみ行うことができる。
 
合格者(男性)

本体保険料が納付された月(追納除く)と産休免除の月に付加保険料を納付できる、という意味になっています。

(法定免除)第八十九条

被保険者前条及び第九十条の二第一項から第三項までの規定の適用を受ける被保険者を除く。)が次の各号のいずれかに該当するに至つたときは、その該当するに至つた日の属する月の前月からこれに該当しなくなる日の属する月までの期間に係る保険料は、既に納付されたものを除き、納付することを要しない。
 
 
合格者(男性)

産休免除者は法定免除の対象から除く→「産休免除>法定」という意味になります。

 

(被保険者に関する調査)第百六条

厚生労働大臣は、必要があると認めるときは、被保険者の資格又は保険料に関する処分に関し、被保険者に対し、国民年金手帳、出産予定日に関する書類被保険者若しくは被保険者の配偶者若しくは世帯主若しくはこれらの者であつた者の資産若しくは収入の状況に関する書類その他の物件の提出を命じ、又は当該職員をして被保険者に質問させることができる。
 

(任意加入被保険者)法附則第五条

次の各号のいずれかに該当する者(第二号被保険者及び第三号被保険者を除く。)は、第七条第一項の規定にかかわらず、厚生労働大臣に申し出て、被保険者となることができる。
第一項の規定による被保険者については、第八十八条の二から第九十条の三までの規定を適用しない。
 

通達を確認

1.国民年金第1号被保険者の産前産後期間の保険料免除の概要

(1)産前産後免除期間について

産前産後免除期間は、国民年金の第1号被保険者の出産の予定日(産前産後免除に係る届出を行う前に出産した場合にあっては、出産の日。以下「出産予定日」という。)の属する月(以下「出産予定月」という。)の前月(多胎妊娠の場合は3か月前)から出産予定月の翌々月までの期間とする(別紙1)。

なお、「出産」とは妊娠85日(4か月)以上の分娩をいい、早産、死産、流産及び人工妊娠中絶を含むこと。

(2)他の免除制度との関係等

産前産後免除期間は保険料納付済期間に算入されるため、産前産後免除の要件を満たしている場合には法定免除又は申請免除よりも優先される。

また、産前産後免除期間は、死亡一時金及び脱退一時金の支給要件においても、保険料納付済期間に算入される。

(3)付加保険料について

産前産後免除は、所得の有無にかかわらず保険料の負担を免除するものであることから、当該期間についても付加保険料を納付することができる。

なお、その申出等の取扱いについては、これまでと変更はない。

(4)任意加入の被保険者について

国民年金に任意加入している被保険者は、他の保険料免除や納付猶予と同様に、産前産後免除に該当しない。

2.産前産後免除の具体的な事務の取扱い

(1)届出に関する事務に関する事項

国民年金の第1号被保険者が出産前に産前産後免除に係る届出を行う場合は、出産の予定日の6か月前から市区町村に届出を行うことができる。

例えば、平成31年10月15日が出産の予定日である場合は、平成31年4月15日以降に届出を行うことができる。

ただし、制度施行時においては、施行日以降の届出のみ認め、事前受付は行わないこととすること。

施行日前の出産した場合で産前産後免除の対象になるのは、平成31年2月又は同年3月に出産した場合のみであり、その場合においても、産前産後免除期間は、平成31年4月以降の期間となること。

また、産前産後免除に係る届出の期限は設けていないため、納付期限から2年を経過したとき以降に当該届出を行った場合でも、産前産後免除期間に係る保険料は納付を要しない。

(2)添付書類に関する事務に関する事項

産前産後免除に係る届出について、届書に添える書類は次に掲げるものとすること。
なお、当該書類の写しをもって添付書類とすることも可能とすること。

①出産前に産前産後免除に係る届出を行う場合

母子健康手帳、医療機関が発行した出産の予定日等の証明書その他の出産の予定日を明らかにすることができる書類

②出産後(③の場合を除く。)に産前産後免除に係る届出を行う場合

戸籍謄(抄)本、戸籍記載事項証明書、出生届受理証明書、母子健康手帳、住民票、医療機関が発行した出産の日等の証明書その他出産の日及び身分関係を明らかにすることができる書類

なお、届出時に、市町村窓口において、住基システム等により出産の日及び身分関係が確認できる場合は、証明書類を添える必要はないものとすること。

③死産等に係る届出を行う場合

死産証明書、死胎埋火葬許可証、母子健康手帳、医療機関が発行した死産等の証明書その他死産等の日及び身分関係を明らかにすることができる書類

(3)産前産後免除期間の変更の届出に関する事務に関する事項

出産前に産前産後免除に係る届出がなされた場合であって、出産の予定日の属する月と実際の出産の日の属する月が乖離した場合であっても、原則として産前産後免除期間の変更は行わないこととすること。

ただし、出産の予定日を基準とした産前産後免除期間よりも出産の日を基準とした産前産後免除期間の方が長い場合や、出産前に単胎で届

出を行った者が、その後、多胎であることが判明した場合には、市区町村に、産前産後免除期間の変更の届出を行うことができることとすること。

(4)毎月納付に関する取扱い

①領収(納付受託)済通知書(以下「納付書」という。)

産前産後免除に係る届出を行った者に納付書を送付するときは、産前産後免除期間を除く期間の納付書を送付すること。

また、付加保険料の納付の申出により、国民年金保険料に付加保険料を上乗せした額が記載された納付書を送付している場合は、付加保険料のみの額が記載された納付書を改めて送付すること。

②口座振替(クレジットカード)

産前産後免除期間を除く期間で振替(立替納付)を行い、産前産後免除期間が終了した場合は、産前産後免除期間が終了した翌月分から振替(立替納付)を再開すること。

また、付加保険料の申出を行っている場合は、産前産後免除期間については付加保険料のみの振替(立替納付)を行うこと。

(5)早割に関する取扱い

産前産後免除期間の前の期間については振替月の当月末に早割による振替を行い、産前産後免除期間が終了した場合は、産前産後免除期間が終了した月の翌月分から早割による振替を再開すること。

また、付加保険料の申出を行っている場合は、産前産後免除期間については付加保険料のみ早割による振替を行うこと。

(6)前納に関する取扱い

①納付書

産前産後免除に係る届出を行った者に前納納付書を送付するときは、産前産後免除期間を除く期間の前納納付書を送付すること。

例えば、6月から9月までを産前産後免除期間とする者に年度当初に前納納付書を送付する場合は、4月分及び5月分の2か月前納の納付書(使用期限は4月末)並びに10月分から翌年3月分までの6か月前納の納付書(使用期限は10月末)を送付すること。

また、付加保険料の納付の申出を行なっている場合は、6月分から9月分までの付加保険料分の各月納付書を送付すること。

②口座振替(クレジットカード)

産前産後免除期間の前の期間については振替(立替納付)月の当月末に前納による振替(立替納付)を行い、産前産後免除期間が終了した後については、原則、産前産後免除期間後の納付月の翌月末に振替(立替納付)を行うこと。

仮に口座振替(クレジットカード)により1年前納が予定されており、6月から9月までを産前産後免除期間とした場合は、4月末の前納は4月分から5月分までの2か月の振替(立替納付)を行い、10月分から翌年3月分までについては各月の振替(立替納付)を行うこと。

また、1年前納を再開するのは、翌年4月からとすること。なお、付加保険料の申出を行っている場合は、6月分から9月分までの付加保険料については各月の振替(立替納付)を行うこと。

(7)過誤納金に関する事務に関する事項

①過誤納金の充当

産前産後免除に係る過誤納金については、当該被保険者が納付する義務を負う保険料に係る未納期間があるときは、国民年金法第95条の規定によりその例によるものとされる国税通則法(昭和37年法律第66号)第57条の規定に基づき、還付に代えて、当該期間に係る保険料に充当しなければならないこと。

②順位及び還付

産前産後免除に係る過誤納金を充当する場合には、未納期間の先に経過した月に係る保険料から順次充当することとし、未納期間がなくなったとき又は過誤納金が1か月分の未納保険料の額に満たない額になったときは、充当されなかった過誤納金を還付すること。

③還付の取扱い

産前産後免除に係る過誤納金について還付を行う場合は、産前産後免除に該当した月以降に納付された保険料全てを還付するのではなく、産前産後免除期間に納付された保険料のみを還付すること。また、定額保険料に合わせて付加保険料も納付されていた場合については、定額保険料のみ還付すること。

3.産前産後免除に関するその他の事務の取扱い

(1)免除等の取扱い

法定免除、申請免除、納付猶予又は学生納付特例の期間中に、産前産後免除に該当した場合は、当該産前産後免除期間の終了後に、改めて当該年度分の免除・納付の届出・申請を行うことを要しないものとすること。

(2)継続免除等の取扱い

産前産後免除期間が申請免除又は納付猶予の終期と重なる場合においても、翌周期の継続免除又は継続納付猶予対象者として取り扱うこと。

また、産前産後免除期間が申請免除又は納付猶予の終期をまたぐ場合もこれと同様に取り扱うこと。

例えば、平成30年7月から平成31年6月までの継続免除承認者が、平成31年5月から平成31年8月まで産前産後免除期間に該当した場合、平成31年9月から平成32年6月分の保険料に係る継続免除審査を行うこと。

(3)学生納付特例の取扱い

産前産後免除期間が学生納付特例の終期と重なる場合においても、当該学生納付特例の翌周期のターンアラウンド方式(以下「TA方式」という。)の申請書の送付対象者として取り扱うこと。

また、産前産後免除期間が学生納付特例の終期をまたぐ場合もこれと同様に取り扱うこと。

例えば、平成31年4月から平成32年3月までの期間について学生納付特例を受けている者が、平成32年2月から平成32年5月まで産前産後免除に該当した場合、卒業予定年月が到来していなければ、平成32年6月から平成33年3月分の保険料に係る学生納付特例を申請しうることから、TA方式の申請書の送付対象者として取り扱うこと。

なお、上記に該当する者についてもそれ以外の者と同じ時期にTA方式の申請書を送付すること。

(4)被保険者資格の再取得等の取扱い

産前産後免除期間中に国民年金の第1号被保険者の資格を喪失し、再度、国民年金の第1号被保険者の資格を取得した場合においては、当該取得と同時に産前産後免除に該当するものとし、改めて産前産後免除に係る届出を行うことは要しないものとすること。

 

4.制度周知

「ねんきん定期便」、「ねんきんネット」及びホームページの活用等により制度周知を行うこと。

また、国民年金保険料納付書等の送付時に産前産後免除に係るリーフレットを同封する他、窓口説明用にもチラシを作成し、年金事務所に設置すること。

さらに、市区町村等への当該チラシの設置を依頼するとともに、市町村に市町村広報紙への記事掲載及び母子健康手帳配布時の制度周知チラシの配布を依頼すること。

事例

産前産後期間の保険料免除の期間について

 

産前産後期間の保険料免除の期間の変更について

 
 
 
執筆/資格の大原 社会保険労務士講座
金沢 博憲金沢 博憲

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