皆さん、こんにちは。
労働安全衛生法の法改正についてまとめます。
今後の産業医・産業保健機能の強化についての行政文書のコピペです。
自分の教材作成資料としてアップしました。
労働安全衛生法の改正にかかわる内容です。
報告
平成29年3月28日に安倍内閣総理大臣を議長とする働き方改革実現会議において、働き方改革実行計画が決定された。
本計画においては、
「7.(3)労働者の健康確保のための産業医・産業保健機能の強化治療と仕事の両立支援に当たっての産業医の役割の重要性に鑑み、治療と仕事の両立支援に係る産業医の能力向上や相談支援機能の強化など産業医・産業保健機能の強化を図る。
また、過重な長時間労働やメンタル不調などにより過労死等のリスクが高い状況にある労働者を見逃さないため、産業医による面接指導や健康相談等が確実に実施されるようにし、企業における労働者の健康管理を強化する。
加えて、産業医の独立性や中立性を高めるなど産業医の在り方を見直し、産業医等が医学専門的な立場から働く方一人ひとりの健康確保のためにより一層効果的な活動を行いやすい環境を整備する。
これにより、働く人々が健康の不安なく、働くモチベーションを高め、最大限に能力を向上・発揮することを促進する。」
とされている。
この背景には、労働安全衛生法が制定された昭和47年当時と比べ、産業構造や経営環境が大きく変わり、産業医・産業保健機能に求められる役割や事業者が取り組むべき労働者の健康確保の在り方も変化してきていることがある。
具体的には、工場等における職業性の疾病の防止対策に加え、事務的業務に従事する方を含めた過労死等防止対策、メンタルヘルス対策、治療と仕事の両立支援対策などが新たな課題となってきている。
これらの課題に対しては、多様で柔軟な働き方、労働者個人と企業との多様な関係性を認め、労働者個人の価値観や選択を最大限に尊重しながら、労働者一人ひとりを支える仕組みづくりが求められている。
産業医制度は、事業場において、労働者の健康を保持するための措置、作業環境の維持管理、作業の管理、健康管理、健康教育等及び衛生教育に関すること等を行う者として、必要な能力を有する医師を選任し、これらの事項を行わせる制度である。
この産業医を中心とした産業保健機能についての検討に当たっては、上述の労働者の健康確保の在り方の変化や課題、労働者一人ひとりの健康確保のための制度の在り方、個人レベルのみならず職場や企業という組織レベルでの健康確保の制度の在り方、過労死等事案を繰り返さない制度の在り方などの視点を踏まえて議論を行った。
また、議論の参考とするため、産業医として実務を行う者等の専門家、産業医科大学、日本医師会等の関係者からの意見を聴取した。
当分科会において検討した結果は下記のとおりであり、今後の産業医・産業保健機能の強化に向けた対策として、下記の事項を踏まえて、速やかに法的整備を含めた所要の措置を講じることが適当である。
1 事業者における労働者の健康確保対策の強化
過重な長時間労働やメンタル不調などにより過労死等のリスクが高い状況にある労働者を見逃さないため、産業医による面接指導や健康相談等が確実に実施されるようにし、企業における労働者の健康管理を強化することが求められている。
事業者における労働者の健康確保等は、産業医が異常等の所見のあった労働者に対し、産業医学の専門的立場から事業者に意見を述べ、事業者は当該意見を勘案しつつ、労働者の実情を十分に考慮して、就業上の措置を講じるといった、事業者、産業医の連携による取組が必要であり、十分なコミュニケーションのもとで進められることが重要である。
また、事業者における労働者の健康確保の強化を図るためには、産業医は自らの専門性の向上を図るとともに、事業者は産業医の意見を組織として受け止め、より適切な対応を行うことができる仕組みの整備が必要である。
また、面接指導や健康診断の結果など、労働者の健康情報が適正に取り扱われ、労働者が安心して産業医等による健康相談等を受けられるようにするために、健康情報の事業場内での取扱ルールの明確化、適正化の推進が必要である。
さらに、労働者が直接産業医等に相談できるための環境整備やその仕組みの労働者への周知が必要である。
対策の方向性
ア 長時間労働者等への就業上の措置に対して産業医がより適確に関与するための方策
(ア)長時間労働者等への就業上の措置に対し、産業医がより適確に関与するために、就業上の措置の内容を産業医が適切に把握することが必要である。
産業医の選任が義務づけられている事業場については、事業者が異常等の所見のあった労働者に対して、産業医等からの意見を勘案して就業上の措置を行った場合はその内容を、行わなかった場合は行わなかった旨とその理由を産業医に情報提供しなければならないこととすることが適当である。
※就業上の措置とは、法第66条の5第1項(健康診断後の就業上の措置)、第66条の8第5項(長時間労働者の面接指導後の就業上の措置)、第66条の1 第6項(心理的な負担の程度を把握す るための検査を行った者の面接指導後の就業上の措置)に規定される事業者による措置をいう。
(イ)産業医は、労働者の健康を確保するために必要があると認められるときに、労働者の健康管理等について必要な勧告を行うことができるとされているが、その実効性を確保するためには、その勧告の内容が当該事業場の実情等を十分に考慮したものである必要がある。
また、産業医の勧告がその趣旨も含めて事業者に十分に理解され、かつ、企業内で適切に共有され、労働者の健康管理のために有効に機能するようにしていくことが重要である。
このため、産業医が勧告を行う場合にあっては、事前にその内容を示し、事業者から意見を求めることとするとともに、産業医から勧告を受けた事業者は、その内容を衛生委員会に報告することとし、もって、産業医の勧告が実質的に尊重されるようしていくことが適当である。
イ 健康情報の事業場内での取扱ルールの明確化、適正化の推進
(ア)事業者は、医師等による面接指導や健康診断の結果などから必要な健康情報を取得し、労働者の健康と安全を確保することが求められている。
こうした健康情報については、労働者にとって機微な情報も含まれていることから、労働者が雇用管理において労働者の不利益な取扱いにつながる不安なく安心して産業医等による健康相談等を受けられるようにするとともに、事業者が必要な情報を取得して労働者の健康確保措置を十全に行えるようにするため、適切な取扱いが必要である。
事業者は、そのために必要な措置を講じるとともに、雇用管理に必要な健康情報の範囲は、労働者の業務内容等によって異なることから、その具体的な取扱いについて衛生委員会等を活用して労使の関与のもと検討し、定めることとすることが適当である。
(イ)国は、事業場において労働者の健康状況に関する情報の適正な取扱いが図られるよう、必要な事項を定める指針を公表することが適当である。この際、事業者が医療保険者と連携し、労働者の健康の保持増進を進めることに寄与するものとすることが適当である。
ウ 労働者が産業医・産業保健スタッフに直接健康相談ができる環境整備等
(ア)事業者は、過重な長時間労働やメンタルヘルス不調などにより過労死等のリスクが高い状況にある労働者を見逃さないために、労働者が産業医・産業保健スタッフに直接健康相談できる仕組みなど、労働者が安心して健康相談を受けられる体制の整備に努めることとすることが適当である。
(イ)事業者は、産業医等への健康相談の利用方法、産業医の役割、事業場における健康情報の取扱方法について、各作業場の見やすい場所に掲示し、又は備え付けること、若しくは書面を労働者に交付すること、又は磁気テープ、磁気ディスクその他これらに準ずる物に記録し、かつ、各作業場に労働者が当該記録の内容を常時確認できる機器を設置することにより、労働者に周知することが適当である。
2 産業医がより一層効果的な活動を行いやすい環境の整備
産業医の独立性や中立性を高めるなど産業医の在り方を見直し、産業医等が医学専門的な立場から働く方一人ひとりの健康確保のためにより一層効果的な活動を行いやすい環境を整備することが求められている。
このため、産業医が企業内で産業医学の専門的立場から、独立性をもって職務を行いやすい仕組みや、より効果的に活動するために必要な情報が提供される仕組みが必要である。
さらに、産業医が衛生委員会に積極的に提案できることその他産業医の権限の明確化が必要である。
対策の方向性
ア 産業医の独立性、中立性を強化するための方策
(ア)産業医が、産業医学の専門的立場から、独立性をもって職務を行うことができるよう、産業医は、産業医学に関する知識に基づいて、誠実にその職務を行わなければならないことを法令に明示することとすることが適当である。
(イ)産業医は、産業医学に関する知識・能力の維持向上に努めなければならないこととすることが適当である。
(ウ)産業医の身分の安定性を担保し、職務の遂行の独立性・中立性を高める観点から、産業医が離任した場合には、事業者はその旨及びその理由を衛生委員会に報告することとすることが適当である。
(エ)国は、産業医の養成体制の強化、継続的な資質向上のための取組及び事業者と産業医が協力して産業保健活動を効果的に進めることについて必要な支援を図ることが適当である。
イ 産業医がより効果的に活動するために必要な情報が提供される仕組みの整備
事業者は、産業医が労働者の健康管理等を適切に行うために必要な情報を提供することが適当である。
この必要な情報には、「休憩時間を除き1週間当たり40時間を超えて労働させた場合におけるその超えた時間が1月当たり80時間を超えた労働者の氏名及び当該労働者に係る超えた時間に関する情報」や「労働者の健康管理のために必要となる労働者の業務に関する情報」等が含まれる。
ウ 産業医が衛生委員会に積極的に提案できることその他産業医の権限の明確化
(ア)衛生委員会において、その委員である産業医が労働者の健康管理の観点から必要な調査審議を求めることができることとすることが適当である。
また、調査審議の発議のみならず、衛生委員会の活発な議論を進めるため、産業医は衛生委員会に出席して専門的立場から必要な発言等を積極的に行うことが求められる。
(イ)産業医のより一層効果的な活動を行いやすい環境の整備の観点から、現場の労働者等からの情報収集、事業者や作業主任者等に対する意見、危機的緊急事態での現場で作業する労働者等への指示など、当該事業場の実情に応じて必要となる産業医の権限についてより具体化・明確化することが適当である。
3 その他
1,2に記載した措置の履行確保のため、産業医の勧告及び衛生委員会から事業者に対する意見並びにこれらを踏まえた事業者の措置の内容について事業者が記録し、保存することとすることが適当である。
1のア(ア)(事業者から産業医への就業上の措置に関する情報の提供)、1のウ(労働者が産業医・産業保健スタッフに直接相談ができる環境整備等)及び2のイ(事業者から産業医への労働者の健康管理等に必要な情報の提供)の産業医についての措置は、法第13条の2に基づいて50人未満の事業場において選任される医師等についての措置として、事業者の努力義務とすることが適当である。
国は、1,2に記載した措置に関し、中小企業においても円滑に進められるよう、産業保健総合支援センターやその地域窓口の機能の強化、周知による利用促進などの必要な支援を行うことが適当である。
また、この報告における産業医・産業保健機能の強化に向けた方策については、必要な省令や指針の内容の検討に要する期間、それを踏まえた中小企業も含めた各企業の準備期間も考慮して、その実施の時期を定めることが必要である。
加えて、国においては、産業医が果たすべき労働者の健康確保等に係る重要な役割に鑑み、現場の実態を踏まえつつ、産業医・産業保健機能の着実な強化に向けて、不断の見直しを進めるべきである。その際、「産業医制度の在り方に関する検討会」(平成28年12月報告書とりまとめ)において今後課題とされた事項に留意して、対応することが必要である。
執筆/資格の大原 社会保険労務士講座
「時間の達人シリーズ社労士24」「経験者合格(旧上級)コース」を担当致しております。
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