みなさん、こんにちは。
金沢博憲(社労士24)です。
令和3年6月3日に改正育児介護休業法が成立しました。
男性版産休ともいわれる「出生時育児休業」の創設が目玉です。
妻の出産後8週間以内に、4週間の育休を取得可能。出産直後と里帰りから戻る際など2回に分けて取得することもできます。
この記事では、「育児休業給付制度」の見直しについてご紹介します。
まず、育児休業給付制度の概要をみてみましょう。
育児休業給付制度の概要
概要
労働者の職業生活の円滑な継続を援助、促進するため、労働者が1歳(子が1歳を超えても休業が必要と認められる一定の場合については最長で2歳に達するまで)未満の子を養育するための育児休業を行う場合に、育児休業給付が支給されます。
養育する子の年齢については当該労働者の配偶者が、子の1歳に達する日以前のいずれかの日において、当該子を養育するための休業をしている場合(いわゆるパパママ育児休業プラス)は、1歳2か月まで延長されます。
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また最長2歳までの延長が認められる『一定の場合』とは、保育所の申込みを行ったが利用できない場合や、子の養育を行っている配偶者が死亡した場合等が該当します。
支給要件
雇用保険の被保険者が、育児休業をした場合に、当該休業を開始した日前2年間に、賃金の支払の基礎となった日数が11日以上ある月が通算して12か月以上あることです。
12か月に満たない場合は、賃金の支払の基礎となった日数が11日以上又は賃金の支払の基礎となった時間が80時間以上ある月が12か月以上あれば、支給が認められます。
給付額
育児休業開始から6か月までは休業開始前賃金の67%相当額、それ以降は50%相当額です。
67%の給付は非課税であること、また、育休期間中は社会保険料免除があることから、休業前の手取り賃金と比較した実質的な給付率は8割程度です。
この休業期間中において、子の養育をする必要がない期間に一時的・臨時的に(月10日以下(月10日を超える場合にあっては月80時間以下))就労することが可能。
この場合、事業主から賃金の支払いが発生しますが、その賃金と給付の合計額が休業開始時賃金日額の80%を超える場合は、超える額を減額されます。
支給申請手続
初回の支給申請と同時に申請する場合、育児休業開始日から4か月を経過する日の属する月の末日までに、申請日前までの支給単位期間(育児休業開始日から各翌月の休業開始応当日の前日までの各期間)をまとめて申請します。
その後は、原則として2か月に1度2か月分(2支給単位期間分)を申請します。(被保険者本人が希望する場合、1か月に1度申請することも可能です)。
育児休業給付制度等の見直しの必要性
厚生労働省の労働政策審議会職業安定分科会雇用保険部会は、2021年1月28日、男性の育児休業取得促進等に係る育児休業給付制度等の見直しについて、公表しました。
これは、令和2年11月13日から議論を重ね「労働政策審議会職業安定分科会雇用保険部会報告書」(別添)としてとりまとめたものです。
厚生労働省として、この報告書の内容を踏まえ、令和3年通常国会への法案提出に向け、法案要綱を作成し、労働政策審議会に諮問する予定です。
以下はその原文です・
育児休業給付は、景気状況にかかわらず一貫して増加していること等を踏まえ、令和2年3月の雇用保険法改正により、「子を養育するために休業した労働者の生活と雇用の安定を図る」ことをその目的とした上で、失業等給付から区分して経理することとされた。
失業等給付15”育児休業給付金”さんがグループを脱退することを表明しました。 以下、コメントです。 私、育児休業給付は、平成7年以来、失業等給付のメンバーとして活動して参りましたが、この度、グループから脱退することになり …
また、育児休業給付は、「育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律」(育児・介護休業法)において労働者の権利として位置づけられ、当該休業の取得について社会的コンセンサスが確立している育児休業を対象として、当該休業を取得する労働者のうち、雇用保険制度上の要件を満たした被保険者に対して支給することとしている。
今般、労働政策審議会雇用環境・均等分科会において、男性の育児休業取得促進等の観点から、育児休業制度等について法的整備を求める報告が取りまとめられた。
この報告では、育児休業制度等について、
- 特に男性の育児休業の取得を促進するため、子の出生直後の時期に現行の育児休業よりも柔軟で取得しやすい新たな仕組みを設けること
- 育児休業の分割取得等を可能とすること
- 有期雇用労働者の育児・介護休業に関する「引き続き雇用された期間が1年以上」の要件について、無期雇用労働者と同様の取扱いとすること
が適当とされているが、これらの内容は、労働者の雇用の継続等を図り、もって職業生活と家庭生活の両立に寄与するという育児休業制度等の趣旨目的を変更することとなるものではない。
この「職業生活と家庭生活の両立に寄与する」という育児休業制度の趣旨は、「労働者の生活と雇用の安定を図る」とした令和2年3月改正(同年4月施行)後の育児休業給付の目的にも引き続き合致するものである。
したがって、このような改正に伴い、新たに育児休業等の対象となる場合についても、育児休業給付等の対象とすることが適当であると考えられる。
一方、雇用保険制度は、新型コロナウイルス感染症の影響に対応するための雇用調整助成金の特例等や受給者実人員の増加等により、令和3年度当初予算案における同年度末の見込みとして雇用安定資金残高が864億円、積立金残高が1,722億円となる。
また、積立金から雇用保険二事業への貸出額の累計が1.7兆円にのぼるなど、雇用のセーフティネットとしての役割を確保していく上で、極めて厳しい財政状況に至っている。
育児休業給付についても、初回受給者数は平成21年度の約18 万人から令和元年度の約38万人へと10 年で倍増、特に男性の初回受給者数は近年2年で2倍の伸びを示しており、給付総額も令和元年度は約5,700億円、年8%程度の伸びとなっている。
さらに、育児休業の延長を行う受給者が多いといった事情もあり、令和2年度は前年同月比20%超の伸びが続くなど、例年よりも高い伸び率を示している。
今後の育児休業給付の財政運営に当たり、こうした伸びの影響も見込んだ上で一定の前提の下で収支の見込みを試算したところ、今般の報告に係る制度改正を行っても、現在の保険料率で、今後5年度程度(令和6年度まで)は安定的に運営可能であることを当部会において確認したが、制度改正の影響も含め、受給者の動向等に留意しつつ、引き続き、一定期間の財政状況を見通した上で適切な運営を図るべきである。
また、育児休業給付制度については、少子化社会対策大綱(令和2年5月29日)において、「男性の育児休業の取得促進等についての総合的な取組の実施状況も踏まえつつ、中長期的な観点から、その充実を含め、他の子育て支援制度の在り方も併せた制度の在り方を総合的に検討する。」とされたところである。
育児休業給付の在り方については、今般の男性の育児休業促進策等に係る制度改正の効果等も見極めた上で、雇用保険制度本来の役割との関係や、他の関連諸施策の動向等も勘案しつつ検討していく必要があるものである。
以上を踏まえ、育児休業給付制度の在り方については、「令和4年度以降できる限り速やかに、安定した財源を確保した上で雇用保険法附則第13条に規定する国庫負担に関する暫定措置を廃止するべきである」とした雇用保険部会報告(令和元年12月25日)も踏まえつつ、引き続き、現在の保険料率で安定的な運営が可能と確認できている令和6年度までを目途に検討を進めていくべきである。
また、労働者代表委員及び使用者代表委員から次のような意見があった。
- 我が国の育児休業給付の給付率は、非課税であること等も考慮すると、既に諸外国と比べても相当程度高い水準にあり、また、給付率の引上げは雇用保険料負担の増加に直結するため慎重に検討するべきである。
- 育児休業の取得促進は少子化対策の一環として行われるものであり、育児休業期間中の経済的支援は、国の責任により一般会計で実施されるべきである。
2 育児休業給付制度等の見直しの方向
育児休業給付制度等については、育児・介護休業法の改正に対応して、以下(1)から(3)までのような見直しを行うことが必要である。
また、育児休業給付の支給の前提となる、休業前2年間に12か月以上の被保険者期間要件について、対象者の出産日によって不合理な取扱いが生ずることのないよう、以下(4)のような見直しを行うことが必要である。
(1)子の出生直後の休業の取得を促進する枠組みに対応する育児休業給付
育児・介護休業法の改正による、子の出生直後の時期の現行制度より柔軟で取得しやすい新たな仕組み(以下「新制度」という。)の創設に対応して、育児休業給付についても、その一類型として、従来の制度的枠組みに基づく給付(育児休業給付金)とは別に、子の出生後8週間以内に4週間までの期間を定めて取得する休業に対して支給する新たな給付金(以下「新給付金」という。)を創設する。
その際、新給付金については、
- 2回まで分割して新制度に基づく育児休業を取得した場合にも、新給付金を受給できる
- 新制度において、一時的・臨時的な就労に加えて休業前に調整した上で就労することが可能となることを踏まえ、休業中の就労の取扱いを、最大で10 日(これを超える場合は 80 時間)の範囲内とし、賃金と給付の合計額が休業前賃金の80%を超える場合には、当該超える部分について給付を減額する仕組みとする、
- 給付率やその他の制度設計については、現行の育児休業給付金と同等とし、また、67%の給付率が適用される期間(6か月間)の取扱いについては、新給付金と育児休業給付金の期間を通算する
こととする。
なお、支給手続は、煩雑にならないよう、子の出生後8週経過以後に1度の手続により行うこととする。
(2)育児休業の分割取得等
育児・介護休業法の改正により育児休業を分割して2回取得することができるようになることに対応して、育児休業給付についても、同一の子に係る2回の育児休業まで支給することとする。
また、事務負担を軽減する観点から、(1)の新制度に基づく育児休業も含め、複数回育児休業を取得した場合、被保険者期間要件の判定や、休業前賃金の算定については、初回の育児休業の際に行うこととする。
また、育児・介護休業法の改正により1歳以降の延長の場合の育児休業の開始日を柔軟化し、1歳~1歳半、1歳半~2歳の各期間の途中でも夫婦交代できるようになることや、第2子以降の子の産休により育児休業が終了し、死産となった場合等の特別な事情があるときの再取得が可能となることに対応して、育児休業給付についても、こうした場合には、例外的に3回目以降の育児休業でも支給することとする。
(3)有期雇用労働者の育児・介護休業促進
育児・介護休業法の改正により有期雇用労働者の育児休業・介護休業に係る「引き続き雇用された期間が1年以上」の要件について、無期雇用労働者と同様の取扱いとなるところ、育児休業給付・介護休業給付についても、同様の対応とする。
(4)みなし被保険者期間の算定方法の見直し
現行制度は、育児休業開始日を離職した日とみなして支給の前提となる被保険者期間を算定しているが、育児休業給付は、育児休業による所得の喪失を保険事故としていることから、この原則は維持した上で、出産日のタイミングによって、この方法によっては被保険者期間要件を満たさないケースに限り、例外的に産前休業開始日等を起算点とする。
以上、育児休業給付制度の見直し案です。
多くの方が受給する給付だけに、国会での審議が注目されます。
執筆/資格の大原 社会保険労務士講座
「時間の達人シリーズ社労士24」「経験者合格コース」を担当致しております。
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