みなさん、こんにちは。
今回は、確定拠出年金・確定給付企業年金の法改正についてまとめます。
平成30年5月1日より、確定拠出年金における運用の改善、中小企業向けの対策、確定拠出年金及び確定給付企業年金におけるポータビリティの拡充等を行います。
改正の主な概要(確定拠出年金)
「iDeCo+」(イデコプラス・中小事業主掛金納付制度)の創設(個人型年金関係)
「iDeCo+」は、企業年金を実施していない中小企業が、従業員の老後の所得確保に向けた支援を行うことができるよう、その従業員の掛金との合計が iDeCo の拠出限度額の範囲内(月額2.3万円相当)で iDeCo に加入する従業員の掛金に追加して、事業主が掛金を拠出することができる制度です。
当該制度を利用する場合は、 iDeCo の実施主体である国民年金基金連合会及び厚生労働大臣(地方厚生(支)局長)に届け出る必要があります。
従業員の掛金は、中小事業主掛金とあわせて、事業主を介して国民年金基金連合会に納付する必要があります。
※2以上の厚生年金適用事業所の事業主が同一である場合は、当該事業所で使用する第1号等厚生年金被保険者の総数が100人以下であること。
簡易企業型年金の創設(企業型年金関係)
簡易企業型年金は、設立条件を一定程度パッケージ化された制度とすることで、設立時に必要な書類等を削減して設立手続きを緩和するとともに、制度運営についても負担の少ないものにするなど、中小企業向けにシンプルな制度設計とした企業型年金です。
簡易型DCで簡素化される事務
【導入時に必要な 書類の簡素化】
導入時に必要な書類は、原則、「規約案」、「厚年適用事業所確認書類」、「従業員が100人以下であることを証する書類」、「労働組合等の同意」、「労使協議の経緯」、「労働組合の現況に関する事業主証明書」に限定するよう大幅に簡素化。
※ 「運管委託契約書」、「資産管理契約書 」、 「運管選任理由書 」、「就業規則」(原則)等の添付書類の省略を可とする。
【規約変更時の承認事項を届出事項に簡素化】
「事業主の運管業務」、「運管委託業務」、「運管委託契約事項」、「資産管理契約事項」、「事業主掛金の納付事項」、「加入者掛金 の納付事項」を届出事項とする。
【業務報告書の簡素化】
報告を必須とする事項を「他の企業年金の実施状況」、「厚生年金保険適用者数」、「指定運用方法の選定状況(労使協議の経緯を含む。)」等に限定。
※1→2以上の厚生年金適用事業所の事業主が同一である場合は、当該事業所で使用する第1号等厚生年金被保険者の総数が100人以下であること。
※2→簡易企業型年金を実施する際は、企業型年金規約に簡易企業型年金である旨を規定すること。
確定拠出年金における運用の改善(企業型年金、個人型年金関係)
確定拠出年金制度は、事業主等が拠出した掛金を加入者個々人が投資信託、預貯金、保険商品等の運用商品を選択した上で運用し、その運用結果に基づく年金を老後に受け取る制度です。
したがって、老後までの間の運用が、将来給付を左右することとなるため、個々人の運用商品の選択が重要となります。
改正確定拠出年金法では、加入者の運用商品の選択に資するべく、事業主等に対するいわゆる「投資教育」の提供や最低でも3つ以上(簡易企業型年金においては2つ以上)の商品の提示を義務付ける等の改正を行っています。
※1→施行日において運用商品提供数が35本を上回っている場合、施行日から5年を超えない期間は、施行日時点の運用商品提供数を上限とする。
※2→簡易企業型年金においては2つ以上。
なお、確定拠出年金の運用においては、個々の加入者が株式等の運用商品を選択し運用することが重要ですが、運用商品を選択しない者への支援として、加入者が運用商品を選択するまでの間において運用を行うため、企業型年金規約又は個人型年金規約の定めるところにより、指定運用方法を選定・提示する場合には、以下のプロセスを踏む必要があります。
企業型年金加入者が資格喪失した場合における事業主の説明義務(企業型年金関係)
企業型年金を実施する事業主は、企業型年金加入者が資格を喪失した場合には、当該資格喪失者に対して、以下の事項を説明する必要があります。
(1)他の企業型年金、個人型年金又は確定給付企業年金への個人別管理資産の移換を行う申出は、企業型年金の資格喪失日の属する月の翌月から起算して6月以内に行うこと。
(2)上記(1)の申出を行わない場合には、1~3の取扱いがなされること。
- 他の企業型年金の加入者の資格を取得している場合には、当該企業型年金へ個人別管理資産が自動的に移換されること。
- 個人型年金加入者又は個人型年金運用指図者の資格を取得している場合には、当該個人型年金へ個人別管理資産が自動的に移換されること。
- 上記1・2以外の場合には、個人別管理資産が国民年金基金連合会(特定運営管理機関)に自動的に移換され、連合会移換者である間、当該個人別管理資産は運用されることのないまま、管理手数料が引き落とされること。また、連合会移換者である期間は通算加入者等期間に算入されないことから、老齢給付金の支給開始可能な時期が遅くなる可能性があること。
(3) 確定給付企業年金の加入者の資格を取得した場合には、資格喪失日の属する月の翌月から起算して6月以内であれば確定給付企業年金へ個人別管理資産の移換を行うことができること。
また、個人別管理資産が国民年金基金連合会(特定運営管理機関)に自動的に移換されている者が、確定給付企業年金の加入者の資格を取得した場合には、確定給付企業年金への個人別管理資産の移換を行うことができること。
なお、確定給付企業年金の本人拠出相当額は拠出時に課税、給付時に非課税の取扱いであり、他方、企業型年金の本人拠出相当額は拠出時に非課税の取扱いであることから、確定給付企業年金へ移換する個人別管理資産に企業型年金の本人拠出相当額を含む場合であっても、確定給付企業年金の本人拠出相当額としての取扱いではなく、給付時に課税されること。
(4) 企業型年金から確定給付企業年金又は退職金共済への個人別管理資産の移換を行う場合には、移換先の制度の制度設計上、確定拠出年金に加入していた期間(勤続年数を含む。)が移換先の制度設計に合わせた期間に調整される可能性があること。
また、企業型年金の個人別管理資産に係る期間(当該個人別管理資産に厚生年金基金、確定給付企業年金、企業年金連合会又は国民年金基金連合会から移換してきた資産を含む場合は当該資産に係る期間を含む。)は通算加入者等期間から控除されることとなること。
ただし、企業型年金及び個人型年金に同時に加入する者であって、企業型年金の個人別管理資産のみ移換する場合には、個人型年金の加入者期間に影響はないこと。
継続投資教育の努力義務化
確定拠出年金法の改正に伴い、配慮義務となっていた継続投資教育について、努力義務となりました。
確定拠出年金は、加入している方が投資信託、預貯金、保険商品等の運用商品を選択した上で運用し、その運用結果に基づく年金を老後に受け取る制度です。
このため、加入している方が適切な資産運用を行うための知識や情報を持っていることが重要となります。
継続投資教育が努力義務化されることで、確定拠出年金を実施している事業主や国民年金基金連合会は、制度への加入時はもちろん、加入後においても、加入している方が資産運用について十分理解できるよう、必要かつ適切な投資教育を行う必要があります。
企業年金連合会への継続投資教育の委託について
投資教育の実施が難しい事業主などを対象に、継続投資教育の実施を企業年金連合会に委託することが可能です。
改正の主な概要(確定給付企業年金)
脱退一時金相当額を移換できる者(中途脱退者)の拡大
従来は、老齢給付金の受給要件のうち期間要件を満たしている場合には脱退一時金相当額の移換はできませんでしたが、その方のうち老齢給付金の支給開始年齢に到達していない方は、脱退一時金相当額の移換が可能と なりました。
改正の主な概要(確定拠出年金・確定給付企業年金)
ポータビリティの拡充
制度間のポータビリティとは転職時等に制度間(例:DB→DC)の資産移換を可能とするもので、例えば、企業DBで積み立てた資金は、転職時に転職先の企業年金(DC等)に資産を移換し、当該移換資金も合わせた形で転職先の企業年金を実施することができます。
改正確定拠出年金法では、制度間のポータビリティを拡充し、老後の所得確保に向けた継続的な自助努力を行う環境の整備を行っています。
執筆/資格の大原 社会保険労務士講座
「時間の達人シリーズ社労士24」「経験者合格(旧上級)コース」を担当致しております。
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