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2018年6月に成立した「働き方改革関連法」において、不合理な待遇差の解消に向けた規定が盛り込まれました。

今回改正された「パートタイム・有期雇用労働法」と「労働者派遣法」のポイント、雇用形態に関わらない公正な待遇の確保に係る基本的考え方、派遣労働者に対する待遇に関する情報の明示・説明の方法等について解説しています。

1章 非正規雇用労働者の待遇改善が求められる背景

少子高齢化の進展により、2030年には人口がピークである2008年の1億280 万人から約1000万人減少することが見込まれています。
それに伴い生産年齢人口も減少し、企業の人手不足は深刻さを増していきます。

そのような下で企業が持続的に成長していくためには、通常の労働者のみならず、短時間・有期雇用労働者や派遣労働者といった非正規雇用労働者が活躍できる職場環境を整備し、労働者から選ばれる企業となることが大切です。

そのためには通常の労働者と非正規雇用労働者との間の不合理と認められる待遇の違い(以下、「不合理な待遇差」といいます。)を解消し、非正規雇用労働者が納得して働ける待遇を実現することが求められます。

とりわけ、派遣労働者については、派遣労働者を雇用する事業主と、派遣労働者を指揮命令する事業主が異なることに加え、派遣先の労働力を一時的に確保するために活用するケースが多いことから、待遇改善やキャリア形成が疎かにされがちです。

しかし、派遣労働者を適正に活用していくためには、派遣労働者であるという理由のみによって、通常の労働者との間に不合理な待遇差があってはなりません。

派遣労働者の待遇改善を図り、派遣労働者が納得感と意欲を持って働くことのできる環境を整備することは、派遣元及び派遣先の双方にとっての利益につながります。

働き方改革実現会議において「働き方改革実行計画」が 2017年3月に決定され、正規雇用労働者と非正規雇用労働者との間の不合理な待遇差の解消、いわゆる「同一労働同一賃金」の実現に向けて法制度とガイドラインを整備することを打ち出しました。

これを受けて、同年4月より労働政策審議会において法整備に向けた議論が行われ、同年6月に建議がとりまとめられ、同年9月に建議を踏まえた法律案要綱が諮問、答申されました。

2018 年6月には、不合理な待遇差の解消に関する規定も含めた「働き方改革を推進するための関連法律の整備に関する法律」が国会において成立し、「短時間労働者の雇用管理の改善等に関する法律(パートタイム労働法)」、「労働契約法」、「労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律(労働者派遣法)」等が改正されました。

この結果、通常の労働者と短時間・有期雇用労働者との間の不合理な待遇差に関わる規定は「パートタイム・有期雇用労働法」(パートタイム労働法の改正後の名称)に、同じく通常の労働者と派遣労働者との間の不合理な待遇差に関わる規定は「労働者派遣法」に定められることになりました。

2章 雇用形態に関わらない公正な待遇の確保の考え方と枠組み

1.雇用形態に関わらない公正な待遇の確保

雇用形態に関わらない公正な待遇の確保に関わる法改正の概要は、図表 1-2 に示す通りです。

なお、図表1-2 内の「1.不合理な待遇差を解消するための規定の整備」と「2.労働者に対する待遇に関する説明義務の強化」のうち、短時間・有期雇用労働者に関することは本項で、派遣労働者に関することは「2.労働者派遣法改正のポイント」で詳しく説明します。

【図表 1-2 パートタイム・有期雇用労働法及び労働者派遣法の主な改正ポイント】

1.不合理な待遇差を解消するための規定の整備

 「不合理な待遇差」があるかは、個々の待遇ごとに、その待遇の性質・目的に照らして適切と認められる事情を考慮して判断されるべき旨が明確にされました。
 短時間労働者に加えて、有期雇用労働者にも「均等待遇」の確保が義務化されました。
 派遣労働者については、①派遣先の通常の労働者との均等・均衡待遇、②一定の要件(同種の業務に従事する一般労働者の平均賃金と同等以上の賃金であること等)を満たす労使協定による待遇のいずれかを確保することが義務化されました。

2.労働者に対する待遇に関する説明義務の強化

 短時間・有期雇用労働者、派遣労働者から求めがあった場合には、事業主(派遣労働者については派遣元)は短時間・有期雇用労働者、派遣労働者に対して、通常の労働者との間の待遇差の内容、その理由等について説明することが義務化されました。

3.行政による履行確保措置及び裁判外紛争解決手続(行政ADR)の規定の整備

 行政による事業主への助言・指導等や、短時間・有期雇用労働者、派遣労働者と通常の労働者との間の待遇差等について紛争になっている労働者又は事業主が無料で利用できる裁判外紛争解決手続(行政 ADR)の根拠規定が整備されました。

4.法の施行日
【パートタイム・有期雇用労働法】
 大企業:2020 年4月1日
 中小企業:2021 年4月 1 日
【労働者派遣法】
 2020 年4月1日

【改正労働者派遣法の施行期日について】
改正労働者派遣法の施行日は、派遣元・派遣先の企業の規模に関わりなく、2020 年4月1日です。
また、2020 年4月1日以降に締結された労働者派遣契約だけではなく、同日をまたぐ契約も、同日から、改正法の適用を受けます

 

【用語の定義】
○通常の労働者・・・・・ いわゆる「正規型」の労働者及び事業主と期間の定めのない労働契約を締結しているフルタイム労働者
○短時間労働者・・・・・ 労働契約期間の有期・無期に関わらず、1週間の所定労働時間が同一の事業主に雇用される通常の労働者の1週間の所定労働時間に比べて短い労働者
○有期雇用労働者・・・ 期間の定めのある労働契約を締結している労働者
○短時間・有期雇用労働者 ・・・ 短時間労働者及び有期雇用労働者
○比較対象労働者・・・ 不合理な待遇差の有無を検証するために派遣労働者と比較する派遣先の労働者(派遣先において選出される労働者であって、職務の内容、職務の内容・配置の変更の範囲が派遣労働者と同一であると見込まれる通常の労働者等)が該当します。

図表 1-2(4 ページ)に示した「1.不合理な待遇差を解消するための規定の整備」に関連したパートタイム・有期雇用労働法の改正のポイントは図表 1-3 になります。

具体的には以下の2つです。

①均衡待遇規定については、不合理な待遇差であるかは、個々の待遇ごとに、待遇の性質・目的に照らして適切と認められる事情を考慮して判断されるべき旨が明確化されたこと

②短時間労働者のみを対象としてきた均等待遇規定が有期雇用労働者にも拡大されたこと
また、均等待遇、均衡待遇の比較対象となる通常の労働者の範囲は、同一企業内に統一されました。
なお、均等待遇あるいは均衡待遇が求められるのは、基本給、賞与、手当、福利厚生、教育訓練、安全管理等の全ての待遇です。

 

 

2.労働者派遣法改正のポイント

A.法改正の主要な点

派遣労働者の「1.不合理な待遇差を解消するための規定の整備」に関連した労働者派遣法の主要な改正点は図表 1-4 になります。

その中で特に重要な点は以下の3つです。

①派遣労働者の待遇は、「派遣先の通常の労働者との均等・均衡待遇を図る方式(以下、「派遣先均等・均衡方式」といいます。)」、「派遣元における労使協定に基づいて待遇を決定する方式(以下、「労使協定方式」といいます。)」のいずれかの方式によって決めることが義務化されたこと

②派遣先は派遣元に対し、派遣先の労働者であって派遣元が派遣労働者の均等・均衡待遇を図るに当たって参考にする労働者(5 ページの「比較対象労働者」がこれに該当します。)の待遇等に関する情報を提供することが義務化されたこと

③派遣元が上記①を遵守できるように、派遣先は、派遣料金について配慮することが規定されたこと

 

B.「派遣先均等・均衡方式」と「労使協定方式」

では、派遣労働者の待遇を決定する2つの方式、すなわち「派遣先均等・均衡方式」、「労使協定方式」とはどのようなものでしょうか。

「派遣先均等・均衡方式」とは、派遣先の通常の労働者との均等・均衡待遇を図る方式です。

基本給、賞与、手当、福利厚生、教育訓練、安全管理等、全ての待遇のそれぞれについて、派遣先の通常の労働者との間に「不合理な待遇差」がないように待遇を決定することが求められます。

他方、「労使協定方式」とは、派遣元において、労働者の過半数で組織する労働組合又は労働者の過半数代表者と一定の要件を満たす労使協定を締結し、当該協定に基づいて派遣労働者の待遇を決定する方式です。

労使協定に定める「賃金」については、職業安定局長通知で示される、派遣労働者と同種の業務に同一の地域で従事する一般労働者の平均賃金と同等以上になるように決定するとともに、昇給規程等の賃金改善の仕組みを設ける必要があります。

また、「賃金以外の待遇」(一部の待遇を除きます。)については、派遣元の通常の労働者(派遣労働者を除きます。)と比較して「不合理な待遇差」が生じないようにすることが求められます。

なお、「労使協定方式」によっても、派遣先が行う一部の教育訓練及び福利厚生施設(給食施設、休憩室及び更衣室)の利用については、派遣先の通常の労働者との均等・均衡が求められます。

それぞれの方式の概要は図表 1-5 の通りです。この内容については、こちらでも詳しく
説明していますので、参照してください。

C.基本となる不合理な待遇差の解消の考え方

「派遣先均等・均衡方式」、「労使協定方式」のいずれの方式をとるかによって、派遣労働者と通常の労働者との間の不合理な待遇差を解消する際の待遇決定のプロセスや比較する労働者は異なりますが、いずれの場合にも、図表 1-6 に示してある「均等待遇」と「均衡待遇」の考え方を理解しておかねばなりません。

それらは次のように定義できます。

○均等待遇:待遇決定に当たって、派遣労働者が派遣先の通常の労働者と同じに取り扱われること、つまり、派遣労働者の待遇が派遣先の通常の労働者と同じ方法で決定されることを指します。ただし、同じ取扱いのもとで、能力、経験等の違いにより差がつくのは構いません。

○均衡待遇:派遣労働者の待遇について、派遣先の通常の労働者の待遇との間に不合理な待遇差がな
いこと、つまり、①職務の内容、②職務の内容・配置の変更の範囲、③その他の事情、の違いに応じた範囲内で待遇が決定されることを指します。

 

【図表 1-6「均等待遇」及び「均衡待遇」の根拠規定】

均等待遇

派遣労働者と派遣先の通常の労働者との間で、①職務の内容、②職務の内容・配置の変更の範囲が同じ場合は、派遣労働者であることを理由とした差別的取扱いを禁止すること
※均等待遇では、待遇について同じ取扱いをする必要があります。同じ取扱いのもとで、能力、経験等の違いにより差がつくのは構いません。

均衡待遇

派遣労働者と派遣先の通常の労働者との間で、①職務の内容、②職務の内容・配置
の変更の範囲、③その他の事情(※)を考慮して不合理な待遇差を禁止すること
※「職務の内容」、「職務の内容・配置の変更の範囲」以外の事情で、個々の状況に
合わせて、その都度検討します。成果、能力、経験、合理的な労使の慣行、労
使交渉の経緯は、「その他の事情」として想定されています。

派遣元が均等待遇・均衡待遇のどちらを求められるかは、派遣労働者と派遣先の通常の労働者との間で、①職務の内容、②職務の内容・配置の変更の範囲、が同じか否かにより決まります。

①と②が同じ場合には、派遣労働者に対する差別的取扱いが禁止され、「均等待遇」であることが求められます。

それ以外の①あるいは②が異なる場合は「均衡待遇」であることが求められ、派遣労働者の待遇は、①と②の違いに加えて「③その他の事情」の違いを考慮して、派遣先の通常の労働者との間に不合理な待遇差のないように決定することが求められます。

このように、「均等待遇」と「均衡待遇」を実現することが、法が求める不合理な待遇差の解消の具体的な内容です。

D.派遣労働者に対する待遇に関する説明

労働者派遣法では、派遣労働者に対する待遇に関する説明義務が強化されています。

派遣元は、労働者を派遣労働者として雇い入れようとする時(雇入れ時)、また、労働者派遣をしようとする時(派遣時)の2つの時点で、派遣労働者に対して、労働条件に関する一定の事項を明示するとともに、不合理な待遇差を解消するために講ずることとしている措置の内容を説明することが求められます。

明示・説明すべき事項として新たに規定された事項は、図表 1-7 の通りです。

 

さらに、派遣労働者の求めに応じた比較対象労働者との間の待遇の相違の内容及び理由等の説明が義務となっています。

 

派遣労働者への待遇に関する説明については、こちらでも詳しく説明していますので、そちらを参照してください。

 3.「短時間・有期雇用労働者及び派遣労働者に対する不合理な待遇の禁止等に関する指針(ガイドライン)」(派遣労働者部分)の解説

A.ガイドラインの考え方と狙い

厚生労働省は、パートタイム・有期雇用労働法及び労働者派遣法に基づいて「短時間・有期雇用労働者及び派遣労働者に対する不合理な待遇の禁止等に関する指針」(以下、「ガイドライン」といいます。)を策定しています。

ガイドラインは、「我が国が目指す同一労働同一賃金」について、「派遣先に雇用される通常の労働者と派遣労働者との間の不合理と認められる待遇の相違及び差別的取扱いの解消(協定対象派遣労働者にあっては、当該協定対象派遣労働者の待遇が労働者派遣法第30条の4第1項の協定により決定された事項に沿った運用がなされていること)を目指すものである」とした上で、不合理な待遇差の解消に向けた原則となる考え方や具体例について、基本給、賞与、手当等の個別の待遇ごとに「問題となる例/問題とならない例」を用いながら解説しています(図表 1-9)。

また、以下のことなどが基本的な考え方として述べられています。

①ガイドラインに記載のない退職手当等の待遇についても不合理な待遇差の解消等が求められる
②労使による個別具体の事情に応じた話し合いが望まれる
③通常の労働者と派遣労働者との間で職務の内容等を分離した場合であっても通常の労働者との間の不合理な待遇差の解消が求められる
④労使で合意することなく、通常の労働者の待遇を引き下げることで、派遣先の通常の労働者との均等・均衡を図ることは望ましい対応といえない

以下では、ガイドラインで取り上げられている派遣労働者の待遇に関する原則となる考え方について、簡単に紹介しています。

その詳細はガイドラインを参照してください。
⇒ 同一労働同一賃金ガイドライン https://www.mhlw.go.jp/content/11650000/000469932.pdf

B.「派遣先均等・均衡方式」の対象となる待遇について

①基本給

基本給について、派遣先の通常の労働者と派遣労働者の基本給の決定要素(能力、経験、業績、成果、勤続年数等)が同じである場合には、その決定要素(例えば能力)に応じた基本給部分(例えば、能力で決まる職能給部分)については、派遣先の通常の労働者と派遣労働者でその決定要素 ( 例えば能力 )が同じ場合には同一の、一定の違いがある場合にはその違いに応じて基本給を支給しなければなりません。

昇給について、例えば、派遣先の通常の労働者、派遣労働者ともに勤続による能力の向上によって決定される場合、派遣先の通常の労働者と同様に能力が向上した派遣労働者には、この能力の向上に応じた部分については派遣先の通常の労働者と同一の昇給を、能力の向上に違いがある場合にはその違いに応じた昇給を行わなければなりません。

②賞与

賞与について、派遣先の通常の労働者と派遣労働者ともに企業の業績等への労働者の貢献に応じて支給される場合には、貢献に応じて支給される部分については、派遣先の通常の労働者と同一の貢献である派遣労働者には派遣先の通常の労働者と同一の、貢献に一定の違いがある場合にはその違いに応じた支給をしなければなりません。

③手当

不合理な待遇差の解消は、派遣先と派遣元が支給している全ての手当が対象となります。不合理な待遇差であるかは手当の性質・目的に照らして適切な考慮要素に基づいて判断されます。
なお、手当は、企業により名称や内容等が様々ですが、ガイドラインでは代表的な手当として以下が挙げられています(図表 1-10)。

【図表 1-10 ガイドラインで示されている手当(「派遣先均等・均衡方式」)】
 役職手当(役職の内容に対して支給)
 特殊作業手当(業務の危険度又は作業環境に応じて支給)
 特殊勤務手当(交代制勤務等の勤務形態に応じて支給)
 精皆勤手当
 時間外労働に対して支給される手当
 深夜労働又は休日労働に対して支給される手当
 通勤手当及び出張旅費
 食事手当(労働時間の途中に食事のための休憩時間がある労働者に対する食費の負担補助として支給)
 単身赴任手当
 地域手当(特定の地域で働く労働者に対する補償として支給)

④福利厚生

手当と同様に、不合理な待遇差の解消は、派遣先と派遣元が付与している全ての福利厚生が対象となります。

ガイドラインでは、代表的な福利厚生として以下が挙げられています(図表 1-11)。

【図表 1-11 ガイドラインで示されている福利厚生(「派遣先均等・均衡方式」)】

 福利厚生施設(給食施設、休憩室、更衣室)
 転勤者用社宅
 慶弔休暇並びに健康診断に伴う勤務免除及び有給の保障
 病気休職
 法定外の有給の休暇その他の法定外の休暇(慶弔休暇を除く)

⑤教育訓練と安全管理

①~④でみた待遇のほか、教育訓練、安全管理に関する措置及び給付も不合理な待遇差の解消の対象となります。

教育訓練については、派遣先で、派遣先の通常の労働者を対象に現在の業務の遂行に必要な能力の付与のために実施する場合、派遣元からの求めに応じ、派遣先の通常の労働者と業務の内容が同一である派遣労働者に対しても、派遣先の通常の労働者と同一の教育訓練を実施するなどしなければなりません。

また、派遣元は、業務の内容に一定の違いがある場合、派遣先の通常の労働者との間で職務の内容、職務の内容・配置の変更の範囲、その他の事情の違いに応じた教育訓練を実施しなければなりません。さらに、派遣労働者が段階的かつ体系的に派遣就業に必要な技能及び知識を習得することができるよう、教育訓練を実施しなければなりません。

安全管理については、派遣先及び派遣元がそれぞれに派遣労働者の安全と健康を確保するための労働安全衛生法上の責任を負います。
さらに、派遣先に雇用される通常の労働者と派遣労働者が同一の業務環境に置かれている場合、同一の措置及び給付をしなければなりません。

⑥その他の留意すべきポイント

(派遣先の通常の労働者と派遣労働者との間に待遇の決定基準・ルールの違いがある場合)

以上の不合理な待遇差の解消に向けた具体例に加えた重要な点として、ガイドラインでは、派遣先の通常の労働者と派遣労働者の待遇(基本給のみならず、賞与、各種手当等を含みます。)の決定基準・ルールに違いがある場合について触れています。例えば、派遣先の通常の労働者には能力に応じて基本給を支給する一方、派遣労働者には職務に応じて基本給を支給する場合が考えられます。

このような決定基準・ルールの違いは、単に「派遣社員だから」とか、「将来の役割期待が異なるため」といった主観的・抽象的な説明では足りません。
その違いは、派遣先の通常の労働者と派遣労働者の職務の内容、職務の内容・配置の変更の範囲、その他の事情の3考慮要素のうち、当該待遇の性質・目的に照らして適切と考えられる要素の客観的・具体的な実態に照らして、不合理と認められるものであってはなりません。

C.「労使協定方式」の対象となる派遣労働者の待遇について

①賃金

賃金については、同種の業務に従事する一般労働者の平均的な賃金額として厚生労働省令で定めるものと同等以上の額としなければなりません。
さらに、派遣労働者の職務の内容、職務の成果、意欲、能力又は経験その他就業の実態に向上があった場合、派遣元は、それを公正に評価し、賃金を改善しなければなりません。

②福利厚生

ガイドラインでは、代表的な福利厚生として以下が挙げられています(図表 1-12)。
福利厚生施設(給食施設、休憩室、更衣室)については派遣先の通常の労働者と派遣労働者との間で、その他の福利厚生については派遣元の通常の労働者と派遣労働者との間で不合理な待遇差がないかを確認し、改善に向けた取組を行う必要があります。

【図表 1-12 ガイドラインで示されている福利厚生(「労使協定方式」)】
 福利厚生施設(給食施設、休憩室、更衣室)
 転勤者用社宅
 慶弔休暇並びに健康診断に伴う勤務免除及び有給の保障
 病気休職
 法定外の有給の休暇その他の法定外の休暇(慶弔休暇を除く)

③教育訓練と安全管理

教育訓練については、派遣先で、派遣先の通常の労働者を対象に現在の業務の遂行に必要な能力の付与のために実施する場合、派遣元からの求めに応じ、派遣先の通常の労働者と業務の内容が同一である派遣労働者に対しても、派遣先の通常の労働者と同一の教育訓練を実施するなどしなければなりません。

また、派遣元は、業務の内容に一定の違いがある場合には、派遣元の通常の労働者との間で職務の内容、職務の内容・配置の変更の範囲、その他の事情の違いに応じた教育訓練を実施しなければなりません。

さらに、派遣労働者が段階的かつ体系的に派遣就業に必要な技能及び知識を習得することができるよう、教育訓練を実施しなければなりません。

安全管理については、派遣先及び派遣元がそれぞれに派遣労働者の安全と健康を確保するための労働安全衛生法上の責任を負います。

また、派遣元の通常の労働者と派遣労働者が同一の業務環境に置かれている場合には、同一の措置及び給付をしなければなりません。なお、職務の内容に密接に関連するものについては、派遣先の通常の労働者との間で不合理な差が生じないようにすることが望ましい対応といえます。

4.短時間労働者又は有期雇用労働者である派遣労働者の待遇について

ここまで、パートタイム・有期雇用労働法及び労働者派遣法のそれぞれが求める不合理な待遇差の解消について紹介してきました。

では、パートタイム・有期雇用労働法と労働者派遣法の両者が適用となる、短時間又は有期雇用である派遣労働者については、どちらの考え方を基本にすればいいのでしょうか。

短時間又は有期雇用である派遣労働者の待遇を考える際の比較対象労働者は、図表 1-13(「派遣先均等・均衡方式」の場合)、図表 1-14(「労使協定方式の場合」)の通りです。それぞれの方式における基本的な考え方については、以下の解説を参照してください。

【「派遣先均等・均衡方式」を選択する場合】

ⅰ.労働者派遣法によると、「① 職務に密接に関連する待遇」については、派遣先の通常の労働者との均等・均衡を図る必要があります。
この場合、パートタイム・有期雇用労働法では、「特段の事情」がない限り、派遣元の通常の労働者と派遣労働者との間の待遇差が不合理か否かは実質的には問題とならないと考えられます。
※この場合の「特段の事情」とは、例えば、派遣先の通常の労働者との均等・均衡とは異なる観点から、無期雇用フルタイムの派遣労働者だけに別途手当を支払っているような場合が考えられます。

ⅱ.労働者派遣法によると、「② ①以外の待遇」については、派遣先の通常の労働者との均等・均衡を図る必要があります。
この場合、パートタイム・有期雇用労働法では、「特段の事情」がない限り、派遣元の通常の労働者と派遣労働者との間でも、不合理な待遇差がないようにする必要があります。

そのため、派遣先と派遣元で待遇の適用状況が異なる場合には、双方が適用している全ての待遇について、派遣労働者との間で不合理な待遇差がないかを確認する必要があります。
※この場合の「特段の事情」とは、例えば、異なる派遣先に派遣され、待遇を比較すべき派遣先の通常の労働者が異なることにより待遇差がある場合が考えられます。
※短時間・有期雇用労働者と通常の労働者との間の待遇差を点検・検討するに当たっては「不合理な待遇差解消のための点検・検討マニュアル(業界共通編)」を参照してください。

【「労使協定方式」を選択する場合】

(賃金について)

ⅰ.労働者派遣法によると、「① 職務に密接に関連する待遇」については、同種の業務に従事する一般労働者の平均的な賃金額と同等以上等の要件を満たす必要があります。

この場合、パートタイム・有期雇用労働法では、「特段の事情」がない限り、派遣元の通常の労働者と派遣労働者との間の待遇差が不合理か否かは実質的には問題とならないと考えられます。
※この場合の「特段の事情」とは、例えば、同種の業務に従事する一般労働者の平均的な賃金額との比較とは異なる観点から、無期雇用フルタイムの派遣労働者だけに別途手当を支払っているような場合が考えられます。

ⅱ.労働者派遣法によると、「② ①以外の待遇」については、同種の業務に従事する一般労働者の平均的な賃金額と同等以上等の要件を満たす必要があります。
この場合、パートタイム・有期雇用労働法では、「特段の事情」がない限り、派遣元の通常の労働者と派遣労働者との間でも、不合理な待遇差がないようにする必要があります。
※この場合の「特段の事情」とは、例えば、「労使協定方式」の対象となる有期雇用の派遣労働者と「派遣先均等・均衡方式」の対象となる無期雇用の派遣労働者がいる場合に、協定内容に基づく待遇内容と待遇を比較すべき派遣先の通常の労働者との均等・均衡を考慮して設定される待遇内容とに差がある場合が考えられます。

(賃金以外の待遇について)

ⅰ.労働者派遣法でも、パートタイム・有期雇用労働法でも、派遣元の通常の労働者と派遣労働者との間で、不合理な待遇差がないようにする必要があります。
ⅱ.ただし、労働者派遣法に基づくと、賃金以外の待遇のうち、派遣先が実施/付与する待遇については、派遣先の通常の労働者と派遣労働者との間で不合理な待遇差がないようにする必要があります。

なお、以上の取扱いについては、最終的には司法の場において判断されることとなります。待遇を職務に密接に関連するものとそれ以外に分けて例示していますが、職務に密接に関連する待遇に当たるか否かは、個々の待遇の性質・目的によって判断されることとなります。

5.裁判外紛争解決手続き(行政ADR)

行政ADRは、労働者と事業主との間の紛争を裁判以外の方法で解決する手続きです。

都道府県労働局では、労働者と事業主の間でトラブルが生じた場合、当事者の一方又は双方の申出があれば、トラブルの早期解決のための援助を行っています。

労働者派遣法の施行後は、派遣労働者の「均等・均衡待遇」、「労使協定に基づく待遇」、「待遇差の内容・理由に関する説明」等についても行政ADRの対象となります。トラブル解決のための援助には、次の2つの方法があります。

①都道府県労働局長による紛争解決の援助

②派遣労働者待遇調停会議による調停

この2つの制度は、都道府県労働局長又は調停委員が公平な第三者として紛争の当事者の間に立ち、両当事者の納得が得られるよう解決策を提示し、紛争の解決を図ることを目的とした行政サービスです。

それぞれの制度の特徴を十分に理解した上で、ご希望の解決方法を選択してください。なお、派遣労働者待遇調停会議の調停案について、当事者双方に成立した合意は、民法上の和解契約となります。

具体的な手続きの流れは以下の通りです。

 

執筆/資格の大原 社会保険労務士講座

金沢 博憲金沢 博憲

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