皆さん、こんにちは。
今回は、国民年金、厚生年金保険の年金額の端数処理をまとめます。
基本的な考え方
原則は1円未満四捨五入
法律上は原則的に1円未満を四捨五入して計算します。
国民年金法と厚生年金保険法の給付の通則に規定が置かれています。
個人の加入月数や生年月日に応じない年金は100円未満で四捨五入
ただし、個人の属性(加入月数や生年月日)によって変動しないタイプの年金額は、もう少し切りよく100円未満で四捨五入します。
具体的には、計算式において、以下に当てはまらないものです。
・加入月数を乗じて計算するタイプの年金額
・生年月日に応ずる率を乗じて計算するタイプの年金額
その代表的なものは、老齢基礎年金の満額です。
令和2年度の老齢基礎年金の満額は、次の計算式で計算されます。
一方で、加入月数を乗じて計算するタイプや生年月日に応ずる率を乗じて計算するタイプの年金額は、「1円未満で四捨五入」します。
個人が保険料を払った期間に応じた年金額ですから、できるだけ細かい端数までお支払いをしようという考え方かも知れません。
試験対策上の原則は「100円」or「1円」?
前述の通り、法律上の作りでは「1円未満で四捨五入」が原則です。
一方で、試験対策上は、どっちを原則にしても微妙なのが悩みどころです。
個人的には、最近では、
・「1円未満四捨五入」の年金を押さえて、
・他は「100円未満四捨五入」の年金
と整理するのが早い気がします。
法律条文上は、給付の通則で「1円未満四捨五入」とされていますので、各年金額の規定上、
・何の記載もないもの→「1円未満四捨五入」
・「100円未満四捨五入」の記載あり→「100円未満四捨五入」
という仕様になっています。
それでは、各年金額の条文表現を確認していきます。
国民年金の年金額の端数処理
老齢基礎年金
赤字の部分が「100円未満で四捨五入」を意味しています。
780,900円×改定率=老齢基礎年金の満額(100円未満四捨五入)ということです。
一方で、ただし書きの「保険料納付済期間の月数が四百八十に満たない者」については、「100円未満で四捨五入」を意味する表記がありません。
すなわち原則に戻って「1円未満四捨五入」とパターンになります。
老齢基礎年金の満額(100円未満四捨五入)×その者の加入月数/480=その者の老齢基礎年金の額(1円未満四捨五入)
老齢基礎年金(振替加算)
赤字の部分が「100円未満で四捨五入」を意味しています。
224,700円×改定率=振替加算の基本額(100円未満四捨五入)ということです。
この振替加算の基本額×受給権者の生年月日に応ずる率=振替加算の額になります。
この額は原則に戻って「1円未満四捨五入」です。
障害基礎年金(2級)
赤字の部分が「100円未満で四捨五入」を意味しています。
780,900円×改定率=2級の障害基礎年金の額(100円未満四捨五入)ということです。
障害基礎年金(1級)
1級の障害基礎年金の額は、2級の障害基礎年金の額(100円未満四捨五入)×125/100となりますが、これには「100円未満四捨五入」はされません。
2級の障害基礎年金の額(100円未満四捨五入)の段階で、最低100円単位になっており、これに125/100を乗じると125円になります。
つまり、細かい端数が生じませんので、そもそも端数処理をしないということでしょう。
すなわち、2級の障害基礎年金の額(100円未満四捨五入)×125/100=1級の障害基礎年金の額(端数処理なし)
遺族基礎年金(基本額)
赤字の部分が「100円未満で四捨五入」を意味しています。
780,900円×改定率=遺族基礎年金の基本額(100円未満四捨五入)ということです。
子に係る加算額(障害基礎年金・遺族基礎年金)
赤字の部分が「100円未満で四捨五入」を意味しています。
224,700円(3人目以降は74,900円)×改定率=子に係る加算額(100円未満四捨五入)ということです。
寡婦年金
寡婦年金の額は「100円未満で四捨五入」を意味する表記がありません。 (老齢基礎年金の満額×夫の加入月数)×3/4=寡婦年金の額(1円未満四捨五入)ということです。 報酬比例の額は「100円未満で四捨五入」を意味する表記がありません。 平均標準報酬額×5.481/1000×被保険者期間の月数=報酬比例の額(1円未満四捨五入)ということです。 報酬比例の額は「100円未満で四捨五入」を意味する表記がありません。 1,628円×改定率(1円未満四捨五入)×被保険者期間の月数=定額部分ということです。 赤字の部分が「100円未満で四捨五入」を意味しています。 224,700円(3人目以降は74,900円)×改定率=加給年金額の基本額(100円未満四捨五入)ということです。 赤字の部分が「100円未満で四捨五入」を意味しています。 昭和18年4月2日以後生まれの者では、 165,800円×改定率=老齢厚生年金の加給年金額の特別加算(100円未満四捨五入)ということです。 特別加算額は、生年月日ごとに加算額が分かれていますが、「生年月日に応ずる率を乗じる計算」はないため「100円未満四捨五入」になります。 赤字の部分が「100円未満で四捨五入」を意味しています。 780,900円×改定率×3/4=障害厚生年金の最低保障額 (100円未満四捨五入)ということです。 780,900円×改定率×3/4=中高齢寡婦加算額(100円未満四捨五入)ということです。 経過的寡婦加算の額は「100円未満で四捨五入」を意味する表記がありません。 中高齢寡婦加算額-老齢基礎年金の満額×生年月日に応ずる率(1円未満四捨五入)ということです。 すなわち中高齢寡婦加算は「100円未満で四捨五入」ですが、経過的加算では「1円未満四捨五入」となります。 ・年金の端数処理には「1円未満四捨五入」「100円未満四捨五入」「端数処理なし」の3パターンがある ・計算式上で「×加入月数」or「×生年月日に応ずる率」があるもの→「1円未満四捨五入」 ・障害基礎年金(1級)→「端数処理なし」 ・その他→「100円未満四捨五入」 執筆/資格の大原 社会保険労務士講座 「時間の達人シリーズ社労士24」「経験者合格(旧上級)コース」を担当致しております。
すなわち原則に戻って「1円未満四捨五入」とパターンになります。厚生年金保険の年金額の端数処理
報酬比例(老齢厚生年金など)
すなわち原則に戻って「1円未満四捨五入」とパターンになります。定額部分(老齢厚生年金など)
すなわち原則に戻って「1円未満四捨五入」とパターンになります。加給年金額(基本額)
老齢厚生年金の加給年金額(特別加算)
障害厚生年金の最低保障額
遺族厚生年金(中高齢寡婦加算)
遺族厚生年金(経過的寡婦加算)
一 厚生年金保険法第六十二条第一項に規定する加算額(中高齢寡婦加算)
二 国民年金法第二十七条本文に規定する老齢基礎年金の額にそれぞれ附則別表第九の下欄に掲げる数(生年月日に応じた率)を乗じて得た額
すなわち原則に戻って「1円未満四捨五入」とパターンになります。まとめ
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