【2022年最新版】法改正対策 労働・保険・年金 総まとめ【社労士】

社会保険労務士試験合格を目指す皆様、こんにちは。
社労士24担当講師の金沢です。

金沢 博憲金沢 博憲

法改正の最新情報はTwitterでも随時配信します。宜しければフォローしてください。

今回は、2022年対策向けの法改正につき、その最新一覧をご紹介します。
とりあげず現時点で分かっている主要改正点を掲載しています。

今後随時加筆。

最新の2023年試験向けはこちらです。

【2023年最新版】法改正対策 労働・保険・年金 総まとめ【社労士】

なお、過去の改正もよくでます。要チェックです。

いつまでの改正が試験の対象になる?

今年の試験対象になる法改正は、(例年ベースなら)令和4年4月15日(金)時点で施行されているものです。
 
同日後に施行される改正は、令和4年の試験対象になりません。

例えば、令和4年10月からの短時間労働者に対する健康保険・厚生年金保険の適用拡大(「特定適用事業所」の要件を常時500人を超える事業所から常時100人を超える事業所に拡大する)などは、令和4年の試験対象ではなく、令和5年の試験対象となります。

 

労働基準法

民法改正に伴う未成年者の定義の変更

民法改正により、令和4年4月1日から、成年年齢が20歳以上から18歳以上に引き下げられる。
労基法にも、未成年者の労働契約解除権の規定がある。

令和4年4月以降の成年年齢の引き下げ(20歳以上→18歳以上)による影響。
例えば、18歳で働く場合。
(民法)
・労働契約の際の親の同意→不要になる
・親の同意がない場合の契約取消権→対象から外れる
(労基)
・労働契約が不利と認められる場合の労働契約解除権→対象から外れる

施行期日→令和4年4月1日

労働安全衛生法

照度の基準、便所の設置基準、救急用具

照度の基準(施行日→令和4年12月1日)

事務室の作業面の照度基準について、作業の区分を「一般的な事務作業」及び「付随的な事務作業」とし、それぞれ300ルクス(現行は150ルクス)以上及び150ルクス(現行は70ルクス)以上とすること。

便所の設置基準

作業場における便所の設置基準について、以下のとおり見直すこと。
(1)男性用と女性用に区別して設置した上で、独立個室型の便所を設置する場合は、男性用大便所の便房、男性用小便所及び女性用便所の便房をそれぞれ一定程度設置したものとして取り扱うことができるものとすること。
(2)作業場に設置する便所は男性用と女性用に区別して設置するという原則は維持した上で、同時に就業する労働者が常時10人以内である場合は、便所を男性用と女性用に区別することの例外として、独立個室型の便所を設けることで足りることとすること。

救急用具

「負傷者の手当に必要な救急用具及び材料」の備え付けについて、事業場において労働災害等により労働者が負傷し、又は疾病にり患した場合には、その場で応急手当を行うことよりも速やかに医療機関に搬送することが基本であること及び事業場ごとに負傷や疾病の発生状況が異なることから、事業場に一律に備えなければならない品目についての規定は削除することとする。

施行期日

施行期日→令和3年12月上旬(照度基準については、令和4年12月1日)

厚労省サイト

事務所における室の気温の基準の見直し

事務所則第5条第3項において、事業者は、空気調和設備を設けている場合は、労働者を常時就業させる室(以下「室」という。)の気温が「17度以上28度以下」になるように努めなければならないこととされているところ、室の気温の基準を「18度以上28度以下」に改めたこと。

なお、空気調和設備を設けている場合以外であっても、冷暖房器具を使用することなどにより事務所における室の気温は18度以上28度以下になるようにすることが望ましいこと。

施行期日:令和4年4月1日

 

労働者災害補償保険法

脳・心臓疾患の労災認定基準の見直し

脳・心臓疾患の労災認定基準については、改正から約20年が経過する中で、働き方の多様化や職場環境の変化が生じていることから、最新の医学的知見を踏まえて、厚生労働省の「脳・心臓疾患の労災認定の基準に関する専門検討会」において検証などを行い、令和3年7月16日に報告書が取りまとめられた。
 
厚生労働省は、この報告書を踏まえて、脳・心臓疾患の労災認定基準を改正したものである。

【認定基準改正のポイント】

  • 長期間の過重業務の評価に当たり、労働時間と労働時間以外の負荷要因を総合評価して労災認定することを明確化
  • 長期間の過重業務、短期間の過重業務の労働時間以外の負荷要因を見直し
  • 短期間の過重業務、異常な出来事の業務と発症との関連性が強いと判断できる場合を明確化
  • 対象疾病に「重篤な心不全」を追加

施行期日:令和3年9月15日

厚労省サイト

厚労省サイト②

特別加入制度の対象範囲の拡大

特別加入制度の対象範囲に、フードデリバリー配達員及びフリーランスで働くITエンジニアを新たに加える。
申込みは任意。
保険料は本人が負担する。

特別加入団体を通して申し込み手続きを行う。

保険料率は、フードデリバリー配達員が1.2%、ITエンジニアが0.3%。

施行期日:令和3年9月1日

局長通達

さらに、特別加入の対象となる事業として、あん摩マツサージ指圧師、はり師、きゆう師等に関する法律に基づく「あん摩マッサージ指圧師、はり師又はきゅう師が行う事業」を新たに規定する。
第二種特別加入保険料率を1000分の3。

 

年金担保貸付制度の終了

年金担保貸付制度は、年金受給者の一時的な資金需要に対して、年金受給権を担保として小口の資金の貸付けを行う制度として利用されてきたが、生活費に充てられるべき年金が返済に充てられ利用者の困窮化を招くこと等の指摘を踏まえ、平成22年12月の閣議決定により廃止することとされた。
閣議決定後は、2度の貸付条件の変更を行うなど段階的に事業規模の縮減を図るとともに、令和2年の年金制度改正にて、令和4年3月末で新規の申込受付を終了することが決定した。

介護(補償)等給付・介護料の最低保障額の改定について

労働者災害補償保険法に基づく介護(補償)等給付については、業務上の事由、二以上の事業の業務を要因とする事由又は通勤による負傷等により一定の障害を負って介護を要する状態となった労働者に対して、介護に要した費用を介護(補償)等給付として支給している。
給付額には、最高限度額と最低保障額を設け、最高限度額については特別養護老人ホームの介護職員の平均基本給を参考に、最低保障額については最低賃金の全国加重平均を参考にして見直すこととしている。

今般、令和3年度に改定された最低賃金の全国加重平均に基づき、介護(補償)等給付の最低保障額を見直す。

・常時介護→75,290円(73,090円)
・随時介護→37,600円(36,500円)
※()内は現行額

なお、介護職員の平均基本給を参考にしている最高限度額に変更はない。

施行期日:令和4年4月1日

遺族(補償)等年金の年金証書等の返納の廃止

現在、則第20条の2第4項において、年金証書の再交付を受けた受給権者は、その後において亡失した年金証書を発見したときは、遅滞なく、発見した年金証書を所轄労働基準監督署長に返納しなければならないとされている。
また、則第20条の3において、年金証書を交付された受給権者又はその遺族は、年金たる保険給付を受ける権利が消滅した場合には、遅滞なく、当該年金証書を所轄労働基準監督署長に返納しなければならないとされている。

令和3年5月 14 日に公表された「行政手続における書面主義の見直し方針」において、証書の返納に係る手続については、所有者による自己廃棄で代替可能とすることとしているため、今般、亡失後に発見した年金証書及び年金たる保険給付の権利消滅後の年金証書について、遅滞なく廃棄することとする。

施行期日:令和4年4月1日

労災就学援護費の支給の対象となる者の拡大

労災就学援護費の支給の対象となる者については、学校教育法(昭和二十二年法律第二十六号)に規定する学校及び公共職業能力開発施設に在学する者としている。

当該施設の範囲につき拡大の要望があったため、その内容を踏まえ、今般、公共職業能力開発施設に準ずる施設を新たに追加する。
今回新たに対象とする者に対する労災就学援護費の額については、現行の労災就学援護費の高校生及び大学生に対する支給額と同様とする。 

施行期日:令和4年4月1日

 

雇用保険法

賃金日額・基本手当日額の変更

基本手当日額の算定基礎となる賃金日額の最高額、最低額等について、毎年度の平均給与額の変動に応じて変更するが、これにより変更した最低額が、最低賃金日額(地域別最低賃金の全国加重平均額に20を乗じて7で除して得た額)を下回る場合は、最低賃金日額を最低額とすることとされている。

この規定に基づき、令和3年8月1日以降の賃金日額の最低額については、最低賃金日額となる。
(計算式)
902 円(令和3年4月1日時点での地域別最低賃金の全国加重平均額)×20÷7=2,577円

施行期日→令和3年8月1日

高年齢被保険者の特例

複数の事業主に雇用される65歳以上の労働者について、
・各々の事業場の労働時間が20時間未満
・合算すると20時間以上
という場合、本人の申出に基づき、雇用保険の高年齢被保険者となることができる。
複数の会社で短時間働くシニア層を想定。

施行期日→令和4年4月1日

詳しくはこちら→高年齢被保険者の特例【令和4年1月から】

Q&Aはこちら→厚労省サイト

育児休業給付に係る被保険者期間要件の合理化

育児休業開始日を起算点とすると被保険者期間要件を満たさない場合、産前休業開始日等を起算点として算定する特例が設けられる。
出産日のタイミングによって受給要件を満たさなくなるケースを解消するための措置である。
勤務開始後1年程度で産休に入った者などが対象となる可能性がある。

動画解説(You Tube)はこちら

施行期日→令和3年9月1日

失業等給付に係る暫定措置の継続

雇止めによる離職者の基本手当の給付日数に係る特例、雇用機会が不足する地域における給付日数の延長、教育訓練支援給付金等の暫定措置を令和6年度まで継続するとともに、コロナ禍に対応した給付日数の延長の特例について、緊急事態措置の終了日の1年後までを対象とする等の見直しを行う。

雇用情勢等に応じた機動的な国庫負担の導入等

求職者給付の国庫負担割合について、雇用保険財政や雇用情勢に応じて異なる国庫負担割合を適用するとともに、別途国庫から機動的に繰入れ可能な仕組みを導入する。

また、育児休業給付等の国庫負担割合の引下げの暫定措置を令和6年度まで継続し、求職者支援制度の国庫負担割合の引下げの暫定措置は、当分の間、本則(1/2)の55/100とする。

雇用関係助成金の見直し

(新設)
・特定求職者雇用開発助成金「成長分野人材確保・育成コース」
・人材開発支援助成金「人への投資コース」

(廃止)
・中途採用等支援助成金「生涯現役起業支援コース」
・両立支援等助成金「女性活躍加速化コース」

詳細はこちら

 

労働保険徴収法

雇用保険率の引き上げ

失業等給付に充てる部分を、令和4年10月から0.2%から0.6%に引き上げる。
育児休業給付に充てる部分は、0.4%を維持する。
雇用二事業に充てる部分を、令和4年4月から0.3%から0.35%に引き上げる。

詳細はこちらの記事で。

 

子ども・子育て支援法

子育て支援に積極的に取り組む事業主に対する助成制度の創設

政府は、令和9年3月31日までの間、仕事・子育て両立支援事業として、労働者の子育ての支援に積極的に取り組んでいると認められる事業主に対し助成及び援助を行う事業ができることとする。

具体的にはくるみん認定・プラチナくるみん認定を受けた中小企業事業主に、助成金を支給する。

施行期日→令和3年10月1日

育児・介護休業法

雇用環境整備及び個別の周知・意向確認が義務化

育児休業を取得しやすい環境整備のため

①育児休業を取得しやすい雇用環境整備
②妊娠・出産の申出をした労働者に対する個別の周知・意向確認の措置

が企業に義務付けられる。

①は研修や相談窓口の設置等。
②は個別面談や書面による情報提供。「育児休業とるの?ほんと?」といったような伝え方はNG

施行期日→令和4年4月1日

詳しくはこちら→雇用環境整備及び個別の周知・意向確認が義務化

有期雇用労働者の育児・介護休業取得要件の緩和

有期雇用労働者の育児休業及び介護休業の取得要件のうち「事業主に引き続き雇用された期間が1年以上である者」であることという要件を廃止する。(なお、「1歳6か月までの間に契約が満了することが明らかでない」の要件は存置する。)
ただし、労使協定を締結した場合には、無期雇用労働者と同様に、事業主に引き続き雇用された期間が1年未満である労働者を対象から除外することを可能とする。

施行期日→令和4年4月1日

厚労省サイト

次世代育成支援対策推進法

くるみん認定及びプラチナくるみん認定の認定基準の改正並びにトライくるみん認定の創設

くるみん認定及びプラチナくるみん認定の認定基準については、令和3年1月 18 日に労働政策審議会雇用環境・均等分科会において、その見直しが建議されており、当該建議を踏まえ、これらの認定基準を改正するとともに、現行のくるみん認定基準に相当する制度を別途定める(以下「トライくるみん認定」という。)こととする。

また、現在の認定制度に加え、雇用する労働者の職業生活と家庭生活の両立のための雇用環境を更に整備するため、不妊治療と仕事との両立にも積極的に取り組む事業主を認定する新たな認定制度を創設する。

施行期日(予定):令和4年4月1日

厚労省サイト

労働施策総合推進法

パワーハラスメントの雇⽤管理上の措置義務が中小事業主にも適用

パワーハラスメントの雇⽤管理上の措置義務が、中小事業主について、令和4年4⽉1⽇から義務化される。(大企業については、令和2年6月1日から義務化されている。)

施行期日:令和4年4月1日

若者雇用促進法

若者雇用促進法に基づく「事業主等指針」を改正

青少年の雇用機会の確保及び職場への定着に関する事業主等が講ずべき措置について規定されている「事業主等指針」(若者雇用促進法第7条の規定に基づくもの)が改正された。

今回の改正は、近年問題となった留意事項について、事業主等が講ずべき措置を新たに定めている。

【事業主等指針の改正のポイント】
    事業主等が青少年の募集及び採用に当たって講ずべき措置、事業主が青少年の職場への定着促進のために講ずべき措置について、次の事項を追加する。

  • 募集情報等提供事業者・募集者等における個人情報の管理
  • 就活生等に対するハラスメント問題への対応
  • 内定辞退等勧奨の防止
  • 公平・公正な就職機会の提供

施行期日:令和3年4月30日

厚労省サイト

女性活躍推進法

一般事業主行動計画の策定義務の対象が拡大

一般事業主行動計画の策定・届出義務及び自社の女性活躍に関する情報公表の義務の対象が、常時雇用する労働者が301人以上から101人以上の事業主に拡大される。

自社の女性活躍に関する情報公表の義務については、301人以上の事業主は、以下の①と②の区分から、それぞれ1項目以上選択して2項目以上情報公表する必要がある。

「①女性労働者に対する職業生活に関する機会の提供」
「②職業生活と家庭生活との両立に資する雇用環境の整備」

一方、新たに情報公表の義務の対象になった101人以上300人以下の事業主は、①又は②の項目からいずれか1項目以上選択し、情報を公表する。

施行期日→令和4年4月1日施行

健康保険法

夫婦共同扶養の場合における被扶養者の認定について

年収がほぼ同じ夫婦の子について、保険者間でいずれの被扶養者とするかを調整する間、その子が無保険状態となって償還払いを強いられることのないよう、被扶養認定の具体的かつ明確な基準を策定することにした。

  • 被扶養者とすべき者の員数にかかわらず、被保険者の年間収入(過去の収入、現時点の収入、将来の収入等から今後1年間の収入を見込んだものとする。以下同じ。)が多い方の被扶養者とする。
  • 夫婦双方の年間収入の差額が年間収入の多い方の1割以内である場合は、被扶養者の地位の安定を図るため、届出により、主として生計を維持する者の被扶養者とする。

解説動画はこちら→夫婦共同扶養の場合における被扶養者の認定について

施行期日→令和3年8月1日

傷病手当金の支給期間の通算化

健康保険においては、病気やけがの治療のため働くことができない場合に、報酬の3分の2程度を傷病手当金として支給することとされている。その支給期間については、同一の病気やけがに関して、支給を始めた日から起算して1年6ヶ月を超えない期間とされており、その間に一時的に労務可能となり、傷病手当金が支給されなかった期間についても、1年6ヶ月の期間に含まれる仕組みとされていた。

仕事と治療の両立の観点から、がん治療のために入退院を繰り返す場合などに柔軟に傷病手当金を利用できるようにするため、出勤に伴い不支給となった期間がある場合には、その分の期間を延長して傷病手当金の支給を受けられるよう、支給期間の通算化を行う。

施行期日:令和4月1月1日

傷病手当金の支給決定における労災給付情報の照会について

健康保険法及び船員保険法に基づく傷病手当金については、同一の疾病等について労働者災害補償保険法、国家公務員災害補償法又は地方公務員災害補償法若しくは同法に基づく条例の規定による傷病手当金に相当する給付(以下「労災給付」という。)を受けることができる場合には、支給を行わないこととされていることから、傷病手当金の支給に当たっては、労災給付の受給状況を確認する必要がある。

今般、全世代対応型の社会保障制度を構築するための健康保険法等の一部を改正する法律により、健康保険法第55条第2項及び船員保険法第33条第3項が新たに設けられ、令和4年1月1日から施行されることから、同日以降、傷病手当金の支給を行うにつき必要があると認めるときは、被保険者(被保険者であった者を含む。以下同じ。)の同意がない場合であっても、労災給付の支給を行う労働基準監督署等に対し、当該給付の支給状況につき、必要な資料の提供を求めることが可能となる。

施行期日:令和4月1月1日

任意継続被保険者制度の見直し

任意継続被保険者の保険料の算定基礎の見直し

任意継続被保険者の保険料については、「退職した時の標準報酬月額」又は「任意継続被保険者が加入している保険者のすべての被保険者の標準報酬月額の平均に基づく標準報酬月額」のいずれか低い額を基礎とすることとされていたが、それぞれの健康保険組合の実状に応じた柔軟な制度とするため、健康保険組合がその規約で定めた場合には、「退職した時の標準報酬月額」を保険料の基礎とすることも可能とする。

被保険者からの申請による資格喪失が可能に

任意継続被保険者の生活実態に応じた加入期間の短縮化を支援する観点から、任意継続被保険者からの申請による任意の資格喪失を可能とする。

具体的には、「任意継続被保険者でなくなることを希望する旨を、厚生労働省令で定めるところにより、保険者に申し出た場合において、その申出が受理された日の属する月の末日が到来したとき」に喪失する。

施行期日:令和4月1月1日

出産育児一時金の支給額の見直し

出産育児一時金及び家族出産育児一時金の支給額については、40.4万円(産科医療補償制度加算の対象となる出産については40.4万円に3万円を超えない範囲の金額を加算した額(具体的な加算額は産科医療補償制度の掛金に基づき設定する。))とされている。

今般、産科医療補償制度が見直され、当該制度の掛金が 1.6 万円から 1.2 万円に引き下げられること、及び社会保障審議会医療保険部会の「議論の整理」において、少子化対策としての重要性に鑑み、出産育児一時金等の支給総額について 42 万円を維持すべきとされたことを踏まえ、現行の40.4万円から40.8万円に引き上げる。

これにより、産科医療補償制度の加算対象となる出産に係る出産育児一時金の支給額は、以下のとおりとなる。

現行 :40.4万円+加算額1.6万円 総額42万円
改正後:40.8万円+加算額1.2万円 総額42万円

施行期日:令和4年1月1日

産科医療補償制度の改定(特定出産事故の基準の見直し)

従来、産科医療補償制度の補償対象範囲は、「補償対象基準」「除外基準」「重症度基準」の全てを満たす場合、補償対象となっていた。
2022年1月以降に出生した児より、「補償対象基準」については、低酸素状況を要件としている個別審査を廃止し、一般審査に統合して、「在胎週数が28週以上であること」が基準となる。
また、1分娩あたりの掛金は1.2万円となる。

施行期日:令和4月1月1日

健康保険証の本人への直接交付が可能に。

現在、被保険者証については、保険者から事業主を通じて被保険者に交付することが義務付けられている。
テレワークの普及等に対応した事務の簡素化を図るため、保険者から被保険者に対して被保険者証を直接交付することが可能となる。

なお、資格喪失時等の被保険者証の返納については、事業主経由を省略できない。

施行期日:令和3年10月1日

保健事業における健診情報等の活用促進

労働安全衛生法等による健診の情報を保険者が保健事業で活用できるよう、事業者に対し被保険者等の健診情報を求めることを可能とする。
また、健康保険組合等が保存する特定健診等の情報を後期高齢者医療広域連合へ引き継ぐこと等を可能とする

施行期日:令和4年1月1日

延滞金の割合の特例

滞納した健康保険の保険料等に係る延滞金の割合について、当分の間、各年の租税特別措置法第94条第1項に規定する延滞税特例基準割合が年7.3%の割合に満たない場合には、その年中においては、年14.6%の割合については当該延滞税特例基準割合に年7.3%の割合を加算した割合とし、年7.3%の割合については、当該延滞税特例基準割合に年1%の割合を加算した割合(当該加算した割合が年7.3%の割合を超える場合には、年7.3%の割合)とすることとされている。

「延滞税特例基準割合」とは、平均貸付割合に、年1%の割合を加算した割合をいう(租税特別措置法第94条第1項)。
※延滞税特例基準割合→令和4年中:0.4%(平均貸付割合)+1%(加算割合)=1.4%

このため、延滞税特例基準割合(1.4%)に基づく令和4年1月1日以降の延滞金の割合は、納期限の翌日から3か月を経過する日までの期間は年2.4%、納期限の翌日から3か月を経過する日の翌日以後は年8.7%となる。

なお、徴収法や国民年金、厚生年金保険でも同様の改正が行われている。

施行期日:令和4年1月1日

国民年金法

保険料額

令和4年度の国民年金の保険料は、17,000円×0.976≒16,590円となる。

年金の受給開始時期の選択肢の拡大

老齢基礎年金及び老齢厚生年金の受給開始時期の選択肢の拡大について、現在 60歳から70歳の間となっているものを、60歳から75歳の間に拡大する。
繰下げ増額率は、最大、84%(0.7%×繰下月数120)となる。

施行期日:令和4年4月1日

動画解説はこちら→最大84%アップ。老齢基礎年金の支給繰下げ

繰上げ減額率の引下げ

選択された受給開始時期にかかわらず、数理的に年金財政上中立となるよう、繰上げ受給を選択した場合の繰上げ減額率を現行の0.5%/月から0.4%/月に引き下げる。

施行期日:令和4年4月1日

国民年金手帳から基礎年金番号通知書への切替え

【見直しの趣旨】
国民年金手帳については、従来、①保険料納付の領収の証明、②基礎年金番号の本人通知という機能を果たしているが、被保険者情報が既にシステムで管理がなされていること及び個人番号の導入によって、手帳という形式で果たす必要性がなくなっている。

また、かつては多くの手続において国民年金手帳の添付を求めていたが、現在は、行政手続の簡素化及び利便性向上を推進する観点から、「基礎年金番号を明らかにする書類」で手続を可能としているほか、給与事務で個人番号を確認等している事業者等で、個人番号の記載をして届出をした場合は、基礎年金番号を明らかにする書類の提出は不要としている。

こうした環境の変化を踏まえ、事業者の業務の簡素化及び効率化等に資するため、国民年金手帳について、手帳という形式及び役割を見直す。

【見直し内容】
新たに国民年金第1~3号被保険者となった者(20歳到達者、20歳前に厚生年金被保険者となった者等)に対する資格取得のお知らせとして、国民年金手帳の交付から基礎年金番号通知書の送付に切り替える。
なお、年金手帳から新制度に移行する際の経過措置として、年金手帳の再交付申請は廃止するが、法律施行までに送付された年金手帳については引き続き基礎年金番号を明らかにすることができる書類として利用できることを規定する。

施行期日:令和4年4月1日施行

20歳前の傷病による障害基礎年金の支給対象期間の変更

20歳前の傷病による障害基礎年金は、毎年、受給者本人の前年所得の確認が必要となり、前年所得に基づく支給対象期間は『8月分から翌年7月分まで』とされている。。

今般、年金生活支援給付金の所得情報の切替時期の変更に伴い、同一の所得情報を要件判定に活用している20歳前の傷病による障害基礎年金についても『10月分から翌年9月分まで』に変更することになった。

施行期日:令和3年8月1日

20歳前障害基礎年金の支給停止に係る所得基準額が引き上げ

平成30年度税制改正により、令和2年分所得から給与所得者に適用される「給与所得控除」及び公的年金等受給者に適用される「公的年金等控除」の控除額が10万円引き下げられ、一方で、全ての所得者に適用される「基礎控除」が10万円引き上げられる。

上記税制改正に伴い、給与所得控除後・公的年金等控除後で基礎控除前の所得を用いて判定を行っている制度について、給与所得者・公的年金等受給者に不利益が生じないよう、基礎控除前の所得を用いている制度について、基準額を10万円引き上げる見直しを行う。

○20歳前障害基礎年金の支給停止に係る所得基準が10万円引き上げ。

・全額停止/462.1万円→472.1万円
・一部停止/360.4万円→370.4万円
 
施行期日:令和3年10月1日

視覚障害に係る障害等級の基準の見直し(案)

専門家会合のとりまとめにおいて、障害基礎年金及び障害厚生年金の支給について、「両眼の視力の和」ではなく、「視力の良い方の眼の視力」を用いて判定することとされたことを受けて、国年令別表に規定する視力障害に係る障害の状態について、「両眼の視力の和」を廃し、「それぞれの眼の視力」による基準(※)に変更する。

当該改正後の1級及び2級に係る障害の状態については、専門家会合におけるとりまとめに基づき、以下のとおりとする。

・視力障害に係る1級の障害の状態(国年令別表1級の項第1号)
イ 両眼の視力がそれぞれ 0.03 以下のもの
ロ 一眼の視力が 0.04、他眼の視力が手動弁以下のもの

・視力障害に係る2級の障害の状態(国年令別表2級の項第1号)
イ 両眼の視力がそれぞれ 0.07 以下のもの
ロ 一眼の視力が 0.08、他眼の視力が手動弁以下のもの

※ 「両眼の視力がそれぞれ○○以下のもの」という改正後の規定は、「視力の良い方の眼の視力が○○以下のもの」と同義である。 

また、これまでのゴールドマン型視野計に基づく視野障害に係る基準に加えて、現在広く普及している自動視野計に基づく視野障害に係る基準を創設することとされた。

公布日:令和3年8月下旬(予定)
施行期日:令和4年1月1日

年金機構サイト

DV被害者に係る遺族年金等の生計同一認定要件の判断について

配偶者からの暴力(以下「DV」という。)の被害者の場合、DVを避けるために一時的な別居が必要になる場合があることから、裁判例及び認定事例を踏まえつつ、DV被害者に係る遺族年金等の生計同一認定要件の判断に当たっての留意事項を定め、令和3年10月1日から適用することとした。

被保険者等の死亡時において以下の①から⑤までのいずれかに該当するために被保険者等と住民票上の住所を異にしている者については、DV被害者であるという事情を勘案して、被保険者等の死亡時という一時点の事情のみならず、別居期間の長短、別居の原因やその解消の可能性、経済的な援助の有無や定期的な音信・訪問の有無等を総合的に考慮して、生計同一認定要件に該当するかどうかを判断する。

① 配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護等に関する法律に基づき裁判所が行う保護命令に係るDV被害者であること。
② 婦人相談所、民間シェルター、母子生活支援施設等において一時保護されているDV被害者であること。
③ DVからの保護を受けるために、婦人保護施設、母子生活支援施設等に入所しているDV被害者であること。
④ DVを契機として、秘密保持のために基礎年金番号が変更されているDV被害者であること。
⑤ 公的機関その他これに準ずる支援機関が発行する証明書等を通じて、①から④までの者に準ずると認められるDV被害者であること。

施行期日:令和3年10月1日

令和4年度の年金額

令和4年度の年金額は、マイナス0.4%の改定。

詳しくはこちらの記事でまとめています。

2022年度(令和4年度)の年金額はマイナス0.4%。その理由は?

こちらの動画でもざっくり解説。

 

厚生年金保険法

在職定時改定の導入

在職中の年金受給の在り方の見直しの一環として、現在は、老齢厚生年金の受給権を取得した後に就労した場合は、資格喪失時(退職時・70歳到達時)に、受給権取得後の被保険者であった期間を加えて、老齢厚生年金の額を改定しているが、就労を継続したことの効果を早期に年金額に反映して実感していただけるよう、65歳以上の在職中の老齢厚生年金受給者について、年金額を毎年10月に改定する在職定時改定制度を導入する。

解説動画はこちら→毎年年金アップ!在職定時改定とは【法改正】

施行期日:令和4年4月1日施行

在職老齢年金の見直し

60~64歳に支給される特別支給の老齢厚生年金を対象とした在職老齢年金制度(低在老)の支給停止の基準額を、現行の28万円から65歳以上の在職老齢年金制度(高在老)と同じ47万円に引き上げる。
 
施行期日:令和4年4月1日

 

加給年金の支給停止ルールの改善

加給年金額の加算の基礎となっている配偶者が、老齢厚生年金(その年金額の計算の基礎となる被保険者期間の月数が240か月以上であるものに限る。)等の老齢又は退職を支給事由とする給付の受給権を有している場合には、加給年金額に相当する部分の支給が停止されるが、当該配偶者に対する老齢厚生年金等の全額が支給停止となっている場合には、現行規定では、この支給停止が解除されることとなっている。

配偶者の老齢厚生年金等が一部でも支給されている場合には加給年金が支給されない一方で、配偶者の賃金が高く、在職老齢年金制度によりその全額が支給停止となっている場合には加給年金が支給されるといった不合理が生じていることを踏まえ、配偶者が老齢厚生年金等の老齢又は退職を支給事由とする給付の受給権を有する場合には、その全額が支給停止されている場合であっても、加給年金額に相当する部分の支給を停止することとする。

施行期日:令和4年4月1日

国民健康保険法

有効期限切れとなった国民健康保険被保険者証等の処分方法について

「有効期限切れとなった国民健康保険被保険者証等の処分方法について(あっせん)」によるあっせんを踏まえ、被保険者の負担軽減のため、有効期限切れとなった国民健康保険被保険者証等について、保険者に返却せず被保険者自身で破棄しても差し支えないこととする取扱いが可能となるよう、国民健康保険法施行規則及び高齢者の医療の確保に関する法律施行規則の一部を改正する。

(改正の概要)

  • 国保則第7条の4第2項において、被保険者の属する世帯の世帯主は高齢受給者証が有効期限に至ったときは、当該世帯主が住所を有する市町村に返還しなければならない旨規定しているところ、対応する規定を削る。
  • 被保険者証、高齢受給者証、被保険者資格証明書、食事療養減額認定証、生活療養減額認定証、特定疾病受療証、限度額適用認定証及び限度額適用・標準負担額減額認定証に係る様式について、上記に準じて所要の改正を行う。

施行期日:令和3年10月15日

子どもに係る国⺠健康保険料等の均等割額の減額措置の導⼊

国⺠健康保険制度の保険料は、応益(均等割・平等割)と応能(所得割・資産割)に応じて設定されている。 その上で、低所得世帯に対しては、応益保険料の軽減措置(7・5・2割軽減)が講じられている。

国民健康保険の保険料(税)について、子ども(未就学児)に係る被保険者均等割額を半分に軽減し、その減額相当額を公費で支援する制度を創設する。

施行期日:令和4年4月1日

財政安定化基金の見直し

国民健康保険の財政安定化基金(都道府県に設置)を、都道府県が国民健康保険事業費納付金の著しい上昇抑制等のために充てることを可能とする。

急激な医療費の上昇時などに納付⾦の上昇幅を抑え、複数年での保険料の平準化に資する財政調整が可能となる。

施行期日:令和4年4月1日

保険料の賦課限度額の引き上げ(案)

厚労省は、国民健康保険保険料の賦課限度を令和4年度より、現在の99万円から102万円に3万円引き上げる案を示した。

基礎賦課額 63万円→65万円
後期高齢者支援金等賦課額 19万円→20万円
介護納付金賦課額 17万円
合計 99万円→102万円

高所得層の保険料負担を重くし、中所得層の負担を抑える。

詳細

高齢者医療確保法

令和4年度の後期高齢者医療保険料賦課限度額の見直し

後期高齢者医療の保険料には、年間保険料に賦課限度額を設けている。
医療給付費の伸び等により保険料負担の増加が見込まれる中、中間所得層の負担とのバランス等を考慮し、賦課限度額を2万円引き上げ、66万円とする。

施行期日:令和4年4月1日

後期高齢者医療制度の令和4・5年度の保険料

後期高齢者医療制度の保険料は、診療報酬の改定とあわせて、2年に1回改定。

令和4・5年度の被保険者一人当たり平均保険料額は、全国平均で月額6,472円となる見込み(令和2・3年度の6,358円から114円(1.8%)増加)。

厚労省サイト

介護保険法

食費居住費の助成(特定入所者介護サービス費)の見直し

介護保険制度においては、平成 17 年 10 月より施設における食費や居住費について、在宅で介護を受ける方との公平性の観点から、利用者本人の負担を原則とし、
低所得の方に対しては、年金収入等に応じて一定の助成(特定入所者介護サービス費)をしてきた。

この食費と居住費の助成については、助成を受けていない施設入所者や在宅で介護を受ける方との公平性の観点から、能力に応じた負担となるよう精緻化し、食費居住費負担を含む本人の支出額について、所得段階間の均衡を図る。

施行期日:令和3年8月

リーフ(PDF)

 

高額介護(予防)サービス費の見直し

介護保険制度の高額介護サービス費の自己負担限度額は、制度創設時から医療保険の高額療養費制度を踏まえて設定されている。

この高額介護サービス費について、医療保険の高額療養費制度における負担限度額に合わせ、現行の現役並み所得者のうち、年収 770 万円以上の者と年収約 1,160
万円以上の者について、世帯の上限額を現行の 44,400 円からそれぞれ 93,000 円、140,100 円とする見直しを行う。

施行期日:令和3年8月

リーフ(PDF)

 

確定拠出年金法

受給開始時期の選択肢の拡大

公的年金の受給開始時期の選択肢の拡大に併せて、確定拠出年金における老齢給付金の受給開始の上限年齢を70歳から75歳に引き上げる。
 
これによって、確定拠出年金における老齢給付金は、60歳(加入者資格喪失後)から75歳に達するまでの間で受給開始時期を選択することができるようになる。

施行期日:令和4年4月1日

その他社会保険に関する一般常識

日・フィンランド社会保障協定の発効

11月25日(現地時間同日)、「社会保障に関する日本国とフィンランド共和国との間の協定(日・フィンランド社会保障協定)」(令和元年9月23日署名)の効力発生のための外交上の公文の交換がヘルシンキで行われた。
これにより、この協定は令和4年2月1日に効力を生ずることとなる。

現在、日・フィンランド両国の企業等からそれぞれ相手国に一時的に派遣される被用者等(企業駐在員等)には、日・フィンランド両国で年金制度及び雇用保険制度に加入が義務付けられているため、社会保険料の二重払いの問題等が生じている。
この協定は、このような問題を解決することを目的としており、この協定の規定により、派遣期間が5年以内の一時派遣被用者等は、原則として、派遣元国の年金制度及び雇用保険制度にのみ加入することとなる。
また、両国での保険期間を通算して、それぞれの国における年金の受給権を確立できることとなる。

この協定が発効することにより、企業及び駐在員等の負担が軽減され、日・フィンランド両国間の人的・経済的交流が一層促進されることが期待される。

この協定が発効すると、我が国にとって21番目の社会保障協定となる。

日本が社会保障協定を締結(発効済)している国(20カ国)
ドイツ、英国、韓国、アメリカ、ベルギー、フランス、カナダ、オーストラリア、オランダ、チェコ、スペイン、アイルランド、ブラジル、スイス、ハンガリー、インド、ルクセンブルク、フィリピン、スロバキア、中国(英国、韓国及び中国については通算規定を含まない。)

 

執筆/資格の大原 社会保険労務士講座

金沢 博憲金沢 博憲

時間の達人シリーズ社労士24」「経験者合格コース」を担当致しております。
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