【通達】女性の職業生活における活躍の推進に関する法律等の一部を改正する法律について(雇均発0605第1号令和元年6月5日)

女性の職業生活における活躍の推進に関する法律等の一部を改正する法律(令和元年法律第 24 号。以下「改正法」という。)については、本年3月8日に第 198 回国会に法律案が提出され、審議が重ねられてきたところであるが、同国会において、本年5月 29 日に可決・成立し、本日公布されたところである。

改正法のうち、労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律(昭和 41 年法律第 132 号。以下「労働施策総合推進法」という。)第4条の改正に関する規定は公布日から、女性の職業生活における活躍の推進に関する法律(平成
27 年法律第 64 号。以下「女性活躍推進法」という。)の一般事業主行動計画の策定等の義務及び女性の職業生活における活躍に関する情報公表の義務の対象拡大に関する規定は公布の日から起算して3年を超えない範囲内において政令で定める日から、その他の規定については公布の日から起算して1年を超えない範囲内において政令で定める日から、それぞれ施行される。

改正法は、女性をはじめとする多様な労働者が活躍できる就業環境を整備するため、女性の職業生活における活躍の推進に関する一般事業主行動計画の策定義務の対象拡大、情報公表の強化、パワーハラスメント防止のための事業主の雇用管理上の措置義務等の新設、セクシュアルハラスメント等の防止対策の強化等の措置を講ずるものであり、その主たる内容は下記のとおりである。

なお、改正法の施行のために必要な関係政省令等については、今後、労働政策審議会に諮り、その答申を得て、制定することとしている。貴職におかれては、改正法の円滑な施行に万全を期すため、以上のことを十分御理解の上、所要の準備に努められたい。

第1 女性活躍推進法の一部改正

概要

1 一般事業主行動計画の策定義務の対象拡大

一般事業主行動計画の策定・届出義務及び自社の女性活躍に関する情報公表の義務の対象が、常時雇用する労働者が301人以上から101人以上の事業主に拡大されます(施行:公布後3年以内の政令で定める日)。

2 女性活躍に関する情報公表の強化

常時雇用する労働者が301人以上の事業主は、情報公表項目について、
 (1)職業生活に関する機会の提供に関する実績
 (2)職業生活と家庭生活との両立に資する雇用環境の整備に関する実績
の各区分から1項目以上公表する必要があります(施行:公布後1年以内の政令で定める日)。

3 特例認定制度(プラチナえるぼし(仮称))の創設

女性の活躍推進に関する状況等が優良な事業主の方への認定(えるぼし認定)よりも水準の高い「プラチナえるぼし(仮称)」認定を創設します(施行:公布後1年以内の政令で定める日)。

1 一般事業主行動計画の策定等の義務の対象拡大(第8条第1項及び第7項関係)

一般事業主(国及び地方公共団体以外の事業主をいう。以下同じ。)のうち、一般事業主行動計画(一般事業主が実施する女性の職業生活における活躍の推進に関する取組に関する計画をいう。以下同じ。)の策定及び届出(以下「策定等」という。)が義務付けられる事業主の範囲について、常時雇用する労働者の数が300 人を超えるものから100 人を超えるものへと拡大することとしたこと。

2 基準に適合する認定一般事業主の認定等(第 12 条から第 15 条まで関係)

(1) 厚生労働大臣は、認定一般事業主からの申請に基づき、当該事業主について、女性の職業生活における活躍の推進に関する取組に関し、当該事業主の策定した一般事業主行動計画に基づく取組を実施し、当該一般事業主行動計画に定められた目標を達成したこと、男女雇用機会均等推進者(第3の5の(1)の男女雇用機会均等推進者をいう。)及び職業家庭両立推進者を選任していること、当該女性の職業生活における活躍の推進に関する取組の実施の状況が特に優良なものであることその他の厚生労働省令で定める基準に適合するものである旨の認定を行うことができることとしたこと。

(2) (1)の認定を受けた一般事業主(以下「特例認定一般事業主」という。)については、一般事業主行動計画の策定等に係る規定を適用しないこととしたこと。

(3) 特例認定一般事業主は、厚生労働省令で定めるところにより、毎年少なくとも1回、女性の職業生活における活躍の推進に関する取組の実施の状況を公表しなければならないこととしたこと。

(4) 特例認定一般事業主は、商品等に厚生労働大臣の定める表示を付することができることとし、何人もこの場合を除くほか、商品等に当該表示又はこれと紛らわしい表示を付してはならないこととしたこと。

(5) 厚生労働大臣は、特例認定一般事業主が(1)の基準に適合しなくなったと認めるとき、(3)の公表をせず、又は虚偽の公表をしたとき等に該当するときは、(1)の認定を取り消すことができることとしたこと。

3 女性の職業選択に資する情報の公表(第 20 条及び第 21 条関係)

(1) 一般事業主(常時雇用する労働者の数が 300 人を超えるものに限る。)は、厚生労働省令で定めるところにより、職業生活を営み、又は営もうとする女性の職業選択に資するよう、その事業における女性の職業生活における活躍に関する次に掲げる情報を定期的に公表しなければならないこととしたこと。

ア その雇用し、又は雇用しようとする女性労働者に対する職業生活に関する機会の提供に関する実績

イ その雇用する労働者の職業生活と家庭生活との両立に資する雇用環境の整備に関する実績

(2) 常時雇用する労働者の数が 100 人を超える一般事業主((1)の一般事業主を除く。)は、厚生労働省令で定めるところにより、職業生活を営み、又は営もうとする女性の職業選択に資するよう、その事業における女性の職業生活における活躍に関する情報を定期的に公表しなければならないこととしたこと。

(3) 特定事業主(国及び地方公共団体の機関、それらの長又はそれらの職員で政令で定めるものをいう。)は、内閣府令で定めるところにより、職業生活を営み、又は営もうとする女性の職業選択に資するよう、その事務及び事業における女性の職業生活における活躍に関する次に掲げる情報を定期的に公表しなければならないこととしたこと。

ア その任用し、又は任用しようとする女性に対する職業生活に関する機会の提供に関する実績

イ その任用する職員の職業生活と家庭生活との両立に資する雇用環境の整備に関する実績

4 報告の徴収並びに助言、指導及び勧告の対象の拡大(第 30 条関係)

厚生労働大臣が、この法律の施行に関し必要があると認めるときに、報告を求め、又は助言、指導若しくは勧告をすることができる者として、認定一般事業主又は特例認定一般事業主である一般事業主行動計画の策定等が努力義務となっている一般事業主を加えることとしたこと。

5 公表(第 31 条関係)

厚生労働大臣は、女性の職業生活における活躍に関する情報の公表をせず、若しくは虚偽の公表をした当該公表が義務となっている一般事業主又は虚偽の公表をした認定一般事業主若しくは特例認定一般事業主である当該公表が努力義務となっている一般事業主に対し、4の勧告をした場合において、当該勧告を受けた者がこれに従わなかったときは、その旨を公表することができることとしたこと。

6 罰則(第 37 条関係)

2の(4)に違反した者に対する罰則を整備することとしたこと。

7 その他

その他所要の規定の整備を行うこと。

第2 労働施策総合推進法の一部改正

1 国の施策(第4条第1項関係)

国の施策として「職場における労働者の就業環境を害する言動に起因する問題の解決を促進するために必要な施策を充実すること」を規定すること。

2 職場における優越的な関係を背景とした言動に起因する問題に関して事業主が講ずべき措置等(第 30 条の2関係)

(1) 事業主は、職場において行われる優越的な関係を背景とした言動であって、業務上必要かつ相当な範囲を超えたものによりその雇用する労働者の就業環境が害されることのないよう、当該労働者からの相談に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備その他の雇用管理上必要な措置を講じなければならないこととしたこと。

(2) 事業主は、労働者が(1)の相談を行ったこと又は事業主による当該相談への対応に協力した際に事実を述べたことを理由として、当該労働者に対して解雇その他不利益な取扱いをしてはならないこととしたこと。

(3) 厚生労働大臣は、(1)及び(2)の事業主が講ずべき措置等に関して、その適切かつ有効な実施を図るために必要な指針を定めることとしたこと。

3 職場における優越的な関係を背景とした言動に起因する問題に関する国、事業主及び労働者の責務(第 30 条の3関係)

(1) 国は、労働者の就業環境を害する2の(1)の言動を行ってはならないことその他当該言動に起因する問題に対する事業主その他国民一般の関心と理解を深めるため、広報活動、啓発活動その他の措置を講ずるように努めなければならないこととしたこと。

(2) 事業主は、当該問題に対するその雇用する労働者の関心と理解を深めるとともに、当該労働者が他の労働者に対する言動に必要な注意を払うよう、研修の実施その他の必要な配慮をするほか、国の講ずる(1)の措置に協力するように努めなければならないこととしたこと。

(3) 事業主(その者が法人である場合にあっては、その役員)は、自らも、当該問題に対する関心と理解を深め、労働者に対する言動に必要な注意を払うように努めなければならないこととしたこと。

(4) 労働者は、当該問題に対する関心と理解を深め、他の労働者に対する言動に必要な注意を払うとともに、事業主の講ずる2の(1)の措置に協力するように努めなければならないこととしたこと。

4 紛争の解決(第 30 条の4から第 30 条の8まで関係)

(1) 紛争の解決の促進に関する特例

2の(1)及び(2)に定める事項についての労働者と事業主との間の紛争については、個別労働関係紛争の解決の促進に関する法律第4条、第5条及び第12 条から第 19 条までの規定は適用せず、(2)及び(3)によるものとしたこと。

(2) 紛争の解決の援助

ア 都道府県労働局長は、(1)の紛争に関し、当該紛争の当事者の双方又は一方からその解決につき援助を求められた場合には、当該紛争の当事者に対し、必要な助言、指導又は勧告をすることができることとしたこと。

イ 2の(2)は、労働者がアの援助を求めた場合について準用することとしたこと。

(3) 調停

ア 都道府県労働局長は、(1)の紛争について、当該紛争の当事者の双方又は一方から調停の申請があった場合において当該紛争の解決のために必要があると認めるときは、紛争調整委員会に調停を行わせるものとしたこととすること。

イ 2の(2)は、労働者がアの申請をした場合について準用することとしたこと。

ウ アの調停の手続については、雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保等に関する法律の規定を準用することとするとともに、その他調停の手続に関し必要な事項は厚生労働省令で定めることとしたこと。

5 公表(第 33 条第2項関係)

厚生労働大臣は、2の(1)及び(2)(4の(2)のイ及び(3)のイにおいて準用する場合を含む。以下同じ。)に違反している事業主に対し、勧告をした場合において、その勧告を受けた者がこれに従わなかったときは、その旨を公表することができることとしたこと。

6 報告の請求(第 36 条第1項関係)

厚生労働大臣は、事業主から2の(1)及び(2)の施行に関し必要な事項について報告を求めることができることとしたこと。

7 罰則(第 41 条関係)

6の報告をせず、又は虚偽の報告をした者は、20 万円以下の過料に処することとしたこと。

8 その他

その他所要の規定の整備を行うこと。

第3 雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保等に関する法律の一部改正

1 職場における性的な言動に起因する問題に関する相談を行ったこと等を理由とする不利益な取扱いの禁止等(第 11 条関係)

(1) 事業主は、労働者が職場における性的な言動に起因する問題に関する相談を行ったこと又は事業主による当該相談への対応に協力した際に事実を述べたことを理由として、当該労働者に対して解雇その他不利益な取扱いをしてはならないこととしたこと。

(2) 事業主は、他の事業主から当該事業主の講ずる職場における性的な言動に起因する問題に関する雇用管理上の措置の実施に関し必要な協力を求められた場合には、これに応ずるように努めなければならないこととしたこと。

2 職場における性的な言動に起因する問題に関する国、事業主及び労働者の責務(第 11 条の2関係)

(1) 国は、職場において行われる性的な言動に対する対応により労働者に不利益を与える行為又は労働者の就業環境を害する当該言動を行ってはならないことその他当該言動に起因する問題に対する事業主その他国民一般の関心と理解を深めるため、広報活動、啓発活動その他の措置を講ずるように努めなければならないこととしたこと。

(2) 事業主は、当該問題に対するその雇用する労働者の関心と理解を深めるとともに、当該労働者が他の労働者に対する言動に必要な注意を払うよう、研修の実施その他の必要な配慮をするほか、国の講ずる(1)の措置に協力するように努めなければならないこととしたこと。

(3) 事業主(その者が法人である場合にあっては、その役員)は、自らも、当該問題に対する関心と理解を深め、労働者に対する言動に必要な注意を払うように努めなければならないこととしたこと。

(4) 労働者は、当該問題に対する関心と理解を深め、他の労働者に対する言動に必要な注意を払うとともに、事業主の講ずる職場における性的な言動に起因する問題に関する雇用管理上の措置に協力するように努めなければならないこととしたこと。

3 職場における妊娠、出産等に関する言動に起因する問題に関する相談を行ったこと等を理由とする不利益な取扱いの禁止(第 11 条の3関係)

1の(1)は、労働者が職場における妊娠、出産等に関する言動に起因する問題に関する相談を行い、又は事業主による当該相談への対応に協力した際に事実を述べた場合について準用することとしたこと。

4 職場における妊娠、出産等に関する言動に起因する問題に関する国、事業主及び労働者の責務(第 11 条の4関係)

職場における妊娠、出産等に関する言動に起因する問題に関し、2と同様の規定を設けることとしたこと。

5 男女雇用機会均等推進者(第 13 条の2及び附則第2条関係)

(1) 事業主は、厚生労働省令で定めるところにより、職場における男女の均等な機会及び待遇の確保が図られるようにするために講ずべき措置の適切かつ有効な実施を図るための業務を担当する者(以下「男女雇用機会均等推進者」という。)を選任するように努めなければならないこととしたこと。

(2) 平成 38 年3月 31 日までの間は、男女雇用機会均等推進者の担当する業務に女性の職業生活における活躍の推進に関する法律の一般事業主行動計画に基づく取組等の推進を含めることとしたこと。

6 調停(第 20 条関係)

紛争調整委員会が、関係当事者の同意の有無にかかわらず、調停のため必要があると認めるときに、出頭を求め、意見を聴くことができる者として関係当事者と同一の事業場に雇用される労働者その他の参考人を加えることとしたこと。

7 その他

その他所要の規定の整備を行うこと。

第4 労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律の一部改正

1 労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律の適用に関する特例(第 47 条の4関係)

労働者派遣の役務の提供を受ける者がその指揮命令の下に労働させる派遣労働者の当該労働者派遣に係る就業に関しては、当該労働者派遣の役務の提供を受ける者もまた、当該派遣労働者を雇用する事業主とみなして、第2の2の(1)及び3の(2)を適用すること。

2 その他

その他所要の規定の整備を行うこと。

第5 育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律の一部改正

1 職場における育児休業等に関する言動に起因する問題に関する相談を行ったこと等を理由とする不利益な取扱いの禁止(第 25 条関係)

事業主は、労働者が職場における育児休業等に関する言動に起因する問題に関する相談を行ったこと又は事業主による当該相談への対応に協力した際に事実を述べたことを理由として、当該労働者に対して解雇その他不利益な取扱いをしてはならないこととしたこと。

2 職場における育児休業等に関する言動に起因する問題に関する国、事業主及び労働者の責務(第 25 条の2関係)

職場における育児休業等に関する言動に起因する問題に関し、第3の2と同様の規定を設けることとしたこと。

3 その他

その他所要の規定の整備を行うこと。

第6 附則

1 施行期日(附則第1条関係)

この法律は、公布の日から起算して1年を超えない範囲内において政令で定める日から施行するものとしたこと。

ただし、次に掲げる事項は、それぞれ次に定める日から施行することとしたこと。

(1) 第2の1 公布の日

(2) 第1の1及び3の(2) 公布の日から起算して3年を超えない範囲内において政令で定める日

2 経過措置等

(1) 中小事業主(国、地方公共団体及び行政執行法人以外の事業主であって、その資本金の額又は出資の総額が3億円(小売業又はサービス業を主たる事業とする事業主については 5000 万円、卸売業を主たる事業とする事業主については1億円)以下であるもの及びその常時使用する労働者の数が 300 人(小売業を主たる事業とする事業主については 50 人、卸売業又はサービス業を主たる事業とする事業主については 100 人)以下であるものをいう。)については、公布の日から起算して3年を超えない範囲内において政令で定める日ま
での間、第2の2の(1)は努力義務とするものとし、第2の4、5及び6の対象から第2の2の(1)を除くこととしたこと。(附則第3条関係)。

(2) (1)のほか、この法律の施行に伴い必要な経過措置を定めるとともに、関係法律について所要の規定の整備を行うこと。

3 検討規定(附則第7条関係)

政府は、この法律の施行後5年を経過した場合において、この法律による改正後の規定の施行の状況について検討を加え、必要があると認めるときは、その結果に基づいて所要の措置を講ずるものとすることとしたこと。

執筆/資格の大原 社会保険労務士講座

金沢 博憲金沢 博憲

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