【労災】複数事業労働者・複数業務要因災害とは【改正】

金沢博憲(社労士24)です。

今記事では、2021年社労士試験対策向けの労働者災害補償保険法改正点の趣旨をご紹介します。

改正の背景

「労災保険」は、労働者が業務や通勤が原因で、けがや病気等になったときや死亡したときに、治療費や休業補償など、必要な保険給付を行う制度です。

これまでは、複数の会社で働いている労働者の方について、働いているすべての会社の賃金額を基に保険給付が行われないこと、すべての会社の業務上の負荷(労働時間やストレス等)を合わせて評価して労災認定されないことが課題でした。

このため、多様な働き方を選択する方やパート労働者等で複数就業している方が増えているなど、副業・兼業を取り巻く状況の変化を踏まえ、複数事業労働者の方が安心して働くことができるような環境を整備する観点から、労働者災害補償保険法(昭和22年法律第50号)が改正されました。

以下は、その改正趣旨についての行政解釈です。

労働者災害補償保険法改正の趣旨

我が国における、業主が同一人でない二以上の事業に使用される労働者(以下「複数事業労働者」という。)を取り巻く状況を見ると、多様な働き方を選択する者やパートタイム労働者として複数就業している労働者が増加している実情がある。

また、「働き方改革実行計画」(平成29年3月28日働き方改革実現会議決定)等においても、副業・兼業の場合の労災補償の在り方について、検討を進めることとされていたところである。

今般、改正法により、複数事業労働者が安心して働くことができる環境を整備するため、複数事業労働者に関する保険給付について複数事業労働者を使用する全事業の賃金を合算すること、複数事業労働者を使用するそれぞれの事業における業務上の負荷のみでは業務と疾病等々の間に因果関係が認められない場合に、複数事業労働者を使用する全事業の業務上の負荷を総合的に評価すること等について、労災法等の改正が行われた。

1 労災保険の目的の改正

今般の改正により、労災保険の目的として、「複数事業労働者」の二以上の事業の業務を要因とする負傷、疾病、障害又は死亡(以下「複数業務要因災害」という。)についても保険給付を行うことが加えられた(新労災法第1条)。

これに伴い、新労災法第2条の2において、新労災法第1条の目的を達成するため、保険給付を行う場合について複数業務要因災害が加えられた

複数業務要因災害が134秒で分かる動画は↓

この複数業務要因災害に関する保険給付は、それぞれの就業先の業務上の負荷のみでは業務と疾病等との間に因果関係が認められないことから、いずれの就業先も労働基準法上の災害補償責任は負わないものである。

また、複数事業労働者に関する保険給付を行うこととなるため、事務の所轄についても複数の都道府県労働局(以下「局」という。)及び労働基準監督署(以下「署」という。)が関係する場合が想定される。

業務災害及び通勤災害に係る事務の所轄の取扱いは従来の通りであるが、複数業務要因災害に係る事務の所轄は、生計を維持する程度の最も高い事業の主たる事務所を管轄する局又は署となる(新労災則第1条)。

この場合における、生計を維持する程度の最も高い事業の主たる事務所とは、原則として複数就業先のうち給付基礎日額の算定期間における賃金総額が最も高い事業場を指すものである。

なお、業務災害に係る事務を所轄する局又は署と複数業務要因災害に係る事務を所轄する局又は署が異なる場合、業務災害に係る事務を所轄する局又は署において保険給付に係る調査を優先して行うこととなるため、複数業務要因災害に係る事務を所轄する局又は署の事務の全部又は一部を、業務災害に係る事務を所轄する局又は署に委嘱することができることとした(新労災則第2条の2)。

2 保険給付関係

(1)通則関係

ア 複数業務要因災害

新労災法第7条第1項第2号に複数業務要因災害の定義を定めたものである。

従来は、労働者を使用する事業ごとに業務上の負荷を評価しており、仮に単独の事業であれば業務災害と認定し得る業務上の負荷を複数の事業において受けている場合には保険給付が行われず、労働者の稼得能力や遺族の被扶養利益の損失に対する填補が不十分であった。

今般、業務災害には該当しないものの、各事業における業務上の負荷を総合的に評価すれば労災認定される場合には、労働者の稼得能力や遺族の被扶養利益の損失を填補する観点から複数業務要因災害という新たな保険給付が創設された。

▼複数業務要因災害として考えられる例▼

<事例>
請求人は、食料品の販売を行っているA社に勤務し、店長として勤務していた。
A社での月の時間外労働時間数は、毎月60時間程度であった。
請求人は、店舗の仕入金額と納品書の金額が合わないことについて、以前から社長に何度か注意を受けていた。再度、金額が合わないことがあったため、社長から、「今まで何度も注意をしたのに改善しない。しっかり手順に沿って業務を行いなさい。」と強い口調で叱責された。
請求人は、更に生活費が必要となったため、深夜にB社で、道路工事現場の誘導員の仕事を始めた。B社の仕事に慣れてくると、平日、A社の仕事を終えた後、週 3 日、夜間に 4 時間程度仕事を行うようになった。
A社とB社の労働時間を通算すると、月の時間外労時間数は 110 時間程度だった。

請求人は、その後、精神疾患を発病した。

労災請求について、請求人は、「Aの業務が原因であると思っているが、Bの業務もあわせて長時間労働になっていたことも関係していると思う。」と申述している。

【業務災害についての取扱い】・・・A社とB社の負荷は合算されない

A社の業務で、「上司とのトラブルがあった」に該当する出来事があり、上司から業務指導の範囲内の強い指導・叱責を受けたため、心理的負荷の強度は、「中」となる。
B社の業務では、具体的出来事は確認されない。
→「業務外」となる

【複数業務要因災害としてみると】・・・A社とB社の負荷を合算する

A社の業務で、「上司とのトラブルがあった」に該当する出来事があり、心理的負荷の強度は、「中」となる。(これまでの取り扱いと同様)
AとBの労働時間を合算すると、「上司とのトラブルがあった」の出来事の後に、恒常的な長時間労働(月 100 時間を超える時間外労働)が認められるため、
心理的負荷の強度を「強」に修正する。
→複数業務要因災害として労災認定される

ここで、「二以上の事業の業務を要因とする」とは、複数の事業での業務上の負荷を総合的に評価して当該業務と負傷、疾病、障害又は死亡(以下「傷病等」という。)の間に因果関係が認められることをいう。

なお、業務災害の認定に関する取扱いは従来のとおりであり、複数事業労働者に対して業務災害として保険給付を行う場合を除き、複数業務要因災害に該当するか否かの判断を行うものである。

イ 複数事業労働者

複数事業労働者については、新労災法第7条第1項第2号により、これに類する者も含むとしており、その範囲について新労災則第5条において、傷病等の原因又は要因となる事由が生じた時点において事業主が同一人でない2以上の事業に同時に使用されていた労働者と定めている。

これは、傷病等の要因となる出来事と傷病等の発症の時期が必ずしも一致しないことがあるため、複数業務要因災害の対象である複数事業労働者について、傷病等が発症した時点において複数事業労働者に該当しない場合であっても、当該傷病等の要因となる出来事と傷病等の因果関係が認められる期間の範囲内で複数事業労働者に当たるか否かを判断すべきときがあることから規定されたものである。

ウ 給付基礎日額

複数事業労働者に関する保険給付に係る給付基礎日額については、業務災害、複数業務要因災害及び通勤災害のいずれの場合においても、複数事業労働者を使用する事業ごとに算定した給付基礎日額に相当する額を合算することとなる(新労災法第8条第3項)。

複数事業労働者に係る給付基礎日額の算定の詳細については別途通知する。

エ その他の通則規定

複数業務要因災害に係る新たな保険給付が新設されたことに伴い、新労災法第7条から第 12 条の7までの業務災害及び通勤災害に係る規定の間に複数業務要因災害に係る規定を加える所要の改正が行われた。

(2)業務災害に関する保険給付関係

業務災害に関する保険給付については、原則として従来と取扱いが変わるものではないが、複数事業労働者に関する保険給付に係る給付基礎日額については、複数事業労働者を使用する事業ごとに算定した給付基礎日額に相当する額を合算することとなる。

これに伴い、一の事業場において有給休暇を取得するなどして一部の賃金を受けつつ、他の事業場において負傷又は疾病により無給での休業をして「賃金を受けない日」に該当する場合があり得る。

複数事業労働者に対する稼得能力の塡補の観点からは、一の事業場で有給休暇の取得により賃金を受けている場合であっても、他の事業場における無給での休業に対し、休業補償給付が支払われることが適切であることから、所定労働時間のうちその一部についてのみ労働する日に加えて、同じくその一部についてのみ賃金が支払われる休暇が新たに規定されたものである(新労災法第14 条第1項)。

また、複数事業労働者が保険給付の請求を行う際には、給付基礎日額の算定等に影響があることから、複数事業労働者であるか否かを記載させるとともに、業務上の事由による傷病等が発生した事業場を除く事業場(以下「非災害発生事業場」という。)であっても賃金等について証明を受けることとした(新労災則第 12 条から第 12 条
の3まで、第 13 条、第 14 条の2、第 15 条の2、第 16 条、第 17 条の2及び第 18 条の2)。

(3)複数業務要因災害に関する保険給付関係

ア 保険給付の種類等

複数業務要因災害に関する保険給付は、新労災法第 20 条の2に規定されているとおり、複数事業労働者療養給付、複数事業労働者休業給付、複数事業労働者障害給付、複数事業労働者遺族給付、複数事業労働者葬祭給付、複数事業労働者傷病年金及び複数事業労働者介護給付であり、これらの給付はそれぞれ業務災害に関する療養補償給付、休業補償給付、障害補償給付、遺族補償給付、葬祭料、傷病補償年金及び介護補償給付又は通勤災害に関する療養給付、休業給付、障害給付、遺族給付、葬祭給付、傷病年金及び介護給付と同一内容であり、その給付内容、受給権者、他の社会保険による給付との調整等も業務災害又は通勤災害の場合と同様である(新労災法第 20 条の2から第 20 条の 10 まで)。

このため業務災害及び通勤災害に関する保険給付について療養(補償)給付のように略称していたものについては、今後、業務災害、複数業務要因災害及び通勤災害に関する保険給付をまとめて療養(補償)等給付のように略称するものとする。

イ 保険給付の請求

複数業務要因災害に関する保険給付は、局署において各事業場の業務上の負荷を調査しなければ分からないことがあること、また、業務災害又は複数業務要因災害のどちらに該当するかを請求人の請求の際に求めることは請求人の過度の負担となることから、複数業務要因災害に関する保険給付の請求と業務災害に関する保険給付の請求は、同一の請求様式に必要事項を記載させることとする。

このため、一の事業のみに使用される労働者が保険給付を請求する場合は、業務災害に関する保険給付のみを請求したものとし、複数事業労働者が保険給付を請求する場合は、請求人が複数業務要因災害に係る請求のみを行う意思を示す等の請求人の特段の意思表示のない限り業務災害及び複数業務要因災害に関する両保険給付を請求したものとする。

この場合において、複数事業労働者の業務災害として認定する場合は、業務災害の認定があったことをもって複数業務要因災害に関する保険給付の請求が、請求時点に遡及して消滅したものとし、複数業務要因災害に関する保険給付の不支給決定及び請求人に対する不支給決定通知は行わないものとする。

これに対し、業務災害の不支給を決定する場合は複数業務要因災害として認定できるか否かにかかわらず、その決定を行うとともに、請求人に対して不支給決定通知を行うこと。

ウ 複数業務要因災害の範囲

複数業務要因災害による疾病の範囲は、新労災則第 18 条の3の6により、労働基準法施行規則(昭和 22 年厚生省令第 23 号)別表1の2第8号及び第9号に掲げる疾病(以下「脳・心臓疾患、精神障害」という。)及びその他二以上の事業の業務を要因とすることの明らかな疾病としており、現時点においては、脳・心臓疾患、精神障害が想定されている。

(4)通勤災害に関する保険給付関係

通勤災害に関する保険給付については、原則として従来と取扱いが変わるものではないが、複数事業労働者に関する保険給付に係る給付基礎日額については、複数事業労働者を使用する事業ごとに算定した給付基礎日額に相当する額を合算することとなる点について、業務災害と同様である。

また、複数業務要因災害に係る規定を新設したことに伴い、通勤災害に係る規定が複数業務要因災害の後に規定されることとなったため、従前の通達において通勤災害に関する事項について労災法等の関係法令の条項を指定している部分は、読み替えて適用すること。

3 社会復帰促進等事業関係

社会復帰促進等事業についても、複数業務要因災害に係る規定が追加されたものである(新労災法第 29 条)。

4 費用の負担関係

複数業務要因災害に係る事業主からの費用徴収については、通勤災害の場合と同様に、仮に複数業務要因災害を業務災害とみなした場合の災害補償の価額(ただし、当該複数事業労働者を使用する事業ごとに算定した額に限る。)の限度で行うことができることとされた(新労災法第 31 条)。

5 特別加入関係

労基法上の労働者でない者についても、業務の実態、災害の発生状況等からみて労働者に準じて労災保険により保護するにふさわしい者について特に労災保険の加入を認めるという特別加入の趣旨を踏まえれば、特別加入者に対しても、改正の対象に含めることが適当である。

このため、労働者であってかつ他の事業場において特別加入をしている者及び複数の事業場において特別加入をしている者についても保護の対象とすることとされた(新労災法第 33 条から第 37 条まで)。

なお、特別加入者に係る給付基礎日額については新労災則 46 条の 20 各号(新労災則第 46 条の 24 及び第 46 条の 25 の3において準用する場合を含む。)に定める方法により算定することとなるものである。

特に、従来から特別加入者に係る給付基礎日額については自動変更対象額及び年齢階層別の最高・最低限度額が適用されないものとされているところであり、この取扱いについて変更はない。

このため、労働者であってかつ他の事業場において特別加入をしている者及び複数の事業場において特別加入をし
ている者の特別加入者としての給付基礎日額相当部分については、自動変更対象額及び年齢階層別の最高・最低限度額が適用されないものとして算定することとなるものである。

6 不服申立て及び訴訟関係

不服申立て及び訴訟に関する取扱いは従来からの変更はない。

なお、業務災害と複数業務要因災害の両保険給付の請求があった場合における業務災害としての支給決定に対する不服申立てについては、複数業務要因災害に係る請求は遡及して消滅することから、業務災害に対してのみ申立てがあったものとして処理すること。

7 雑則関係及び罰則関係

雑則関係及び罰則関係についても、複数業務要因災害に係る新たな保険給付が新設されたことに伴い、業務災害及び通勤災害に係る規定の間に複数業務要因災害に係る規定を加える所要の改正が行われたものであるが、取扱いについては従来と同様である。

8 暫定措置及び特例措置

業務災害及び通勤災害に係る年金前払一時金及び損害賠償との調整についても、複数業務要因災害に係る新たな保険給付が新設されたことに伴い、複数業務要因災害に係る規定を加える所要の改正が行われたものであるが、取扱いについては従来と同様である。

9 経過措置

施行日(令和2年9月1日)前に発生した傷病等に関し支給する業務災害又は通勤災害に関する保険給付について、従前の例により処理することとし、新労災法の規定は施行日以後に発生した傷病等に関し支給する業務災害、複数業務要因災害又は通勤災害に関する保険給付について適用するものである。

この場合において、負傷又は死亡が発生した日とは、実際に負傷又は死亡があった日を、疾病が発生した日とは、疾病について現実に療養が必要となった日を、また、障害が発生した日とは、傷病が治ゆした日に障害が残存している場合の当該治ゆ日を指すものであり、給付基礎日額の算定における算定事由発生日とは異なることに留意すること。

10 労働者災害補償保険特別支給金支給規則の改正

特別支給金についても複数業務要因災害に関する支給を加えるとともに、複数事業労働者について災害発生事業場における賃金額や特別給与の金額だけでなく非災害発生事業場の賃金額や特別給与の金額も合算することとした。

なお、特別支給金の申請については、従来の取扱いを変更するものではない。

(1)給付基礎日額について

休業特別支給金の支給に用いる休業給付基礎日額は、労災法に基づく休業給付基礎日額であることから、複数事業労働者に関し支給する休業特別支給金は、複数事業労働者を使用する事業ごとに算定した給付基礎日額に相当する額を合算した額を基礎として政府が算定する額をもとに算定されるものである。

(2)複数業務要因災害に係る特別支給金について

特別支給金について、複数業務要因災害に関する支給を加えることとしたため、各支給金に係る規定に複数業務要因災害に係る規定を加えたものである。

(3)算定基礎年額及び算定基礎日額について

特別支給金の算定に用いる算定基礎年額及び算定基礎日額については、労災法にはないものであるが、今般の法改正の趣旨を踏まえ、これらについても複数事業労働者に関する支給金の場合は、複数事業労働者を使用する事業ごとに算定した算定基礎年額に相当する額を合算した額をもとに算定することとした(新特支金則第6条)。

なお、障害特別支給金、遺族特別支給金及び傷病特別支給金については、給付基礎日額、算定基礎年額及び算定基礎日額を用いて支給していないことから、支給額に変更はない。

11 関係告示の改正

改正法の施行に伴い、労働者災害補償保険法の施行に関する事務に使用する文書の様式を定める件(昭和 35 年労働省告示第 10 号)等、関係告示について所要の改正を行ったものである。

12 関係通達の改正

改正法の施行に伴い、関係通達を別紙1のとおり改める。

なお、従来の通達等については、本通達に個別の記載が無いものについてもその趣旨を勘案し適宜読み替えて運用されたい。

13 その他の改正

従来、遺族に対し支給する保険給付及び特別支給金の請求書においては死亡した労働者の個人番号(行政手続きにおける特定の個人を識別するための番号の利用等に関する法律(平成 25 年法律第 27 号)第2条第5項に規定する個人番号をいう。以下同じ。)を記載させることとしていたが、死者について個人番号を求める必要性を考慮し、
今後は死者の個人番号を求めないこととしたこと。

第2 労働保険の保険料の徴収等に関する法律改正関係(労災保険関係)

今般の改正法により、労働保険の保険料の徴収等に関する法律(昭和44年法律84号)についても、一般保険料、第二種特別加入保険料及び第三種特別加入保険料に係る規定に所要の改正が行われた(新徴収法第 12 条第2項及び第3項)。

特に、メリット収支率の算定に当たっては、別紙2に示す通り、災害発生事業場における賃金額をもとに算定した額に相当する額のみを算入する等しているため留意すること(新徴収則第12条から第12条の3)。

 

第3 失業保険法及び労働者災害補償保険法の一部を改正する法律及び労働保険の保険料の徴収等に関する法律の施行に伴う関係法律の整備に関する法律改正関係

失業保険法及び労働者災害補償保険法の一部を改正する法律及び労働保険の保険料の徴収等に関する法律の施行に伴う関係法律の整備に関する法律(昭和44年法律第85号)では、暫定任意適用事業における保険給付の特例について規定しているが、当該特例においても労災法に新設された複数業務要因災害に関する保険給付及び複数事業労
働者に関する保険給付については複数事業労働者を使用する事業ごとに算定した給付基礎日額に相当する額を合算することとする必要があるため、所要の規定の整備が行われたものである。

なお、複数事業労働者を使用する事業に暫定任意適用事業で、保険関係が未成立の事業が含まれている場合は、新労災法による複数業務要因災害に関する保険給付や給付基礎日額の合算は行われないものであるため留意すること。

 

まとめ

●複数事業労働者の方やその遺族等の方への労災保険給付は、全ての就業先の賃金額を合算した額を基礎として、保険給付額を決定します。

●けがや病気が発生したときに、事業主が同一でない複数の事業場で就業している方が対象ですが、
・特別加入されている方(労働者として働きつつ特別加入されている方、複数の特別加入をされている方。)
・けがや病気の原因の発生時に事業主が同一でない複数の事業場で就業していた方も対象です。

●1つの事業場で労災認定できない場合であっても、事業主が同一でない複数の事業場の業務上の負荷(労働時間やストレス等)を総合的に評価して労災認定できる場
合は保険給付が受けられます。

●これらの改正は、2020年9月1日以降に発生したけがや病気等について対象となります。

 

執筆/資格の大原 社会保険労務士講座

金沢 博憲金沢 博憲

時間の達人シリーズ社労士24」「経験者合格コース」を担当致しております。
是非Twitterのフォローお願いいたします!

↓ランキングに参加しています。↓

にほんブログ村 資格ブログ 社労士試験へ