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みなさん、こんにちは。

最新の厚生労働白書よりも大事かもしれない白書その5からの続きです。

政権交代と社会保障

政権交代後における社会保障制度見直しの主な動き

2009(平成21)年8月に実施された総選挙の結果、9月に政権が交代した。新政権下では、社会保障費の自然増から毎年2,200億円を削減するとした方針は廃止され、診療報酬本体について10年ぶりのプラス改定の実施や子ども手当の支給、前政権下で廃止された生活保護における母子加算の復活等が行われた。

また、第4章で述べるように、2010(平成22)年10月以降、社会保障・税一体改革の議論が進められ、2011(平成23)年6月末には「社会保障・税一体改革成案」が取りまとめられた。

診療報酬プラス改定と新たな高齢者医療制度の検討

(診療報酬本体のプラス改定)

2010(平成22)年度の診療報酬改定では、厳しい経済状況や保険財政の下ではあるものの、日本の置かれている医療の危機的な状況を解消し、国民に安心感を与える医療を実現していくとの認識の下、 2000(平成12)年度以来10年ぶりのネットプラス改定(0.19%)、診療報酬本体についていえば、前回改定の4倍以上のプラス改定(0.38%→1.55%)を行った。

この改定率の下で、救急、産科、小児科、外科等の医療の再建や病院勤務医の負担軽減を重点課題とし、救命患者の受け入れ体制が充実している救命救急センターの評価の引上げ、緊急搬送された妊産婦を受け入れた場合の評価の引上げ、多職種からなるチームによる取組みの評価等を行った。

さらに、75歳以上という年齢に着目した後期高齢者に関連する診療報酬(終末期相談支援料等)については、後期高齢者医療制度本体の廃止に先行して廃止した 。

(新たな高齢者医療制度の検討)

後期高齢者医療制度については、75歳以上の高齢者を年齢到達でそれまでの保険制度から分離・区分すること、75歳以上の被用者の方は傷病手当金等を受けられず、保険料も全額自己負担となったこと、被扶養者であった方も保険料を負担することとなったこと等について、国民の十分な理解を得ることができなかった。

こうしたことから、後期高齢者医療制度に代わる新たな制度の具体的な在り方を検討するため、2009(平成21)年11月から厚生労働大臣主宰の「高齢者医療制度改革会議」が開催され、制度廃止に向け2010年12月に最終的な取りまとめが行われた。

改革会議で取りまとめられた新たな制度案では、①加入する制度を年齢で区分せず、75歳以上の高齢者の方も現役世代と同様に国民健康保険か被用者保険に加入することとした上で、②約8割の高齢者が加入することとなる国民健康保険の財政運営について、段階的に都道府県単位化を図り、国民皆保険の基盤である国民健康保険の安定的な運営を確保することとしており、厚生労働省としては、この最終取りまとめを踏まえ、制度改革の実現に向けて取り組んでいくこととなった *2 。

子ども手当の支給と子ども・子育て新システムの検討

(子ども手当の創設)

日本の総人口は横ばいであり、減少局面を迎えているが、国立社会保障・人口問題研究所「日本の将来人口(2006年12月推計)」によれば、今後、一層少子高齢化が進行し、本格的な人口減少社会になることが示された。

2010(平成22)年の合計特殊出生率は1.39(概数値)で前年を上回ったが、少子化の流れを変えるためには、安心して子どもを産み育てることができる環境整備が求められている。

特に子育て世帯からは、子育てや教育費等への経済的支援を求める声が強かった。

また、他の先進諸国と比べ、子育てに係る経済支援の手薄さが問題視された。

こうした中、2010年1月に少子化社会対策基本法に基づく施策の新しい大綱として、「子ども・子育てビジョン」が閣議決定された。

その後、子育て負担の軽減を図りつつ、次世代を担う子どもを社会全体で支える観点から、中学校修了までの児童を対象として新たに「子ども手当」の支給が、同年6月より始まった。

(幼保一体化を含む子ども・子育て支援のための包括的・一元的な制度の構築)

「明日の安心と成長のための緊急経済対策」(2009年12月8日閣議決定)に基づき、幼保一体化を含む新たな次世代育成支援のための包括的・一元的なシステムの構築について検討を行うため、2010(平成22)年1月に関係閣僚で構成する「子ども・子育て新システム検討会議」が開催され、同年6月には同検討会議で取りまとめられた「子ども・子育て新システムの基本制度案要綱」が、全閣僚で構成する少子化社会対策会議において決定された *3 。

(ひとり親家庭に対する支援制度の見直し)

生活保護の母子加算(月額23,260円(子一人、居宅【1級地】))については、一般母子世帯と生活保護を受給している被保護母子世帯との消費水準の均衡を図ることを目的として段階的に縮減し、2009年3月31日をもって廃止された。

しかし、生活保護を受給している世帯の子どもは、特に教育等の面で不利な状況に置かれており、子どもの貧困解消を図ることにより、子どもの教育機会を確保し、貧困の連鎖を防止できるよう、2009年12月に復活したところであり、2010年度においても引き続き支給することとなった。

また、ひとり親家庭の自立支援の拡充を図るため、これまで児童扶養手当の支給対象でなかった父子家庭にも児童扶養手当を支給することを内容とする「児童扶養手当法の一部を改正する法律」が2010(平成22)年5月に制定され、同年8月1日から施行された。

年金記録問題への取組みと無年金・低年金問題への対応

年金記録の誤りによって、本来受給できるはずの年金額が支給されないといった「消えた年金問題」については、2007(平成19)年以降大きく報道され、関連した個々の問題が明らかになるごとに国民から極めて大きな批判が起きた。

こうした年金記録問題については、「国家プロジェクト」として、2010(平成22)年度、2011(平成23)年度の2年間に集中的に取り組み、2013(平成25)年度までの4年間にできる限りの取組みを進めているところであり、これまでに約1,600万件(1,584万件:2011年6月末現在)の記録を基礎年金番号に統合したほか、記録回復後に年金を支払うまでの期間を短縮するなどの実績をあげている。

また、2010年10月からは検索システムを用いた紙台帳等とコンピュター記録の突き合わせを開始し、2011年1月には全国29のすべての作業拠点で記録の確認作業を行っている。

さらに、同年2月末には、インターネットを利用して、いつでも手軽に自分自身の年金記録を確認することができる「ねんきんネット」がスタートしたところであり、これらの取組みを通じて、引き続き年金記録の回復に努めている。

一方、無年金・低年金問題への対応も重要な問題になっていることを踏まえ、将来の無年金・低年金の発生を防止し、国民の高齢期における所得の確保をより一層支援する観点から、国民年金保険料の納付期間を2年から10年に延長する(3年間の時限措置)等の措置を行うことを盛り込んだ「国民年金及び企業年金等による高齢期における所得の確保を支援するための国民年金法等の一部を改正する法律」(年金確保支援法)が第177回国会において成立した。

介護サービスの基盤強化のための介護保険法の改正

介護保険制度については、2005(平成17)年の介護保険法改正において予防重視型システムへの転換、地域を中心とした新たなサービス体系としての地域密着型サービスの導入、地域包括支援センターの創設等、地域包括ケアシステム(日常生活圏域において、医療、介護、予防、住まい、生活支援サービスが切れ目なく継続的かつ一体的に提供される体制の整備)の確立に向け
てその一歩を踏み出した。

一方、今後、高齢化が一層進展していく中で、介護費用の増大とそれに伴う介護保険料の上昇、都市部等の急速な高齢化の進展、認知症を有する人や単身・高齢者のみの世帯の増加、介護人材の確保などに更に取り組む必要がある。

このような状況を踏まえ、高齢者が住み慣れた地域で自立して暮らすことを支援し、将来にわたって持続可能な介護保険制度を構築するため、2010(平成22)年5月から、社会保障審議会介護保険部会において議論が行われた。

ここでの議論を踏まえ、地域包括ケアの推進と、2012(平成24)年度から始まる第5期介護保険事業計画に向けた必要な見直しを盛り込んだ「介護サービスの基盤強化のための介護保険法等の一部を改正する法律」が第177回国会において成立し、2012(平成24)年4月1日に施行(一部は公布日である2011年6月22日に施行)されることとなった *7 。

障害者制度改革の検討

障害者の権利に関する条約(仮称)の締結に必要な制度改革を行うため、2009(平成21)年12月8日に閣議決定により「障がい者制度改革推進本部」が内閣に設置された。

また、同本部の下で2010(平成22)年1月から、障害者等を中心に構成された「障がい者制度改革推進会議」(以下「推進会議」という。)において、障害者に係る制度の改革についての議論が行われた。

推進会議での議論を踏まえて2010年6月29日に閣議決定された「障害者制度改革の推進のための基本的な方向について」において、応益負担を原則とする現行の障害者自立支援法を廃止し、制度の谷間のない支援の提供、個々のニーズに基づいた地域生活支援体系の整備等を内容とする「障害者総合福祉法」(仮称)を制定することとされた  。

自殺・うつ病等対策

自殺者数は1998(平成10)年以降、13年連続で年間3万人を超える深刻な状況であり、警察庁の統計によると、2010(平成22)年の自殺者数は31,690人で、前年に比べ1,155人(3.5%)減少した。

自殺の背景には多様かつ複合的要因が関連するが、特に、うつ病等の精神疾患が関連することが多い。

例えば警察庁の統計によれば、2010年における自殺者について、自殺の原因・動機が特定された者のうち、うつ病への罹患が自殺の原因・動機の一つとして推定できる者は約3割に及んでいる。
うつ病等の気分障害患者数は100万人を超え、うつ病はもはや国民病ともいえる状況であることも踏まえ、自殺対策の推進に当たっては、うつ病等の状態にある者へ適切な支援を行う取組みが重要であるといえる。

従前からも厚生労働省として各般の対策に取り組んでいたが、2010年1月には、厚生労働省において「自殺・うつ病等対策プロジェクトチーム」を開催し、同年5月に、悩みがある人を早く的確に支援につなぐゲートキーパー機能の充実や、職場のメンタルヘルス対策など、厚生労働分野において今後重点的に講ずべき対策をとりまとめた。

続いて、同年7月より、プロジェクトチームにおいて、向精神薬の処方の在り方等について検討を進め、同年9月に、薬剤師の活用やガイドラインの作成等、過量服薬の課題の解決に向けて実施する取組みをとりまとめた。

求職者支援制度の創設

短期に離職することにより、雇用保険の受給資格を満たさない者、受給期間が終了しても再就職できない者、週20時間未満の短時間労働者、自営廃業者等雇用保険を受給できない者等に対するセーフティネットとして緊急人材育成支援事業()が創設され、職業訓練、再就職、生活への総合的な支援を図ったが、雇用保険を受給できない方々に対する支援については、公労使の三
者構成による審議会(労働政策審議会職業安定分科会雇用保部会及び職業能力開発分科会)において、「緊急人材育成支援事業」の実施状況等を踏まえて検討が行われた。

検討の結果、恒久的な制度として雇用保険を受給できない求職者に対し、職業訓練を実施するとともに、職業訓練期間中の生活を支援し、職業訓練を受けることを容易にするための給付金を支給すること等を通じ、その就職を支援するための求職者支援制度を創設するための「職業訓練の実施等による特定求職者の就職の支援に関する法律」が2011年5月13日に成立し、同年10月1日より施行されることとなった。

以上です。

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執筆/資格の大原 社会保険労務士講座

金沢 博憲金沢 博憲

時間の達人シリーズ社労士24」「上級コース」を担当致しております。
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