みなさん、こんにちは。
社労士24担当講師の金沢です。
今回は、在職老齢年金について語ります。
在職老齢年金の見直し
年金制度の機能強化のための国民年金法等の一部を改正する法律が公布され、順次施行されます。
そのうちの一つが60~64歳の年金支給停止基準額の引き上げです。
60歳から64歳に支給される特別支給の老齢厚生年金を対象とした在職老齢年金制度について、支給停止とならない範囲を拡大します。
具体的には、支給停止が開始される賃金と年金の合計額の基準を、現行の28万円から47万円(令和2年度額)に引き上げます。
施行時期は、2022年4月1日です。
現行の基準が、高齢者の就労意欲を削いでいるという指摘があり、これを引き上げようというものです。
現行の基準は次のとおりです。
低在老と高在老。低在老は何の略?
この在職老齢年金についての文献で、「低在老と高在老」という呼称がよく用いられます。
65歳前の在職老齢年金は「低在老」と呼ばれます。
一方、65歳以降の在職老齢年金は「高在老」です。
この「高在老」は「高年齢者在職老齢年金」の略です。
では、「低在老」は何の略でしょうか?
※ヒント→当初、厚生年金は「退職」が要件になっていた。
チッチッチッチッポーン
正解は、「低所得者在職老齢年金」です。
時代の変遷と共に変化する在老の役割
在老制度は当初、低所得である高齢者の暮らしの安定が目的でした。
厚生年金は当初、老齢年金の要件に「退職」があり、在職中は支給されなかったのです。
しかし、当時の高齢期就労は低賃金で、賃金だけでは生活できない問題があり、在職中でも年金を支給する特例を創設されました。
1969年の改正で、低賃金の60歳台前半を対象に、賃金水準に応じて年金の一定割合を支給する制度が創設されます。
これが現在の65歳前の在職老齢年金の原型です。
その後、高齢就労者が増える中、高齢者の就労を阻害しない観点からの見直しがなされてきたため、現在、「低所得者」向けのイメージは薄くなっています。
そのためか、低在老を「低年齢者在職老齢年金」と表現している文献も少なくなくありません。
「低年齢」も「低所得者」でも、いずれにしても法律名称ではなく、低年齢者でも間違いではないですが、制度創設当初の趣旨を踏まえると「低所得者」が正解となります。
当初、「低所得高齢者の生活の安定」が目的に創設された在職老齢年金。
健康寿命の伸びや就業者の意識の変化で、高齢期の就労を希望する方の増加。
生産年齢人口が減少する中、労働力を増やしたい国。
現役世代の負担増を抑えるため、高所得層への給付額を抑えたい年金制度。
これらの事象が重なって、在職老齢年金が持つ役割も変化しているということでしょう。
執筆/資格の大原 社会保険労務士講座
「時間の達人シリーズ社労士24」「経験者合格コース」を担当致しております。
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