労働安全衛生法の義務と努力義務の押さえ分け

シャアロウシ受験生(以下「シャア」という)「勉強しているが、あい変わらず安衛法の義務と努力義務が押さえわけができない」

整備士「あんなのほとんど「義務」規定です。「努力義務」の規定だけ押さえましょう。 偉い人にはそれがわからんのですよ」

シャア「整理の仕方は分かるが、私にできるかな」

第三者向け

整備士「まず設備の設計者等向けの規制です。 設備の設計者等とは、機械製造メーカーなどをいいます。 機械製造メーカーは、労働安全衛生法の事業主ではない第三者的存在です。 労働災害に対する直接的な責任を負っていないことから 「努力義務」となっています。」

第3条第2項
 機械、器具その他の設備を設計し、製造し、若しくは輸入する者、原材料を製造し、若しくは輸入する者又は建設物を建設し、若しくは設計する者は、これらの物の設計、製造、輸入又は建設に際して、これらの物が使用されることによる労働災害の発生の防止に資するように努めなければならない。

安全衛生の水準の向上系

整備士「次に”安全衛生の水準の向上のため”系です。 安全衛生の(最低)水準をさらに向上させるという規定ですから「努力義務」です。」

第19条の2 
 事業者は、事業場における安全衛生の水準の向上を図るため、安全管理者、衛生管理者、安全衛生推進者、衛生推進者その他労働災害の防止のための業務に従事する者に対し、これらの者が従事する業務に関する能力の向上を図るための教育、講習等を行い、又はこれらを受ける機会を与えるように努めなければならない。

第60条の2  
 事業者は、前二条に定めるもののほか、その事業場における安全衛生の水準の向上を図るため、危険又は有害な業務に現に就いている者に対し、その従事する業務に関する安全又は衛生のための教育を行うように努めなければならない。

第71条の2 
 事業者は、事業場における安全衛生の水準の向上を図るため、次の措置を継続的かつ計画的に講ずることにより、快適な職場環境を形成するように努めなければならない。

整備士「「法令に基づく措置を講ずるほか~」系も同タイプです。法令に基づく措置を講ずる時点で法の最低基準を上回っています。
したがって、その後に続く必要な措置は「努力義務」です。」

第28条の2 
 事業者は、厚生労働省令で定めるところにより、建設物、設備、原材料、ガス、蒸気、粉じん等による、又は作業行動その他業務に起因する危険性又は有害性等(第五十七条第一項の政令で定める物及び第五十七条の二第一項に規定する通知対象物による危険性又は有害性等を除く。)を調査し、その結果に基づいて、この法律又はこれに基づく命令の規定による措置を講ずるほか、労働者の危険又は健康障害を防止するため必要な措置を講ずるように努めなければならない。ただし、当該調査のうち、化学物質、化学物質を含有する製剤その他の物で労働者の危険又は健康障害を生ずるおそれのあるものに係るもの以外のものについては、製造業その他厚生労働省令で定める業種に属する事業者に限る。

第57条の3 
 事業者は、厚生労働省令で定めるところにより、第五十七条第一項の政令で定める物及び通知対象物による危険性又は有害性等を調査しなければならない。
 事業者は、前項の調査の結果に基づいて、この法律又はこれに基づく命令の規定による措置を講ずるほか、労働者の危険又は健康障害を防止するため必要な措置を講ずるように努めなければならない。

健康な労働者向け系

整備士「そして、”健康な労働者に対する規定”系です。 ”健康の保持・増進”などがキーワードです。現在健康な労働者について措置を行う必要性は低いことから「努力義務」です。」

第66条の7 
 事業者は、第六十六条第一項の規定による健康診断若しくは当該健康診断に係る同条第五項ただし書の規定による健康診断又は第六十六条の二の規定による健康診断の結果、特に健康の保持に努める必要があると認める労働者に対し、医師又は保健師による保健指導を行うように努めなければならない。
2 労働者は、前条の規定により通知された健康診断の結果及び前項の規定による保健指導を利用して、その健康の保持に努めるものとする。

第69条 
 事業者は、労働者に対する健康教育及び健康相談その他労働者の健康の保持増進を図るため必要な措置を継続的かつ計画的に講ずるように努めなければならない。
2 労働者は、前項の事業者が講ずる措置を利用して、その健康の保持増進に努めるものとする。

第70条 
 事業者は、前条第一項に定めるもののほか、労働者の健康の保持増進を図るため、体育活動、レクリエーションその他の活動についての便宜を供与する等必要な措置を講ずるように努めなければならない。

義務規定の要件から外れる系

「あと少し。”義務規定の要件に該当していない場面の規定”です。 50人未満規模での産業保健スタッフの選任や、ストレスチェックの実施などです。」

第13条の2 
 事業者は、前条第一項の事業場以外の事業場については、労働者の健康管理等を行うのに必要な医学に関する知識を有する医師その他厚生労働省令で定める者に労働者の健康管理等の全部又は一部を行わせるように努めなければならない。
2 前条第四項の規定は、前項に規定する者に労働者の健康管理等の全部又は一部を行わせる事業者について準用する。この場合において、同条第四項中「提供しなければ」とあるのは、「提供するように努めなければ」と読み替えるものとする。
 
第13条の3 
 事業者は、産業医又は前条第一項に規定する者による労働者の健康管理等の適切な実施を図るため、産業医又は同項に規定する者が労働者からの健康相談に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備その他の必要な措置を講ずるように努めなければならない。
 
第66条の9 
 事業者は、第六十六条の八第一項、第六十六条の八の二第一項又は前条第一項の規定により面接指導を行う労働者以外の労働者であつて健康への配慮が必要なものについては、厚生労働省令で定めるところにより、必要な措置を講ずるように努めなければならない。

労働者の協力義務

整備士「マイナーどころで、労働者の事業者等への協力義務があります。 キワードは”その他の関係者”。労働組合などです。 労働組合が実施する措置への協力を強制することはできないので”努力義務”です。」

第4条  
 労働者は、労働災害を防止するため必要な事項を守るほか、事業者その他の関係者が実施する労働災害の防止に関する措置に協力するように努めなければならない。

受動喫煙の防止

整備士「あと2つ。受動喫煙の防止です。 居酒屋等飲食店などの禁煙にするのが難しい業種にも配慮して努力義務にとどめています。受動喫煙防止対策助成金などの助成金などで徐々に誘導する狙いです。」

第68条の2 
 事業者は、室内又はこれに準ずる環境における労働者の受動喫煙(健康増進法(平成十四年法律第百三号)第二十五条の四第三号に規定する受動喫煙をいう。第七十一条第一項において同じ。)を防止するため、当該事業者及び事業場の実情に応じ適切な措置を講ずるよう努めるものとする。

作業管理

備士「最後は健康管理の作業管理。労基法の最低基準を満たした上で、なお健康に配慮して作業をさせてね、という規定のため、努力義務です。」

第65条の3 
 事業者は、労働者の健康に配慮して、労働者の従事する作業を適切に管理するように努めなければならない。

シャア「ありがとう。おさえよう。」

 

 

執筆/資格の大原 社会保険労務士講座

金沢 博憲金沢 博憲

時間の達人シリーズ社労士24」「経験者合格コース」を担当致しております。
是非Twitterのフォローお願いいたします!

↓ランキングに参加しています。↓

にほんブログ村 資格ブログ 社労士試験へ