【社労士】メキメキと力がつく過去問の解き方【勉強方法】

みなさん、こんにちは。
金沢博憲(社労士24)です。

今回は、択一式の実力アップに直結する過去問集の使い方をご紹介します。

この記事はこのような状況に至ったときにお読みいただくのがおすすめです。

この記事がオススメの方

・過去問集は繰り返し解いているのに、模試や本番で点につながらない
・過去問と表現を変えられると解けない
・本番で40点の壁をなかなか超えられない

上記のような現象にいたる原因は2つあります。

① 力がつく”解き方”をしていない

② 五肢択一の”解き方”に慣れていない

今回の記事では、①の原因に対処する方法について解説します。

「読んでいる時間がないよ」という方は、以下の動画で15分程度でサクッと解説しています。
ぜひごらんください。

それでは御覧ください。

 

択一式の”40点の壁”

択一式には”40点の壁”というものがあります。
勉強はしているはずなのに、本試験では30点台後半の点数からなかなか点が伸びない状況をいいます。

「択一問題を繰り返し解いているが得点があがらない」という場合、択一問題の解き方を見直す必要があるかも知れません。
繰り返すことはもちろん大事ですが、その解き方が正しくないと効果は表れません。

また「過去問を繰り返し解いていると○×の答えを覚えてしまう。」という声をよく耳にします。
○×を覚えることは受験生あるあるで、それ自体は問題はありません。
しかし、○×を覚えることで「できるようになった」と満足していると、実力アップに繋がりません。

なぜならば、択一を解く上で大事なことは、○×そのものではなく、○×に至る思考プロセスだからです。

合格された方からよく聞くのが、次のような感想です。

合格者(女性)

試験中、問題文の論点が光って見えた

この境地に至るのは、次のようなプロセスで問題を解いているからです。

  • 「この問題の論点は~の項目」
  • 「こことここが間違っていないから○」
  • 「ここは正しいが、ここが間違っていて×。正しくはこう」

問題を繰り返し解くのも、この思考プロセスの確認であり、そのプロセスを本番で再現する練習のために、過去問集を使っているのです。

合格者の方は、勉強中にこの思考プロセスを意識的(又は無意識で)に確認しながら、問題を解いているため、本番でも再現できているのです。

この思考プロセスを鍛えることによって、本試験で合否を分ける「過去問と異なる表現で問われる問題」や、「テキスト掲載事項のうち出題実績がない論点」に対しても、対応することができるようになります。
また、小手先のテクニックに頼らない本質的な解答スピードの向上にも繋がります。

択一問題を解くプロセス

それでは、択一問題を解くプロセスを確認してみましょう。

まず、「実力がつかない」のプロセスから示します。

①問題を見る

②正誤判断する

このプロセスだと、繰り返しやった手元の問題集はできるようになりますが、本試験で表現を変えられたり、他の問題が出されると全く対応できません。

一方、真の実力がつくプロセスでは、上記の①と②の間に、重要なプロセスが追加されます。

①問題を見る

②キーワードから出題項目を認識する

③その項目の要件・効果、ひっかけ方を想起する(テキストのあの項目かという想起)

④想起した内容を問題文に当てはめる(適用する)

⑤正誤判断する

上記のうち①→⑤の正誤判断の工程のみを繰り返している状態が「○×だけを覚えている」という状態です。

②③④の思考プロセスに沿って問題を解くことが大事です。
とはいえ、実際には、②→③→④と一段階ずつクリアしていくというよりは、各②③④のプロセスが重なりながら進んでいくイメージなります。

また、問題を間違えた場合も、原因分析が欠かせません。ただ「間違えた~ケアレスミス!つぎ頑張ろう」では、また間違えることになります。
間違えた原因は、多くの場合、②③④のプロセスに含まれています。

  • ②認識エラー→問われていることが認識できない(主語やキーワードの読み落とし、キーワードと項目の対応関係が弱い)
  • ③想起エラー→問いに対する正しい情報が引き出せない(ど忘れ、誤った記憶、混在)
  • ④適用エラー→情報を正しく当てはめることができない(問題読み落とし、深読み、問われていないことを考慮)

どの段階で間違えたかを検証し、対策を講じましょう。

実際の問題に当てはめ

実際の問題に当てはめて、思考プロセスを確認してみましょう。

第1問

最初はわかりやすく、簡単な文章で試します。

労働基準法の使用者の定義のうち「事業主」とは、その事業の経営の経営主体をいい、個人企業にあってはその企業主個人、株式会社の場合は、その代表取締役をいう。

まず「力がつかない」解き方の例を示すと

 「この問題は、代表取締役のとこが×」

で終わらせるという解き方です。

一見、「×の理由をいっているからOKでは?」と思ってしまいそうですが、それが罠です。
というのも、この解き方では×の箇所を指しているだけで、「この問題だと、なぜ代表取締役が×なのか」という思考ができていないからです。

一方で「力がつく」思考プロセスに当てはめましょう。
認識、想起、適用のプロセスを加えます。

②認識→文中の「使用者」「事業主」といったキーワードから、出題項目は「使用者のうちの”事業主”の定義」と認識できます。当たり前なのですが、意外に主語の認識が甘いことが多いので、注意が必要です。

労働基準法の使用者の定義のうち「事業主」とは、その事業の経営の経営主体をいい、個人企業にあってはその企業主個人、株式会社の場合は、その代表取締役をいう。

③想起→「使用者のうちの”事業主”の定義」を想起します。「経営主体で、個人企業では企業主個人、株式会社の場合は法人そのもの」です。この際、テキスト上の使用者の定義の表がなんとなくイメージできていると最高です。

 

 

④当てはめ→自身が想起した論点を問題文に当てはめます。

労働基準法の使用者の定義のうち「事業主」とは、その事業の経営の経営主体をいい、個人企業にあってはその企業主個人株式会社の場合は、その代表取締役をいう。

⑤正誤判断→”法人そのもの”ではなく”代表取締役”になっているため、誤りと判断できます。「事業主-法人そのもの」「事業の経営担当者-代表取締役」という対応関係を、「事業の経営担当者-代表取締役」とたすき掛けにして×にしているわけです。

次に実際の本試験問題をつかって確認しましょう。

第2問

以下の問題をご覧ください。

(令和3年試験一般常識)
 定年(65歳以上70歳未満のものに限る。)の定めをしている事業主又は継続雇用制度(その雇用する高年齢者が希望するときは、当該高年齢者をその定年後も引き続いて雇用する制度をいう。ただし、高年齢者を70歳以上まで引き続いて雇用する制度を除く。)を導入している事業主は、その雇用する高年齢者(高年齢者雇用安定法第9条第2項の契約に基づき、当該事業主と当該契約を締結した特殊関係事業主に現に雇用されている者を含み、厚生労働省令で定める者を除く。)について、「当該定年の引上げ」「65歳以上継続雇用制度の導入」「当該定年の定めの廃止」の措置を講ずることにより、65歳から70歳までの安定した雇用を確保しなければならない。

②認識→文中の「定年」「65歳以上70歳未満」「継続雇用制度」「高年齢者雇用安定法」といったキーワードから、出題項目は「高年齢者雇用安定法」の「高年齢者就業確保措置」と認識できます。

(令和3年試験一般常識)
 定年65歳以上70歳未満のものに限る。)の定めをしている事業主又は継続雇用制度(その雇用する高年齢者が希望するときは、当該高年齢者をその定年後も引き続いて雇用する制度をいう。ただし、高年齢者を70歳以上まで引き続いて雇用する制度を除く。)を導入している事業主は、その雇用する高年齢者(高年齢者雇用安定法第9条第2項の契約に基づき、当該事業主と当該契約を締結した特殊関係事業主に現に雇用されている者を含み、厚生労働省令で定める者を除く。)について、「当該定年の引上げ」「65歳以上継続雇用制度の導入」「当該定年の定めの廃止」の措置を講ずることにより、65歳から70歳までの安定した雇用を確保しなければならない。

③想起→「高年齢者就業確保措置」の論点を想起します。措置の内容や、努力義務であることなど。

④適用→自身が想起した論点を問題文に当てはめます。この際、論点が記述がありそうなところからみていきます。解答スピードが早い方は、「努力義務が論点だから真っ先に文末チェック!」と文末から確認します。

(令和3年試験一般常識)
 定年65歳以上70歳未満のものに限る。)の定めをしている事業主又は継続雇用制度(その雇用する高年齢者が希望するときは、当該高年齢者をその定年後も引き続いて雇用する制度をいう。ただし、高年齢者を70歳以上まで引き続いて雇用する制度を除く。)を導入している事業主は、その雇用する高年齢者(高年齢者雇用安定法第9条第2項の契約に基づき、当該事業主と当該契約を締結した特殊関係事業主に現に雇用されている者を含み、厚生労働省令で定める者を除く。)について、「当該定年の引上げ」「65歳以上継続雇用制度の導入」「当該定年の定めの廃止」の措置を講ずることにより、65歳から70歳までの安定した雇用を確保しなければならない

⑤正誤判断→「定年の引き上げ」等の措置の種類の内容は正しいです。一方、努力義務であるのに文末が「しなければならない」という義務規定の表記になっているため”誤り”と判断できます。

ちなみに「問題を解くスピードが速い」すなわち知識の瞬発力が高い方は特に①②が速いです。
問題文を最初から精読せず、ざっくり目を通して、キーワードを拾い出し、出題項目を認識しています。

第3問

では、次の問題です。

(令和2年試験 労働基準法・労働安全安衛法 問5ア)
 専門的な知識、技術又は経験(以下「専門的知識等」という。)であって高度のものとして厚生労働大臣が定める基準に該当する専門的知識等を有する労働者との間に締結される労働契約については、当該労働者の有する高度の専門的知識等を必要とする業務に就く場合に限って契約期間の上限を5年とする労働契約を締結することが可能となり、当該高度の専門的知識を必要とする業務に就いていない場合の契約期間の上限は3年である。

②認識→文中の「専門的知識等を有する労働者」「契約期間の上限」のキーワードから、出題項目は「契約期間の上限規制」の「高度専門労働者の特例」と認識できます。

(令和2年試験 労働基準法・労働安全安衛法 問5ア)
 専門的な知識、技術又は経験(以下「専門的知識等」という。)であって高度のものとして厚生労働大臣が定める基準に該当する専門的知識等を有する労働者との間に締結される労働契約については、当該労働者の有する高度の専門的知識等を必要とする業務に就く場合に限って契約期間の上限を5年とする労働契約を締結することが可能となり、当該高度の専門的知識を必要とする業務に就いていない場合の契約期間の上限は3年である。

③想起→出題項目の論点を想起します。「上限は5年」「専門知識を生かした業務についていない場合は3年」などがあります。

④当てはめ→自身が想起した論点を問題文に当てはめます。

(令和2年試験 労働基準法・労働安全安衛法 問5ア)
 専門的な知識、技術又は経験(以下「専門的知識等」という。)であって高度のものとして厚生労働大臣が定める基準に該当する専門的知識等を有する労働者との間に締結される労働契約については、当該労働者の有する高度の専門的知識等を必要とする業務に就く場合に限って契約期間の上限5年とする労働契約を締結することが可能となり、当該高度の専門的知識を必要とする業務に就いていない場合の契約期間の上限は3年である。

⑤正誤判断→いずれも正しい内容が記されている、少なくとも誤ったことは書いていない、ということで○と判断できます。

第4問

では、次の問題です。

(平成30年 試験厚生年金保険法 問1C)
昭和9年4月2日以後に生まれた老齢厚生年金の受給権者に支給される配偶者の加給年金額に加算される特別加算の額は、受給権者の生年月日に応じて33,200円に改定率を乗じて得た額から165,800円に改定率を乗じて得た額の範囲内であって、受給権者の生年月日が早いほど特別加算の額は大きくなる。

②認識→文中の「老齢厚生年金」「配偶者の加給年金額」「特別加算の額」のキーワードから、出題項目は「老齢厚生年金」の「配偶者加給年金に係る特別加算の額」と認識できます。

(平成30年 試験厚生年金保険法 問1C)
昭和9年4月2日以後に生まれた老齢厚生年金の受給権者に支給される配偶者の給年金額に加算される特別加算の額は、受給権者の生年月日に応じて33,200円に改定率を乗じて得た額から165,800円に改定率を乗じて得た額の範囲内であって、受給権者の生年月日が早いほど特別加算の額は大きくなる。

③想起→出題項目の論点を想起します。「33,200円~165,800円」「受給権者の生年月日に応じる」「生年月日が遅いほど高い額」などがあります。

④当てはめ→自身が想起した論点を問題文に当てはめます。

(平成30年 試験厚生年金保険法 問1C)
昭和9年4月2日以後に生まれた老齢厚生年金の受給権者に支給される配偶者の加給年金額に加算される特別加算の額は、受給権者の生年月日に応じて33,200円に改定率を乗じて得た額から165,800円に改定率を乗じて得た額の範囲内であって、受給権者の生年月日早いほど特別加算の額は大きくなる。

⑤正誤判断→「33,200円~165,800円」「受給権者の生年月日に応じる」等の内容は正しいです。一方、「早いほど特別加算の額は大きく」という部分の記述が”誤り”と判断できます。

 

まとめ

以上、今回の記事のまとめです。

  • 思考プロセスを意識しないと力は伸びない。
  • 思考プロセスとは認識、想起、適用、である。
  • 思考プロセスを強化することで正解率・解答スピードも向上する。

私が管理しているYou Tubeチャンネルでは、令和3年試験の択一問題の解説を思考プロセスに沿って解説しています。

「合格者が試験中リアルタイムでどのように思考して問題を解いたか」再現しています。

ぜひご覧ください。こちらから→令和3年試験の全問・全選択肢の解説

 

執筆/資格の大原 社会保険労務士講座

金沢 博憲金沢 博憲

時間の達人シリーズ社労士24」「経験者合格コース」を担当致しております。
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