副業・兼業の促進に関するガイドラインのまとめ

皆さん、こんにちは。

「副業・兼業の促進に関するガイドライン」のコピペです。

自分の教材作成資料としてアップしました。

1 副業・兼業の現状

副業・兼業を希望する者は年々増加傾向にある。

副業・兼業を行う理由は、自分がやりたい仕事であること、スキルアップ、資格の活用、十分な収入の確保等さまざまであり、また、副業・兼業の形態も、正社員、パート・アルバイト、会社役員、起業による自営業主等さまざまである。

現在の副業している者のどれくらい?

多くの企業では、副業・兼業を認めていない。

企業が副業・兼業を認めるにあたっての課題・懸念としては、自社での業務がおろそかになること、情報漏洩のリスクがあること、競業・利益相反になること等が挙げられる。また、副業・兼業に係る就業時間や健康管理の取扱いのルールが分かりにくいとの意見がある。

副業・兼業自体への法的な規制はないが、厚生労働省が平成29年12月時点で示しているモデル就業規則では、労働者の遵守事項に、「許可なく他の会社等の業務に従事しないこと」という規定がある。

裁判例では、労働者が労働時間以外の時間をどのように利用するかは、基本的には労働者の自由であり、各企業においてそれを制限することが許されるのは、労務提供上の支障となる場合企業秘密が漏洩する場合企業の名誉・信用を損なう行為信頼関係を破壊する行為がある場合、競業により企業の利益を害する場合と考えられる。

2 副業・兼業の促進の方向性

(1)副業・兼業は、労働者と企業それぞれにメリットと留意すべき点がある。

【労働者】メリット:

①離職せずとも別の仕事に就くことが可能となり、スキルや経験を得ることで、労働者が主体的にキャリアを形成することができる。

②本業の所得を活かして、自分がやりたいことに挑戦でき、自己実現を追求することができる。

③所得が増加する。

④本業を続けつつ、よりリスクの小さい形で将来の起業・転職に向けた準備・試行ができる。

留意点:

①就業時間が長くなる可能性があるため、労働者自身による就業時間や健康の管理も一定程度必要である。

②職務専念義務、秘密保持義務、競業避止義務を意識することが必要である。

③1週間の所定労働時間が短い業務を複数行う場合には、雇用保険等の適用がない場合があることに留意が必要である。

【企業】メリット:

①労働者が社内では得られない知識・スキルを獲得することができる。

②労働者の自律性・自主性を促すことができる。

③優秀な人材の獲得・流出の防止ができ、競争力が向上する。

④労働者が社外から新たな知識・情報や人脈を入れることで、事業機会の拡大につながる。

留意点:

①必要な就業時間の把握・管理や健康管理への対応、職務専念義務、秘密保持義務、競業避止義務をどう確保するかという懸念への対応が必要である。

(2)また、副業・兼業は、社会全体としてみれば、オープンイノベーションや起業の手段としても有効であり、都市部の人材を地方でも活かすという観点から地方創生にも資する面もあると考えられる。

(3)これらを踏まえると、労働者が副業・兼業を行う理由は、自分がやりたい仕事であること、十分な収入の確保等さまざまであり、業種や職種によって仕事の内容、収入等も様々な実情があるが、自身の能力を一企業にとらわれずに幅広く発揮したい、スキルアップを図りたいなどの希望を持つ労働者がいることから、こうした労働者については、長時間労働、企業への労務提供上の支障や企業秘密の漏洩等を招かないよう留意しつつ、雇用されない働き方も含め、その希望に応じて幅広く副業・兼業を行える環境を整備することが重要である。

また、いずれの形態の副業・兼業においても、長時間労働にならないよう、以下の3~5に留意して行われることが必要である。

なお、労働基準法の労働時間規制を潜脱するような形態や、合理的な理由なく労働条件を労働者の不利益に変更するような形態で行われる副業・兼業は、認められない。

3 企業の対応

(1)裁判例を踏まえれば、原則、副業・兼業を認める方向とすることが適当である。

副業・兼業を禁止、一律許可制にしている企業は、副業・兼業が自社での業務に支障をもたらすものかどうかを今一度精査したうえで、そのような事情がなければ、労働時間以外の時間については、労働者の希望に応じて、原則、副業・兼業を認める方向で検討することが求められる。

また、実際に副業・兼業を進めるにあたっては、労働者と企業双方が納得感を持って進めることができるよう、労働者と十分にコミュニケーションをとることが重要である。

(2)副業・兼業を認める場合、労務提供上の支障や企業秘密の漏洩等がないか、また、長時間労働を招くものとなっていないか確認する観点から、副業・兼業の内容等を労働者に申請・届出させることも考えられる。

その場合も、労働者と企業とのコミュニケーションが重要であり、副業・兼業の内容等を示すものとしては、当該労働者が副業・兼業先に負っている守秘義務に留意しつつ、例えば、自己申告のほか、労働条件通知書や契約書、副業・兼業先と契約を締結する前であれば、募集に関する書類を活用することが考えられる。

(3)特に、労働者が、自社、副業・兼業先の両方で雇用されている場合には、労働時間に関する規定の適用について通算するとされていることに留意する必要がある。また、労働時間や健康の状態を把握するためにも、副業・兼業の内容等を労働者に申請・届出させることが望ましい。

(4)各企業における検討にあたっては、今般、厚生労働省が改定したモデル就業規則の規定を参照することができる。

※就業時間の把握について

・労働基準法第38条では「労働時間は、事業場を異にする場合においても、労働時間に関する規定の適用については通算する。」と規定されており、「事業場を異にする場合」とは事業主を異にする場合をも含む。(労働基準局長通達(昭和23年5月14日基発第769号))

・使用者は、労働者が労働基準法の労働時間に関する規定が適用される副業・兼業をしている場合、労働者からの自己申告(4(3)参照)により副業・兼業先での労働時間を把握することが考えられる。

・個人事業主や委託契約・請負契約等により労働基準法上の労働者でない者として、または、労働基準法上の管理監督者として、副業・兼業を行う者については、労働基準法の労働時間に関する規定が適用されない。
なお、この場合においても、過労等により業務に支障を来さないようにする観点から、その者の自己申告により就業時間を把握すること等を通じて、就業時間が長時間にならないよう配慮することが望ましい。

※健康管理について

・使用者は、労働者が副業・兼業をしているかにかかわらず、労働安全衛生法第66条等に基づき、健康診断等を実施しなければならない。

(注)労働安全衛生法第66条に基づく一般健康診断及び第66条の10に基づくストレスチェックは、常時使用する労働者(常時使用する短時間労働者を含む。)が実施対象となる。この際、常時使用する短時間労働者とは、短時間労働者のうち、以下のいずれの要件をも満たす者となる(平成26年7月24日付基発0724第2号等抜粋)。

・期間の定めのない労働契約により使用される者(期間の定めのある労働契約により使用される者であって、契約期間が1年以上である者並びに契約更新により1年以上使用されることが予定されている者及び1年以上引き続き使用されている者を含む。)

・1週間の労働時間数が当該事業場において同種の業務に従事する通常の労働者の1週間の所定労働時間の3/4以上である者

・上記措置の実施対象者の選定にあたって、副業・兼業先における労働時間の通算は不要である。ただし、使用者が労働者に副業・兼業を推奨している場合は、労使の話し合い等を通じ、副業・兼業の状況も踏まえて、健康診断等の必要な健康確保措置を実施することが適当である。

・また、副業・兼業者の長時間労働や不規則な労働による健康障害を防止する観点から、働き過ぎにならないよう、例えば、自社での労務と副業・兼業先での労務との兼ね合いの中で、時間外・休日労働の免除や抑制等を行うなど、それぞれの事業場において適切な措置を講じることができるよう、労使で話し合うことが適当である。

※安全配慮義務について

労働者の副業・兼業先での働き方に関する企業の安全配慮義務について、現時点では明確な司法判断は示されていないが、使用者は、労働契約法第5条に、安全配慮義務(労働契約に伴い、労働者がその生命、身体等の安全を確保しつつ労働することができるよう、必要な配慮をすること)が規定されていることに留意が必要である。

4 労働者の対応

(1)労働者は、副業・兼業を希望する場合にも、まず、自身が勤めている企業の副業・兼業に関するルール(労働契約、就業規則等)を確認し、そのルールに照らして、業務内容や就業時間等が適切な副業・兼業を選択する必要がある。
また、実際に副業・兼業を行うにあたっては、労働者と企業双方が納得感を持って進めることができるよう、企業と十分にコミュニケーションをとることが重要である。

(2)また、(1)により副業・兼業を行うにあたっては、副業・兼業による過労によって健康を害したり、業務に支障を来したりすることがないよう、労働者(管理監督者である労働者も含む)が自ら、本業及び副業・兼業の業務量や進捗状況、それらに費やす時間や健康状態を管理する必要がある。

(3)そこで、使用者が提供する健康相談等の機会の活用や、勤務時間や健康診断の結果等の管理が容易になるようなツールを用いることが望ましい。
始業・終業時刻、休憩時間、勤務時間、健康診断等の記録をつけていくような民間等のツールを活用して、自己の就業時間や健康の管理に努めることが考えられる。ツールは、副業・兼業先の就業時間を自己申告により使用者に伝えるときにも活用できるようなものが望ましい。

(4)なお、副業・兼業を行い、20万円を超える副収入がある場合は、企業による年末調整ではなく、個人による確定申告が必要である。

5 副業・兼業に関わるその他の現行制度について

(1)労災保険の給付(休業補償、障害補償、遺族補償等)

事業主は、労働者が副業・兼業をしているかにかかわらず、労働者を1人でも雇用していれば、労災保険の加入手続を行う必要がある。

なお、労災保険制度は労働基準法における個別の事業主の災害補償責任を担保するものであるため、その給付額については、災害が発生した就業先の賃金分のみに基づき算定している。

また、労働者が、自社、副業・兼業先の両方で雇用されている場合、一の就業先から他の就業先への移動時に起こった災害については、通勤災害として労災保険給付の対象となる。
(注)事業場間の移動は、当該移動の終点たる事業場において労務の提供を行うために行われる通勤であると考えられ、当該移動の間に起こった災害に関する保険関係の処理については、終点たる事業場の保険関係で行うものとしている。(労働基準局長通達(平成18年3月31日基発第0331042号)

(2)雇用保険、厚生年金保険、健康保険

雇用保険制度において、労働者が雇用される事業は、その業種、規模等を問わず、全て適用事業(農林水産の個人事業のうち常時5人以上の労働者を雇用する事業以外の事業については、暫定任意適用事業)である。
このため、適用事業所の事業主は、雇用する労働者について雇用保険の加入手続きを行わなければならない。

ただし、同一の事業主の下で、1週間の所定労働時間が20時間未満である者、継続して31日以上雇用されることが見込まれない者については被保険者とならない(適用除外)。
また、同時に複数の事業主に雇用されている者が、それぞれの雇用関係において被保険者要件を満たす場合、その者が生計を維持するに必要な主たる賃金を受ける雇用関係についてのみ被保険者となる。

社会保険(厚生年金保険及び健康保険)の適用要件は、事業所毎に判断するため、複数の雇用関係に基づき複数の事業所で勤務する者が、いずれの事業所においても適用要件を満たさない場合労働時間等を合算して適用要件を満たしたとしても、適用されない

また、同時に複数の事業所で就労している者が、それぞれの事業所で被保険者要件を満たす場合、被保険者は、いずれかの事業所の管轄の年金事務所及び医療保険者を選択し、当該選択された年金事務所及び医療保険者において各事業所の報酬月額を合算して、標準報酬月額を算定し、保険料を決定する。
その上で、各事業主は、被保険者に支払う報酬の額により按分した保険料を、選択した年金事務所に納付(健康保険の場合は、選択した医療保険者等に納付)することとなる。

執筆/資格の大原 社会保険労務士講座

金沢 博憲金沢 博憲

時間の達人シリーズ社労士24」「経験者合格(旧上級)コース」を担当致しております。
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