【社労士試験】令和4年度(2022年度)の雇用保険料率は2段階引き上げ。その理由がヤバい…【追加徴収】

みなさん、こんにちは。
金沢博憲です。

今回は、令和4年度(2022)の雇用保険率について、現時点で分かっている情報を解説します。
内容はまだ改正案ですが、閣議決定もなされ、ほぼ確定といえます。

結論としては…

令和4年度の雇用保険率は、令和4年4月から0.05%、令和4年10月から0.4%引き上げられます。

文章を読んでいる暇がない、という方はこちらの2分弱のYou Tube動画でサクッと確認してください。

雇用保険率(雇用保険料率)とは

雇用保険に加入している企業は、毎年度、雇用保険料を納付しています。
雇用保険料は、その年度の賃金総額(給与総額)に一定の率を乗じて計算します。

その一定の率を雇用保険率といいます。
雇用保険料率という言い方もしますが、法令上は「雇用保険率」が正しいです。

雇用保険率は、雇用保険の収支状況や積立金の残高などに応じて見直しが検討され、変更がある場合には4月1日から施行されます。

令和3年度の雇用保険率

令和3年度の雇用保険率は、一般的な業種では1000分の9(0.9%)です。

その経理区分は、

  • 失業等給付に充てる部分(労使折半):0.2%
  • 育児休業給付に充てる部分(労使折半):0.4%
  • 雇用二事業に充てる部分(企業負担):0.3%

にわかれています。

上記のうち、失業等給付と育児休業給付は、失業者や労働者への給付ということで、労使折半で負担します。
半分は企業負担、もう半分が労働者負担です。

一方、雇用二事業は、その事業内容が主に事業主への助成金ということで、全額企業が負担します。

結果、労働者の負担は、

  • 失業等給付に充てる部分(労働者負担):0.1%
  • 育児休業給付に充てる部分(労働者負担):0.2%

となり、0.3%です。

例えば、月給30万円であれば、30万円×0.3%=月900円が労働者負担となり、毎月の給与から天引されます。

令和4年度の雇用保険率はどうなる?

新型コロナウイルス感染症が拡大する中、過去に例のない大幅な雇用調整助成金の拡充措置等が行われた結果、雇用保険財政は、支出が保険料収入を大幅に上回り、その補填のために雇用安定資金残高は令和2年度末で0となり、積立金もほぼ枯渇するという、極めて厳しい状況に至っています。

「もう金がない」という状況です。

雇用保険財政の立て直しを図るため、令和4年度からの雇用保険率の引き上げが厚生労働省内で議論されてきており、先日、労働政策審議会の「雇用保険部会案」でその方針が示されました。
厚生労働省は「雇用保険部会案」をもとに法律案を作成し、今通常国会に提出する予定です

経理区分ごとにみていきましょう。

失業等給付に係る率は令和4年10月から0.6%に引き上げ

「雇用保険部会案」では、令和4年度においては、「令和4年4月から9月までは2/1000、同年 10 月から令和5年3月までは6/1000 とすべきである」としています。

  • 失業等給付に充てる部分(労使折半):0.2%→10月から0.6%

失業等給付に係る保険料率については、平成28年の雇用保険法改正時に、当時の過去10 年平均の受給者実人員である61 万人に単年度で対応し得る率として8/1,000 を原則とされました。
その後、雇用情勢が良好に推移して積立金残高も高い水準にあったことから、平成29年度から令和3年度まで、法律上の措置を講じた上で暫定的に2/1,000 引き下げられた上で、弾力倍率が2を超えていたことを踏まえて、弾力条項に基づき更に4/1000 引き下げられてきたことから、この間2/1000 とされてきました。
※弾力条項とは、積立金残高と差引剰余の合計が失業等給付費の2倍を超える場合は保険料率を最大4/1000 引下げ可能、失業等給付費の1倍を下回る場合は最大4/1000 引上げ可能とする仕組み。

令和2年度の弾力倍率は1.85となっており、弾力条項に基づく引下げが可能な2を下回る水準となっていることや、法律により暫定的に2/1000 引き下げていた措置が令和3年度末で期限を迎えることから、失業等給付に係る保険料率は、原則の8/1000 に戻ることとなります。
しかしながら、全体的に回復途上にあるものの、新型コロナウイルス感染症の経済への影響も未だ残っている状況にかんがみ、労使の負担感も踏まえた激変緩和措置として、 4月からではなく、10月からの引き上げとしています。

なんでも今年の夏に参院選が控えているので、参院選前の負担増は避けたいとの思惑もあるようですね。
※カーソルで反転させるとみえます。

育児休業給付に係る率は0.4%を維持

「雇用保険部会案」では、「4/1000 のままとすべきである」としています。

  • 育児休業給付に充てる部分(労使折半):0.4%

かつては育児休業給付は失業等給付の一部として求職者給付等と一体的な財政運営が行われていましたが、「育児休業給付は雇用情勢の影響を受けづらい」といった理由で、令和2年の雇用保険法改正により、令和2年度以降、育児休業給付に充てる率は失業等給付に係る保険料率から分離されました。

従前のトレンドで支出の増加が続くことを前提としても令和6年度まで安定的な運営が可能であることが確認できたことから、現行の率を維持としました。

雇用二事業に係る率は令和4年4月から0.35%に引き上げ

「雇用保険部会案」では、「原則の3.5/1,000に戻すことが適当である。」としています。

  • 雇用二事業に充てる部分(企業負担):0.3%→令和4年4月から0.35%

雇用二事業に係る率は、原則3.5/1000 であるところ、令和3年度までは弾力条項に基づき3/1000 とされてきました。
しかし、令和2年度の弾力倍率は▲7.65 であり、弾力条項に基づく引下げが可能な1.5を下回る水準となっているため、原則の3.5/1,000に戻すことが適当であ
るとしています。

10月から「月給30万円で手取り600円減」

以上をまとめると、次の表の通りとなります。
まず4月から雇用二事業分の引き上げ、そして、10月から失業等給付の引き上げの2段階になっています。

労働者負担でみると、4月からは変更ありませんが、10月から失業等給付の率が0.4%上がりますので、その半分の0.2%の負担増となります。

例えば、月給30万円の場合の労働者負担は

  • 令和3年9月まで:30万円×0.3%=月900円
  • 令和4年10月から:30万円×0.5%=月1500円

となり、600円の負担増、つまり手取りが600円減ることになります。

 

20年ぶりの追加徴収はある?

保険年度の途中で保険料率が引き上げとなると、「追加徴収」が行われるのかも気になるところです。

追加徴収とは、保険率が年度の途中で引き上がった場合に、その引き上げ分の保険料を徴収することができる仕組みです。

過去に年度途中で雇用保険率が引き上げられた例をみると、平成14年度の例があります。
平成14年度は、「雇用保険財政は現在非常に厳しい状況にあり、雇用失業情勢、雇用保険受給者の動向によっては積立金が平成14年度後半に枯渇するおそれがある」として、10月から雇用保険率の引き上げが行われて「追加徴収」が実施されました。

もし今年追加徴収が行われるとすれば、20年ぶりということになります。

今後、令和4年度の労働保険料の納付方法が詰められると思いますが、注目したいところです。
もちろん試験対策上も要チェックです。

 

 

 

執筆/資格の大原 社会保険労務士講座

金沢 博憲金沢 博憲

時間の達人シリーズ社労士24」「経験者合格コース」を担当致しております。
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