皆さん、こんにちは。
2018年社会保険労務士試験の解答・解説です。
手早く論点確認をして頂けるように、問題・解答を併記しています。
問題文の「ここをみれば正誤判断ができる」という部分にマーカーを引いています。
正しい対応関係にはこの色のマーカー、誤っている対応関係にはこの色のマーカーをつけています。
正解率は、大原採点サービスをご利用の方の率です。
今回は雇用保険法・労働保険料徴収法です。
雇用保険法(徴収法を含む。)
〔問 1〕正解率70%台
就職促進給付に関する次のアからオの記述のうち、誤っているものの組合せは、後記AからEまでのうちどれか。
ア 基本手当の受給資格者が離職前の事業主に再び雇用されたときは、就業促進手当を受給することができない。
イ 基本手当の受給資格者が公共職業安定所の紹介した職業に就くためその住所を変更する場合、移転費の額を超える就職支度費が就職先の事業主から支給されるときは、当該受給資格者は移転費を受給することができない。
なお、移転費の額の方が多ければ、差額支給
ウ 再就職手当を受給した者が、当該再就職手当の支給に係る同一の事業主にその職業に就いた日から引き続いて6か月以上雇用された場合で、当該再就職手当に係る雇用保険法施行規則第83条の2にいうみなし賃金日額が同条にいう算定基礎賃金日額を下回るときは、就業促進定着手当を受給することができる。
転職先の賃金(みなし賃金日額)が転職前の賃金(算定基礎賃金日額)に比べ下がるときに、その差額を支給。
・転職先では現実には離職していないため「みなし」とつく。
・賃金日額は6ヶ月間の賃金で算定→ゆえに6ヶ月以上の雇用継続が要件
エ 事業を開始した基本手当の受給資格者は、当該事業が当該受給資格者の自立に資するもので他の要件を満たす場合であっても、再就職手当を受給することができない。
再就職手当→自営業の開始でも支給。他の給付にはない
オ 基本手当の受給資格者が職業訓練の実施等による特定求職者の就職の支援に関する法律第4条第2項に規定する認定職業訓練を受講する場合には、求職活動関係役務利用費を受給することができない。
認定職業訓練でもOK。ほか、教育訓練給付の対象になる民間の訓練も対象。
A (アとイ) B (アとウ) C (イとエ) D (ウとオ) E (エとオ)
〔問 2〕正解率90%台
被保険者に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。
A 労働日の全部又はその大部分について事業所への出勤を免除され、かつ、自己の住所又は居所において勤務することを常とする在宅勤務者は、事業所勤務労働者との同一性が確認できる場合、他の要件を満たす限り被保険者となりうる。
事業所勤務労働者との同一性を確認するため、資格取得届に証明書の添付が必要。請負や委任ではないことを証明。
B 一般被保険者たる労働者が長期欠勤している場合、雇用関係が存続する限り賃金の支払を受けていると否とを問わず被保険者となる。
結果、所定給付日数の決定要素となる算定基礎期間も、賃金支払いの有無は関係なく算入
C 株式会社の取締役であって、同時に会社の部長としての身分を有する者は、報酬支払等の面からみて労働者的性格の強い者であって、雇用関係があると認められる場合、他の要件を満たす限り被保険者となる。
なお、「代表」がつく取締役→被保険者になることはない!
D 特定非営利活動法人(NPO法人)の役員は、雇用関係が明らかな場合であっても被保険者となることはない。
雇用関係が明らかな場合→被保険者になることもある
E 身体上若しくは精神上の理由又は世帯の事情により就業能力の限られている者、雇用されることが困難な者等に対して、就労又は技能の習得のために必要な機会及び便宜を与えて、その自立を助長することを目的とする社会福祉施設である授産施設の職員は、他の要件を満たす限り被保険者となる。
・授産施設の作業員→被保険者にならない
・授産施設の職員→要件満たせば、被保険者になる
〔問 3〕正解率60%台
一般被保険者の賃金及び賃金日額に関する次の記述のうち、正しいものはどれか。
A 健康保険法第99条の規定に基づく傷病手当金が支給された場合において、その傷病手当金に付加して事業主から支給される給付額は、賃金と認められる。
この比較。
・【雇用】傷病手当金に付加した事業主から支給する給付額→賃金ではない
・【健保】労働協約等に基づき、報酬と傷病手当金を差額支給→報酬である
B 接客係等が客からもらうチップは、一度事業主の手を経て再分配されるものであれば賃金と認められる。
チップの扱い。労基と同様。
・客から直接→賃金ではない
・事業主が再分配→賃金である
C 月給者が1月分の給与を全額支払われて当該月の中途で退職する場合、退職日の翌日以後の分に相当する金額は賃金日額の算定の基礎に算入される。
・退職日の翌日以後分の賃金→賃金日額に算入されない
D 賃金が出来高払制によって定められている場合の賃金日額は、労働した日数と賃金額にかかわらず、被保険者期間として計算された最後の3か月間に支払われた賃金(臨時に支払われる賃金及び3か月を超える期間ごとに支払われる賃金を除く。)の総額を90で除して得た額となる。
色々間違っている肢。
・出来高(原則)→6ヶ月分賃金÷180
・出来高(最低保障)→(6ヶ月分賃金÷労働日数)×70%
上記の額のいずれか高い方。
E 支払義務の確定した賃金が所定の支払日を過ぎてもなお支払われない未払賃金のある月については、未払額を除いて賃金額を算定する。
・支払義務が確定した未払賃金→含めて算定する
〔問 4〕正解率10%台
雇用保険法第22条第2項に定める就職が困難な者に関する次の記述のうち、誤っているものはいくつあるか。
ア 雇用保険法施行規則によると、就職が困難な者には障害者の雇用の促進等に関する法律にいう身体障害者、知的障害者が含まれるが、精神障害者は含まれない。
・就職が困難な者→身体、知的、精神障害者
イ 算定基礎期間が1年未満の就職が困難な者に係る基本手当の所定給付日数は150日である。
ウ 売春防止法第26条第1項の規定により保護観察に付された者であって、その者の職業のあっせんに関し保護観察所長から公共職業安定所長に連絡のあったものは、就職が困難な者にあたる。
エ 就職が困難な者であるかどうかの確認は受給資格決定時になされ、受給資格決定後に就職が困難なものであると認められる状態が生じた者は、就職が困難な者には含まれない。
受給資格決定時の状態で判定。
オ 身体障害者の確認は、求職登録票又は身体障害者手帳のほか、医師の証明書によって行うことができる。
A 一つ
B 二つ
C 三つ
D 四つ
E 五つ
〔問 5〕正解率60%台
次の記述のうち、特定受給資格者に該当する者として誤っているものはどれか。
A 出産後に事業主の法令違反により就業させられたことを理由として離職した者。
産後休業は強制休業→にもかかわらず就業させられた。
B 事業主が労働者の職種転換等に際して、当該労働者の職業生活の継続のために必要な配慮を行っていないことを理由として離職した者。
C 離職の日の属する月の前6月のうちいずれかの月において1月当たり80時間を超える時間外労働をさせられたことを理由として離職した者。
典型的なたすき掛けで×問題。
①連続3ヶ月→45時間超
②連続2ヶ月→80時間超
③いずれかの月→100時間超
②と③の対応関係をずらして×。
なお、「時間外労働上限規制」の改正に伴い、この辺も改正されます。
D 事業所において、当該事業主に雇用される被保険者(短期雇用特例被保険者及び日雇い労働被保険者を除く。)の数を3で除して得た数を超える被保険者が離職したため離職した者。
大量離職の基準→3分の1超
E 期間の定めのある労働契約の更新により3年以上引き続き雇用されるに至った場合において、当該労働契約が更新されないこととなったことを理由として離職した者。
有期雇用者の取扱いの見分け。
〔問 6〕正解率70%台
介護休業給付金に関する次の記述のうち、正しいものはどれか。なお、本問の被保険者には、短期雇用特例被保険者及び日雇労働被保険者を含めないものとする。
A 被保険者が介護休業給付金の支給を受けたことがある場合、同一の対象家族について当該被保険者が3回以上の介護休業をした場合における3回目以後の介護休業については、介護休業給付金を支給しない。
・3回目までは支給される
・4回目以降は支給しない
B 介護休業給付の対象家族たる父母には養父母が含まれない。
養父母→養子縁組を結んで法律上の親子関係にある→含まれる。
C 被保険者が介護休業給付金の支給を受けたことがある場合、同一の対象家族について当該被保険者がした介護休業ごとに、当該介護休業を開始した日から当該介護休業を終了した日までの日数を合算して得た日数が60日に達した日後の介護休業については、介護休業給付金を支給しない。
「60日」×→「93日」○
D 派遣労働者に係る労働者派遣の役務を受ける者が当該派遣労働者につき期間を定めて雇い入れた場合、当該派遣労働者であった者について派遣先に派遣されていた期間は、介護休業給付金を受けるための要件となる同一の事業主の下における雇用実績とはなり得ない。
・期間雇用者の育児休業取得の要件→1年以上の雇用継続期間など
・派遣先が派遣労働者の直接雇用した場合→直接雇用の前に派遣元に雇用されていた期間も通算して「1年以上」あるかの判定
E 介護休業給付金の支給を受けた者が、職場に復帰後、他の対象家族に対する介護休業を取得する場合、先行する対象家族に係る介護休業取得回数にかかわらず、当該他の対象家族に係る介護休業開始日に受給資格を満たす限り、これに係る介護休業給付金を受給することができる。
介護休業は、「対象家族1人」につき、計3回まで取得可能。
よって、対象家族が二人いれば、計3回×二人分=6回取得できる。
〔問 7〕正解率50%台
雇用保険制度に関する次の記述のうち、正しいものはいくつあるか。
ア 適用事業の事業主は、雇用保険の被保険者に関する届出を事業所ごとに行わなければならないが、複数の事業所をもつ本社において事業所ごとに書類を作成し、事業主自らの名をもって当該届出をすることができる。
イ 事業主が適用事業に該当する部門と任意適用事業に該当する部門を兼営している場合、それぞれの部門が独立した事業と認められるときであっても、すべての部門が適用事業となる。
結論の分岐は「独立性」。
・それぞれ独立性がある→適用部門のみが適用事業。
・それぞれの部門が独立した事業と認められない場合→主たる業務が適用部門であるときは、当該事業主の行う事業全体が適用事業。
ウ 雇用保険法の適用を受けない労働者のみを雇用する事業主の事業(国、都道府県、市町村その他これらに準ずるものの事業及び法人である事業主の事業を除く。)は、その労働者の数が常時5人以下であれば、任意適用事業となる。
労働者全員が20時間未満の場合など→被保険者いない→適用事業として取り扱う必要はない
エ 失業等給付に関する審査請求は、時効の中断に関しては、裁判上の請求とみなされない。
・裁判上の請求(提訴など)→時効中断の効力が生じる
・審査請求も、裁判上の請求と同様に、時効中断の効力が生じる。
オ 雇用安定事業について不服がある事業主は、雇用保険審査官に対して審査請求をすることができる。
雇用安定事業→雇用保険審査官への審査請求ラインにのらない。
A 一つ
B 二つ
C 三つ
D 四つ
E 五つ
〔問 8〕正解率80%台
労働保険料に関する次の記述のうち、正しいものはどれか。
A 賃金の日額が、11,300円以上である日雇労働被保険者に係る印紙保険料の額は、その労働者に支払う賃金の日額に1.5%を乗じて得た額である。
「印紙」だから定額。
・賃金日額11,3000円以上→176円(労使折半)
・賃金日額8,2000円以上→146円(労使折半)
・賃金日額8,2000円未満→96円(労使折半)
B 労働保険徴収法第39条第1項に規定する事業以外の事業(一元適用事業)の場合は、労災保険に係る保険関係と雇用保険に係る保険関係ごとに別個の事業として一般保険料の額を算定することはない。
正社員1名、20時間未満のパート労働者1名の事業所。
・労災保険料→二人分の賃金総額で計算
・雇用保険料→正社員分の賃金総額のみで計算
労災・雇用を分けて計算。
C 請負による建設の事業に係る賃金総額については、常に厚生労働省令で定めるところにより算定した額を当該事業の賃金総額とすることとしている。
「常に」→必ずそうなる、という意味。
賃金総額の特例は「算定し難い場合」限定で発動→「常に」ではない。
D 建設の事業における平成30年度の雇用保険率は、平成29年度の雇用保険率と同じく、1000分の12である。
簡単すぎて逆に間違えるかも知れない問題。「○だ!、、あれ?29年は違う率じゃなかったけ?」
E 労災保険率は、労災保険法の適用を受けるすべての事業の過去5年間の業務災害及び通勤災害に係る災害率並びに二次健康診断等給付に要した費用の額、社会復帰促進等事業として行う事業の種類及び内容その他の事情を考慮して厚生労働大臣が定める。
5年×→3年○。
災害発生率は過去3年でみるが、パターン。メリット制の収支率など。
〔問 9〕正解率60%台
労働保険料の納付等に関する次のアからオの記述のうち、誤っているものの組合せは、後記AからEまでのうちどれか。
ア 1日30分未満しか働かない労働者に対しても労災保険は適用されるが、当該労働者が属する事業場に係る労災保険料は、徴収・納付の便宜を考慮して、当該労働者に支払われる賃金を算定の基礎となる賃金総額から除外して算定される。
いわゆる「そんな規定はない」問題。
30分未満はいちいち除外とか、かえってめんどくさい、という話。
イ 確定保険料申告書は、納付した概算保険料の額が確定保険料の額以上の場合でも、所轄都道府県労働局歳入徴収官に提出しなければならない。
確定保険料申告書を提出しない=確定保険料額が把握できない→以上でも、未満でも、同額でも、必ず提出。
ウ 継続事業(一括有期事業を含む。)について、前保険年度から保険関係が引き続く事業に係る労働保険料は保険年度の6月1日から起算して40日以内の7月10日までに納付しなければならないが、保険年度の中途で保険関係が成立した事業に係る労働保険料は保険関係が成立した日の翌日から起算して50日以内に納付しなければならない。
「じっくりこと」こと、煮込んだスープ。
エ 特別加入保険料に係る概算保険料申告書は、所轄都道府県労働局歳入徴収官に提出しなければならないところ、労働保険徴収法第21条の2第1項の承認を受けて労働保険料の納付を金融機関に委託している場合、日本銀行(本店、支店、代理店、歳入代理店をいう。以下本肢において同じ。)を経由して提出することができるが、この場合には、当該概算保険料については、日本銀行に納付することができない。
「承認を受けて金融機関に委託」→口座振替納付の意味。
現金が伴わないため銀行は経由できない。
オ 雇用保険に係る保険関係のみが成立している事業の一般保険料については、所轄公共職業安定所は当該一般保険料の納付に関する事務を行うことはできない。
職安→会社とお金のやり取りはしない
・労働保険料の申告・納付の経由もできない
・報奨金の申請も受け付けない
A (アとイ) B (アとエ) C (イとウ) D (ウとオ) E (エとオ)
〔問 10〕正解率30%台
労働保険料に係る報奨金に関する次の記述のうち、正しいものはどれか。
A 労働保険事務組合が、政府から、労働保険料に係る報奨金の交付を受けるには、前年度の労働保険料(当該労働保険料に係る追徴金を含み延滞金を除く。)について、国税滞納処分の例による処分を受けたことがないことがその要件とされている。
×の肢には「捏造痕」が残ることがある。労働保険料にはそもそも延滞金は含まれない。にもかかわらず、(延滞金を除く)というのは捏造っぽい表現。
B 労働保険事務組合は、その納付すべき労働保険料を完納していた場合に限り、政府から、労働保険料に係る報奨金の交付を受けることができる。
集金率95%でOK!
C 労働保険料に係る報奨金の交付要件である労働保険事務組合が委託を受けて労働保険料を納付する事業主とは、常時15人以下の労働者を使用する事業の事業主のことをいうが、この「常時15人」か否かの判断は、事業主単位ではなく、事業単位(一括された事業については、一括後の事業単位)で行う。
「事業主(企業)単位ではなく、事業単位」。社労士試験の大原則
D 労働保険料に係る報奨金の交付を受けようとする労働保険事務組合は、労働保険事務組合報奨金交付申請書を、所轄公共職業安定所長に提出しなければならない。
職安→会社とお金のやり取りはしない
・労働保険料の申告・納付の経由もできない
・報奨金の申請も受け付けない
E 労働保険料に係る報奨金の額は、現在、労働保険事務組合ごとに、2千万円以下の額とされている。
報奨金額→最大1,000万円!
執筆/資格の大原 社会保険労務士講座
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