2021年度(令和3年度)年金額は0.1%減額。マクロ経済スライドは発動せず。
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みなさん、こんにちは。

金沢博憲(社労士24)です。

2021年度(令和3年度)の年金額は、2020年度(令和2年度)に比べてマイナス0.1%減額改定となりました。
4年ぶりの減額改定です。

年金額の伸びを押さえるマクロ経済スライドは発動しませんでした

このページでは、法律上の年金額の決め方、マクロ経済スライドの仕組み、今年減額改定された理由、実際に受給できる具体的な年金額など、ポイントに絞ってご紹介します。

年金額の決め方

年金額改定の基本ルール

年金額は、法律に定められたルールに則り、賃金・物価変動に応じて毎年度改定されます。

国が支給する公的年金のうち、最も多くの方が受給するのが「老齢基礎年金」です。

老齢基礎年金の年金額の満額は、次の式で計算することが法律(国民年金法)に定められています。

780,900円×改定率

法定額の780,900円をベースに毎年度改定します。

まる子「なんで、780,900円×改定率なんて計算するの?わたしゃ、かけ算は苦手だよ」
友蔵「昔は法律に直接年金額を明記しておったのじゃが、改定の都度、法改正で国会通すのが面倒だったのじゃよ。だから、法律には、計算式だけ明記して、自動改定する仕組みにしたんじゃ」

この式にある「改定率」とは、世の中の賃金変動や物価変動に応じて年金額を自動的に連動させるための率です。

簡単にいえば、物価が上がれば年金額も上がる物価が下がれば年金額も下がる、ということです。

そして、賃金で改定するか、物価で改定するかは、基本的には「年齢」で変わります。

物価で改定するか、賃金で改定するか

年金額の改定ルールは、賃金>物価(賃金指数が物価指数を上回る)を想定して、

・新規裁定(68歳未満)→賃金スライド で改定
・既裁定(68歳以後)→物価スライドで改定

となっています。

新規裁定
(68歳未満)
既裁定
(68歳以後)
賃金スライド
で改定
物価スライド
で改定

しかし、現実にはそうなった試しがありません
デフレの世の中、物価>賃金(物価指数が賃金指数を上回る)という状況が続いているためです。

今後、短時間労働者の適用拡大が進み、実質賃金の押し下げ傾向が続くと考えると、これからも「物価>賃金」基調で推移する可能性が高いです。

令和3年度から変わった改定ルール

この、「物価>賃金」の場合の年金額の改定ルールが令和3年度から変わりました。

「物価>賃金」の場合、現役世代の負担増を抑えるため、賃金水準の変動に”完全”に連動させる形になります。

例えば、物価上昇>0>賃金下落の場合。

  • 令和2年度まで→改定なしで、年金額維持

受け手「物価上がったから生活が大変。年金増やしてほしい」
支え手「給料減ったから生活が大変。年金減らしてほしい」
政府「間をとって増減なしとします」

  • 令和3年度以降~→賃金下落分と連動させ、マイナス改定

 

マクロ経済スライドによる調整

そして、前述の年金額が賃金や物価の上昇により、プラス改定される場合、「マクロ経済スライド調整」という仕組みにより、その年金額の伸びが抑制されます。

「マクロ経済スライド」とは、公的年金被保険者の減少と平均余命の伸びに基づいて、スライド調整率が設定され、その分を賃金と物価の変動がプラスとなる場合に改定率から控除するものです。
この仕組みは、平成16年の年金制度改正において導入されたもので、マクロ経済スライドによる調整を計画的に実施することは、将来世代の年金の給付水準を確保することにつながります。

まる子「マクロ経済スライドって何?」
友蔵「まる子がおばあちゃんになったとき年金をもらえるように、ワシたちの年金をちょっと減らして、貯金しておく仕組みじゃ」
ま「まる子へのお小遣いってことかな?」
友「そうじゃよかわいいまる子へのお小遣いじゃ」
ま「それなら今欲しいねシシシ」
友「・・」

例えば、物価が1%伸びたので、年金額も1%プラスされるという場合、マクロ経済スライド調整による調整が▲0.3%としたら、年金額は0.7%プラスに抑えられる、ということです。

(例)本来の年金額が1.0%アップ!→マクロ経済スライドにより0.7%アップ

なぜ、マクロ経済スライド調整の仕組みが必要かといえば、少子高齢化が進んでいるためです。

年金をもらう側の高齢者の平均寿命が伸び、保険料を払う側の現役世代の数が減っていく中、ありのままの年金額を支払うと、支え手である現役世代の負担が増えすぎてしまう、そして現役世代が将来受給できる年金が過度に減ってしまうため、その伸びを抑制することにしているのです。

デフレ基調ではマクロ経済スライドは発動しない

マクロ経済スライドは、2005年に制度がつくられましたが、経済がデフレ基調の中でしばらく発動されることはありませんでしたが、リーマンショック後の景気回復や消費税の引上げなど背景に2015年度、2019年度、2020年度の年金額改定において発動しています。

こちらの動画で分かりやすく解説しています。

以上のことを踏まえ、2021年度の年金額がどうなったのかを見てみましょう。

2021年(令和3年度)の年金額は0.1%減額

総務省は、1月22日、「令和3年平均の全国消費者物価指数」(生鮮食品を含む総合指数)を公表しました。

合格者(男性)

翌年度の年金額は、毎年1月中旬に正式に公表されます。

これを踏まえ、2021年度の年金額は、法律の規定により、マイナス0.1%で改定されます。

月額でみると

  • 老齢基礎年金の満額月額→66円の減額
  • 厚生年金(夫婦2人分の老齢基礎年金を含む標準的な年金額)→228円の減額

老齢基礎年金の満額を2020年度に比較すると

2020年度 2021年度
(▲0.1%)
780,900円×改定率1.001
=781,700円
※月額 65,141円
780,900円×改定率1.000
=780,900円
※※月額 65,075円(▲66 円)

2020年度は賃金・物価上昇を受けて、改定率が1を上回り(1.001)、法定額を上回る年金額でしたが、2021年度はマイナス0.1%、改定率はぴったり「1」となりました。

このように改定率がマイナス0.1%改定されたわけですが、その改定の理由をみます。

改定の理由

改定率の改定の基準となるデータをみると

  • 物価変動率→0.0%
  • 名目手取り賃金変動率→▲0.1%

となっています。

賃金指数が物価指数を下回っています。

物価(±0.0%)>賃金(▲0.1%)

年金額の改定は、名目手取り賃金変動率(▲0.1%)がマイナスで、名目手取り賃金変動率(▲0.1%)が物価変動率(±0%)を下回る場合、年金を受給し始める際の年金額(新規裁定年金)、受給中の年金額(既裁定年金)ともに名目手取り賃金変動率(▲0.1%)を用いることが法律により定められています。

まる子「なんでお給料をもとにするの?物価の方が高いよね?」
友蔵「ワシの年金は、ヒロシの給料から払われているからじゃ。ヒロシの給料があんまり上がっていないのに、ワシの年金が増えすぎると、ヒロシのこづかいがへって、新しい釣具も買えんじゃろ」
まる子「お父さんの給料はあんま上がらないからね~」
ヒロシ「うん?オレの給料がなんだって?」

このため、2021年度(令和3年度)の年金額は、新規裁定年金・既裁定年金ともに、名目手取り賃金変動率(▲0.1%)によって改定されます。

この物価データや賃金データの見方について少し掘り下げましょう。

物価は±0%、名目手取り賃金は▲01.%

改定率の改定の基準となるデータをみると

・ 物価変動率(令和2年) ・・・ 0.0%

物価は±0%と伸びませんでした。

2020年の9月まではプラスで推移してきましたが、10月以降は消費税引上げ効果の一巡に加え、宿泊料金の割引で下落幅が拡大、さらに需要減少が重なってエネルギー価格や野菜価格も低下し、年平均では±0%にとどまりました。

・ 名目手取り賃金変動率 ・・・ ▲0.1%

「名目手取り賃金変動率」とは、2年度前から4年度前までの3年度平均の実質賃金変動率に前年の物価変動率と可処分所得割合変化率(0.0%)を乗じたものです。

 実質賃金変動率(▲0.1%)× 物価変動率(0.0%)× 可処分所得割合変化率(0.0%)
(平成29~令和元年度の平均)(令和2年の値)   (平成30年度の値)

実質賃金は、給与水準が低い短時間労働者への適用拡大が押し下げ要因となったものと思われ、▲0.1%です。

可処分所得割合変化率は、厚生年金保険保険料の引き上げが完了したのでゼロです。

マクロ経済スライドは発動せず繰越し

そして、賃金や物価による改定率がマイナスの場合には、マクロ経済スライドによる調整は行わないこととされているため、令和3年度の年金額改定においては、マクロ経済スライドによる調整は行われません。

結果、マクロ経済スライドの未調整分(▲0.1%)は翌年度以降に繰り越されます。

  • マクロ経済スライドによるスライド調整率→▲0.1%
 公的年金被保険者数の変動率(0.2%)× 平均余命の伸び率(▲0.3%)
 (平成29~令和元年度の平均)       (定率)

短時間労働者への適用拡大で、公的年金被保険者の数はプラス0.2%。

以上が、2021年度の年金額は次のとおりになります。

780,900円×改定率(1.000)
=780,900円
※マクロ経済スライド調整率(▲0.1%
)は繰越

わかりやすく説明した動画解説

わかりやすく説明した動画解説はこちらです

そして、年金額と同じく、名目賃金や物価変動に応じて改定される国民年金の保険料額と在職老齢年金の支給停止調整変更額などについても公表されました。

国民年金保険料(令和3年度)は16,610円

国民年金の保険料は、平成16年の制度改正により、毎年段階的に引き上げられてきましたが、平成29年度に上限(平成16年度価格水準で16,900円)に達し、引き上げが完了しました。

その上で、平成31年4月から、次世代育成支援のため、国民年金第1号被保険者(自営業の方など)に対して、産前産後期間の保険料免除制度が施行されることに伴い、令和元年度分より、平成16年度価格水準で、保険料が月額100円引き上がり17,000円となりました。

実際の保険料額は、平成16年度価格水準を維持するため、国民年金法第87条第3項の規定により、名目賃金の変動に応じて毎年度改定されます。

令和3年度の国民年金保険料は16,610円です。

17,000円×保険料改定率(0.977)
=16,610円

なお、国民年金保険料は、2年前納が可能なため、令和4年度の保険料額もすでに決まっています。

  令和3年度 令和4年度
法律に規定された保険料額 17,000円 17,000円
実際の保険料額 16,610円 16,590円

在職老齢年金について(令和3年度)

令和3年度の在職老齢年金の支給停止調整変更額などについては、令和2年度から変更ありません。

60歳台前半の在職老齢年金は、厚生年金保険法附則第11条に規定されており、令和3年度の場合でいうと、賃金(賞与込み月収。以下同じ)と年金の合計額が、支給停止調整開始額(28万円)を上回る場合には、賃金の増加2に対し年金額を1支給停止し、賃金が支給停止調整変更額(47万円)を上回る場合には、増加した分だけ年金を支給停止します。

60歳台後半と70歳以降の在職老齢年金については、厚生年金保険法第46条に規定されており、賃金と年金の合計額が、支給停止調整額(47万円)を上回る場合には、賃金の増加2に対し年金額を1支給停止します。

支給停止調整開始額(28万円)は新規裁定者の年金額の改定に応じて、支給停止調整(変更)額(47万円)については名目賃金の変動に応じて、それぞれ改定することが法律に規定されています。

 

令和2年度 令和3年度
60歳台前半の支給停止調整開始額 28万円 28万円
60歳台前半の支給停止調整変更額 47万円 47万円
60歳台後半と70歳以降の支給停止調整額 47万円 47万円

 

そもそも在職老齢年金とは何なのかという解説はこちらから

 

まとめ

・2021年度の年金額は0.1%減額

・物価>賃金のため、賃金変動率をベースに計算。

・マクロ経済スライドは発動せず、翌年度以後に繰越

・2021年度の国民年金保険料額は16,610円

・2021年度の在職老齢年金の支給停止調整変更額などは変更はなし

執筆/資格の大原 社会保険労務士講座

金沢 博憲金沢 博憲

時間の達人シリーズ社労士24」「経験者合格(旧上級)コース」を担当致しております。
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