【社労士】2021年法改正 労働・保険・年金 総まとめ【最新一覧】

社会保険労務士試験合格を目指す皆様、こんにちは。
社労士24担当講師の金沢です。

金沢 博憲金沢 博憲

法改正の最新情報はTwitterでも随時配信します、宜しければフォローしてください。

今回は、2021年対策向けの法改正につき、その最新一覧をご紹介します。
とりあげず現時点で分かっている主要改正点を掲載しています。

今後随時加筆。

最新の2022年法改正はこちら

2020年法改正はこちら

2019年法改正はこちら

2018年法改正はこちら

労働基準法

副業・兼業の場合における労働時間管理に係る労働基準法第38条第1項の解釈等について

労働基準法第38条第1項において「労働時間は、事業場を異にする場合においても、労働時間に関する規定の適用については通算する。」と規定され、「事業場を異にする場合」とは事業主を異にする場合をも含むとされている。
労働者が事業主を異にする複数の事業場で労働する場合における法第38条第1項の解釈及び運用について、新たな通達が発出された。

通達の全文はこちらに掲載

36協定届等における押印・署名の廃止

労働基準法施行規則等に規定する届出等(時間外労働・休日労働に関する協定届など)の様式において使用者が押印する欄、及び使用者又は過半数代表者による押印又は署名(押印等)を義務づける規定を改め、その氏名を記載することで足りることとした。
これに併せて、様式のうち、過半数労働組合の名称又は過半数代表者の氏名を記載するものについて、チェックボックスを設けることにより、協定当事者の適格性を確認することとした。

36協定届の本社一括届出の要件が緩和

36協定届や就業規則(変更)届については、事業場単位でそれぞれの所在地を管轄する労働基準監督署に届け出る必要があるが、一定の条件に該当する場合には、本社において各事業場の届出を一括して本社の所轄署に届け出ることができる。

従来、使⽤者と各事業場の過半数を組織する労働組合(本部)が締結した協定のみ本社⼀括届出が可能であったが、電⼦申請による場合に限り、労働者側の協定締結当事者が事業場ごとに異なっていても、本社⼀括届出が可能となった。

 

労働者災害補償保険法

複数事業労働者への労災保険給付

複数就業者の労災保険給付について、複数就業先の賃金に基づく給付基礎日額の算定や給付の対象範囲の拡充等の見直しを行う。

詳しい内容はこちらの記事でまとめています。

特別加入者の対象範囲の拡大(令和3年4月1日施行)

柔道整復師、芸能従事者、アニメーション制作従事者

一人親方等に「柔道整復師」が追加された。
特定作業従事者に「芸能従事者」及び「アニメーション制作従事者」が追加された。

特別加入の担い手としては、それぞれ、日本柔道整復師会、日本俳優連合、日本アニメーター・演出協会を想定している。

業務の範囲としては、柔道整復師については

柔道整復師

柔道整復師法に基づく厚生労働大臣の免許を受けた柔道整復師が行う事業
※柔道整復とは、運動器(骨、関節、筋、腱、靭帯など)に加わる外傷性が明らかな原因によって発生する骨折、脱臼、捻挫、打撲や軟部組織損傷の「患部」あるいは「受傷部」に「施術」を行うもの。

芸能従事者については

芸能従事者

芸能従事者や放送番組(広告放送を含む。)、映画、劇場、イベント会場、楽屋等において演技、舞踊、音楽、演芸その他の芸能実演や演出の提供、若しくは芸能製作に従事する者
具体的には、ロケ撮影地、劇場、イベント会場、スタジオ、楽屋等での事故が起こる可能性のある、俳優等の実演家、演出家及び撮影、照明、音響、舞台監督、録音、美術製作、記録、メイク等の芸能製作関係者及びマネージメント従事者を含むことを想定している。 

アニメーション制作従事者については

アニメーション制作従事者

アニメーション制作従事者アニメーションの制作の作業。
具体的には、監督、演出、アニメーター(作画監督、原画、動画等のアニメ制作に係る作業)、仕上、美術、3DCG、撮影、編集、制作進行等を想定している。

特別加入保険料率はいずれも1000分の3。

フリーランスの高年齢就業者

また、高年齢者雇用安定法に新設された創業支援等措置(70歳まで継続的に業務委託契約を締結する制度、社会貢献活動に継続的に従事できる制度)により就業する高年齢者も特別加入の対象となる見込み。

創業支援等措置に基づき高年齢者が行う事業を一人親方等が従事する事業として追加する。

創業支援等措置により就業する高年齢者は労働者とはされないため、労働者災害補償保険に強制加入とされないため、特別加入の対象に加えることにした。

こちらも特別加入保険料率は3/1000。

特別加入者の範囲拡大についての詳細はこちらからどうぞ。

 

 

介護(補償)等給付の額の引上げ

介護(補償)等給付の最高限度額及び最低保障額は、労働者災害補償保険法施行規則第18条の3の4において規定しているところ、特別養護老人ホームの介護職員の平均基本給(最高限度額)及び最低賃金の全国加重平均額(最低保障額)を基に毎年度見直しを行うこととしており、今般、所要の改正を行う。

遺族(補償)等年金の定期報告等の一部廃止

現在、則第21条第1項において、労災年金受給者に対して定期報告を求めており、受給者に年1回の定期報告の際に、戸籍、住民票や厚生年金等の支給額等がわかる書類を添付させ、生存(転居)情報や厚生年金等の確認を行っていた。

今般、マイナンバーを活用した情報連携により、住民基本台帳における機構保存本人確認情報及び日本年金機構の保有する厚生年金等受給関係情報がオンライン照会により確認可能となったため、マイナンバー情報連携によって必要な情報を取得できる者についての定期報告は廃止することとする。
ただし、遺族が2名以上の場合の定期報告等については、現に労災年金を受給していない受給資格者の個人番号は未収集(戸籍謄本の提出により確認)のため、マイナンバー連携により死亡、婚姻等の情報収集は不可能であるであることから、定期報告は廃止しないこととする。

また、一部の遺族(補償)等年金受給者、厚生労働省関係石綿による健康被害の救済に関する法律施行規則における一部の特別遺族年金受給者、介護(補償)等給付の受給者については、定期報告と合わせて診断書を求めている。
これまでの受給者のデータによると、障害の状態に変化があることは稀であることから、国民の手続負担軽減の観点から、今般医師の診断書の添付を求めないこととする。

雇用保険法

被保険者期間の算定方法の見直し

勤務日数が少ない者でも適切に雇用保険の給付を受けられるよう、被保険者期間の算入に当たり、日数だけでなく労働時間による基準も補完的に設定する。

失業等給付の支給を受けるためには、離職をした日以前の2年間に、「被保険者期間」が通算して12か月以上(特定受給資格者または特定理由離職者は、離職の日以前の1年間に、被保険者期間が通算して6か月以上)あることが必要である。

この「被保険者期間」の算入方法が改正される令和2年8月1日以降は、以下のように変わる。

改正前

離職日から1か月ごとに区切っていた期間に、賃金支払の基礎となる日数が11日以上ある月を1か月と計算。

しかし、週の所定労働時間が20時間以上であり、かつ、雇用見込み期間が31日以上であるという雇用保険被保険者となる要件を満たしながらも、賃金支払の基礎となった日数が11日に満たないことにより、被保険者期間に算入されない期間があるため、日数だけでなく労働時間による基準も補完的に設定するよう見直しをする。

改正後

離職日から1か月ごとに区切っていた期間に、賃金支払の基礎となる日数が11日以上ある月、または、賃金支払の基礎となった労働時間数が80時間以上ある月を1か月として計算。

まとめると次のとおりとなる。

離職理由に基づく給付制限期間の改正

令和2年10月1日以降に離職した場合、正当な理由がない自己都合により退職した場合であっても、5年間のうち2回までは給付制限期間が2か月(原則は3か月)となる。

詳しい内容はこちらの記事でまとめています。

毎月勤労統計の再集計に伴う賃金日額等の再改定

雇用保険法。 令和3年2月から、以下の金額が再改定される

  • 基本手当の賃金日額(30歳未満)→再改定後は13,690
  • 高年齢雇用継続給付の支給限度額→再改定後は365,055円

 毎年8月1日に改定されるルールだが、毎月勤労統計の集計ミスが発覚し、再集計により平均定期給与額が訂正されたことに伴うものである。

金沢 博憲金沢 博憲

いずれも「厳密におぼえちゃいけない数字」たちなので、当然覚え直す必要はない。
・基本手当の賃金日額(30歳未満)→各年齢層で一番低いよね!最高は45~60。
・高年齢雇用継続給付の支給限度額→ざっくり36万円!
これで十分

労働保険料徴収法

労災保険率は据え置き

令和3年度(2021年度)の労災保険率、特別加入保険料率及び労務費率は令和2年度から変更はない。

・最高→88/1000
・最低→2.5/1000
・非業務災害率→0.6/1000
 
労災保険率は、労働保険の保険料の徴収等に関する法律第12 条第2項に基づき、将来にわたって、労災保険の事業に係る財政の均衡を保つことができるよう、過去3年間の災害率等を考慮して、事業の種類ごとに厚生労働大臣が定めることとされている。
 
令和3年度(2021年度)は、3年に1回の改定年であるが、厳しい経済情勢を受けて、業種によって率の上げ下げが生じないように据え置いた。
 
労災保険率は54業種が設定されており、全業種の平均料率は4.5/1,000となる。

【労災保険率】
・最低→その他業種などの2.5/1000
・最高→金属鉱業などの88/1000

【第2種特別加入保険料率】
・最低→3/1000(指定農業機械従事者など)
・最高→52/1000(林業)

【第3種特別加入保険料率】
・一律→3/1000

 

2021年度の最新保険料率のまとめはこちらから。

メリット制の収支率の算定

複数事業労働者への業務災害に関する保険給付の額は複数事業場の賃金額を合算し算定しますが、メリット収支率の算定に当たっては、災害発生事業場における賃金額をもとに算定した額に相当する額のみを算入することになります。

また、複数就業先の業務上の負荷を総合して評価して労災認定する場合、いずれの事業場のメリット収支率の算定の基礎としないこととになります。

労働に関する一般常識

労働に関する一般常識の法改正は、法令名称と改正内容の対応関係が大事です。

例えば、「パワハラ防止措置の根拠は何法?」「えっ?…パワハラ防止法?」とならないように。

最低賃金法

地域別最低賃金(令和2年度)の改定

改定額の全国加重平均額は902円(昨年度901円) 。
東京都(1,013円)が最も高く、沖縄県他(792円)が最も低い。

全国加重平均で毎年20円を超える引き上げが続いてきたが、景気低迷を受け引上げ幅は大きく鈍化。

労働施策総合推進法

中途採用比率の公表義務化

労働者301人以上の企業に中途採用比率の公表義務化される。

中途採用に関する情報の公表により、職場情報を一層見える化し、中途採用を希望する労働者と企業のマッチングをさらに促進することが狙い。

情報公表を求める対象は、中小企業の中途採用が既に活発であることや中小企業への負担を踏まえ、労働者数301人以上の大企業についてのみ義務とする。

情報公表の方法については、企業のホームページ等の利用などにより、求職者が容易に閲覧できる方法による。

パワーハラスメント防止対策の法制化

パワーハラスメントとは、「①優越的な関係を背景とした」、「②業務上必要かつ相当な範囲を超えた言動により」「③就業環境を害すること」(身体的若しくは精神的な苦痛を与えること)をいうことを明記する。

事業主に、パワーハラスメント防止のため、相談体制の整備等の雇用管理上の措置を講じることを義務付ける。

パワーハラスメントの具体的な定義や事業主が講じる雇用管理上の措置の具体的な内容を定めるため、厚生労働大臣が「指針」を策定することとする。

パワーハラスメントに関する労使紛争について、都道府県労働局長による紛争解決援助、紛争調整委員会による調停(行政ADR)の対象とするとともに、措置義務等について履行確保(助言、指導、勧告等)のための規定を整備する。

パワーハラスメント防止対策の措置義務は、中小事業主の施行日に配慮(令和4年3月31日までの間は、努力義務とする。)する。

職業安定法

「お祝い金」の禁止

職業紹介事業者は、求職者にお祝い金その他これに類する名目で社会通念上相当と認められる程度を超えて金銭等を提供することによって、求職の申込みの勧奨を行ってはならないこととする。

職業紹介事業者が、求職者に対して金銭等を提供することにより転職を勧奨し、労働市場における需給調整機能を歪めている側面を踏まえ、指針の一部を改正する。

高年齢雇用安定法

70歳までの就業機会確保

少子高齢化が急速に進展し人口が減少する中で、経済社会の活力を維持するため、働く意欲がある高年齢者がその能力を十分に発揮できるよう、高年齢者が活躍できる環境整備を図ることが必要である。
個々の労働者の多様な特性やニーズを踏まえ、70歳までの就業機会の確保について、多様な選択肢を法制度上整え、事業主としていずれかの措置を制度化する努力義務を設ける。
事業主に対して、65歳から70歳までの就業機会を確保するため、高年齢者就業確保措置として、以下の①~⑤のいずれかの措置を講ずる努力義務を設ける。

【雇用による措置】
①70歳までの定年引上げ
②70歳までの継続雇用制度の導入(特殊関係事業主に加えて、他の事業主によるものを含む)
③定年廃止

【雇用以外の措置(労働者の過半数を代表する者等の同意を得た上で導入)】
④希望する高年齢者について、70歳まで継続的に業務委託契約を締結する制度の導入
⑤希望する高年齢者について、
a.事業主が自ら実施する事業
b.事業主が委託、出資(資金提供)等する団体が行う事業
であって、不特定かつ多数の者の利益の増進に寄与するものに係る業務に70歳まで継続的に従事できる制度の導入

努力義務について雇用以外の措置(④及び⑤)による場合には、労働者の過半数を代表する者等の同意を得た上で導入されるものとする。

障害者雇用促進法

障害者雇用率の引上げ

民間企業の障害者雇用率が2.3%に引き上げられる。

法定雇用率の変更に伴い、障害者を雇用しなければならない民間企業の事業主の範囲が、従業員45.5人以上から43.5人以上に変わる。

障害者雇用認定の認定マークが決定

雇用する労働者が300人以下の中小事業主について、一定の基準を満たす場合は、申請により、障害者雇用促進法第77条に基づき、厚生労働大臣から「認定」を受けることができる。

この認定マークの愛称が「もにす認定」に決まった。

※もにすは、共に進む(ともにすすむ)をもじったもの。

男女雇用機会均等法

①セクシュアルハラスメント等に関する国、事業主及び労働者の責務の明確化

セクシュアルハラスメント等は行ってはならないこと等に対する関心と理解を深めることや、他の労働者に対する言動に注意を払うこと等を関係者の責務として明記する。

※パワーハラスメント、いわゆるマタニティハラスメントについても同様(②④も同じ)

②事業主に相談等をした労働者に対する不利益取扱いの禁止

労働者が相談等を行うことに躊躇することがないよう、労働者がセクシュアルハラスメント等に関して事業主に相談したこと等を理由とした不利益取扱いを禁止する。

③自社の労働者等が他社の労働者にセクシュアルハラスメントを行った場合の協力対応

事業主に対し、他社から雇用管理上の措置の実施(事実確認等)に関して必要な協力を求められた場合に、これに応じる努力義務を設ける。

※ あわせて、自社の労働者が他社の労働者等からセクシュアルハラスメントを受けた場合も、相談に応じる等の措置義務の対象となるこ
とを指針で明確化する。

④調停の出頭・意見聴取の対象者の拡大

セクシュアルハラスメント等の調停制度について、紛争調整委員会が必要を認めた場合には、関係当事者の同意の有無に関わらず、職場の同僚等も参考人として出頭の求めや意見聴取が行えるよう、対象者を拡大する。

女性活躍推進法

女性の職業生活における活躍に関する情報公表の強化

常用労働者301人以上の事業主については、現在1項目以上の公表を求めている情報公表項目を「①職業生活に関する機会の提供に関する実績」、「②職業生活と家庭生活との両立に資する雇用環境の整備に関する実績」に関する項目に区分し、各区分から1項目以上公表することとする。

あわせて、情報公表に関する勧告に従わなかった場合に企業名公表ができることとする。

プラチナえるぼしの創設

女性活躍に関する取組が特に優良な事業主に対する特例認定制度(プラチナえるぼし(仮称))を創設する。
取得企業は、行動計画の策定義務が免除される。

育児・介護休業法

子の看護休暇・介護休暇が時間単位で取得可能に

育児や介護を⾏う労働者が⼦の看護休暇や介護休暇を柔軟に取得することができるよう、時間単位(従来、半⽇単位)で取得できるようになる。

健康保険法

オンライン資格確認の導入(令和3年3月より順次)

オンライン資格確認の導入に際し、資格確認の方法を法定化するとともに、個人単位化する被保険者番号について、個人情報保護の観点から、健康保険事業の遂行等の目的以外で告知を求めることを禁止(告知要求制限)する。

背景と概要

現行の被保険者証による資格確認では、資格喪失後の未回収の保険証による受診や、それに伴う過誤請求が請求時に判明。保険者・医療機関等の双方に負担が発生している。

そこで、保険医療機関等で療養の給付等を受ける場合の被保険者資格の確認について、確実な本人確認と保険資格確認を可能とし、医療保険事務の効率化や患者の利便性の向上等を図るため、オンライン資格確認の導入を進める。
また、オンライン資格確認に当たっては、既存の健康保険証による資格確認に加えて、個人番号カード(マイナンバーカード)による資格確認を可能とする。

具体的には、マイナンバーカードのICチップ又は健康保険証の記号番号等により、オンラインで資格情報の確認を可能となり、医療機関・薬局の窓口で、直ちに資格確認ができるようになる。

 
 

被保険者等記号・番号等の告知要求制限

被保険者記号・番号が個人単位化されたことに伴い、プライバシー保護の観点から、健康保険事業とこれに関連する事務以外に、被保険者記号・番号の告知を要求することを制限する「告知要求制限」が設けられている。

金融機関での口座開設の手続きなど、本人確認のために被保険者証の提示を求める場合には、告知要求制限に抵触しないよう、関係機関に以下のような留意点を周知することとする。
・本人確認書類として被保険者証の提示を受けた場合、当該被保険者証の被保険者記号・番号を書き写さないこと
・当該被保険者証の写しが必要な場合には、当該写しの被保険者記号・番号部分を復元できない程度にマスキングを施した上で確認記録に添付すること

延滞金の割合の特例

滞納した健康保険の保険料等に係る延滞金の割合について、当分の間、各年の租税特別措置法第94条第1項に規定する延滞税特例基準割合が年7.3%の割合に満たない場合には、その年中においては、年14.6%の割合については当該延滞税特例基準割合に年7.3%の割合を加算した割合とし、年7.3%の割合については、当該延滞税特例基準割合に年1%の割合を加算した割合(当該加算した割合が年7.3%の割合を超える場合には、年7.3%の割合)とすることとされている。

「延滞税特例基準割合」とは、平均貸付割合に、年1%の割合を加算した割合をいう(租税特別措置法第94条第1項)。
※延滞税特例基準割合→令和3年中:0.5%(平均貸付割合)+1%(加算割合)=1.5%

このため、延滞税特例基準割合(1.5%)に基づく令和3年1月1日以降の延滞金の割合は、納期限の翌日から3か月を経過する日までの期間(年2.5%)、納期限の翌日から3か月を経過する日の翌日以後(年8.8%)となる。

なお、徴収法や国民年金、厚生年金保険でも同様の改正が行われている。

国民年金法

2021年度の年金額は0.1%減

2021年度(令和3年度)年金額は0.1%減額。
引き下げは4年ぶり。
年金額の伸びを抑制するマクロ経済スライドは発動しない。

詳しくはこちらの記事からどうぞ。

年金額の改定ルールの見直し

従来、賃金が物価ほどに上昇しない場合には、物価変動ではなく賃金変動に合わせて年金額を改定するルールが導入されていたが、受給者への影響を考慮した例外的な取り扱いとして、賃金と物価がともにマイナスで賃金が物価を下回る場合には、物価に合わせて年金額を改定し、また、賃金のみマイナスの場合には、年金額を据え置くこととしていた。

しかしながら、この例外を改め、将来世代の給付水準の確保のため、賃金が物価よりも低下する場合には、賃金の低下に合わせて年金額を改定するようルールを見直すこととした。

まとめると…

 ●原則
・68歳前→名目手取り賃金
・68歳以後→物価

●物価>賃金なとき
・68歳前→名目手取り賃金
・68歳以後→名目手取り賃金

上記がプラス改定→マクロ経済スライド調整

2021年度の国民年金保険料

2021年度の国民年金保険料は16,610円。

計算式は、法定額17,000円×保険料改定率0.977=16,610円

未婚のひとり親の申請全額免除基準への追加について

国民年金保険料の申請全額免除基準は個人住民税非課税基準に準拠しており、今般、平成31年度税制改正大綱において、令和3(2021)年度分の個人住民税(所得割・均等割)から、児童扶養手当受給者である未婚のひとり親(前年の合計所得金額が135万円以下であるものに限る。)(地方税法において「単身児童扶養者」と定義される。)が、個人住民税の非課税措置の対象に加えられることとなったことに伴い、国民年金保険料の申請全額免除基準においても、その対象に地方税法上の未婚のひとり親を追加することとする。

また、現行の国民年金保険料の申請全額免除基準は、既に個人住民税非課税措置の対象である「地方税法に定める寡夫」を対象としていなかったが、年金制度においても、遺族基礎年金の対象を父子家庭に拡大するなど、男女差の解消を図りつつあるため、併せて対象に加えることとする。

現在、地方税法に定める障害者等の個人住民税非課税基準額及び国民年金保険料の申請全額免除の基準額は125万円。 令和3年度以降、障害者等の個人住民税非課税基準額が135万となることに合わせて、国民年金保険料の申請全額免除の基準額も135万円となるよう政令改正予定。

国民年金保険料免除及び学生納付特例の免除等該当基準に寡婦(前年の合計所得額が125万円以下である方に限ります。)は対象となっていたが、未婚のひとり親は含まれていなかった。

令和2年度税制改正により、令和3年度分の個人住民税から、未婚のひとり親(前年の合計所得金額が135万円以下である方に限る。)が、個人住民税の非課税措置の対象に加えられることから、国民年金の免除等該当基準においても「前年の合計所得金額が一定の基準額(※)以下の未婚のひとり親」が対象に加えられる。
※基準額については、前年の合計所得金額が135万円以下の方が免除等該当基準の対象となる

平成30年度税制改正への対応

保険料免除の判定等に当たり、基礎控除前の所得を用いている以下の制度について、平成30年度税制改正による「意図せざる影響や不利益」が生じないよう、国民年金保険料の免除制度等の基準額を一律10万円引き上げる見直しを行う。

全額免除 (扶養親族等の数+1)×35万円+32万円 障害者・寡婦・ひとり親

135万円

4分の3免除 88万円+扶養親族等の数×38万円
半額免除 128万円+扶養親族等の数×38万円
4分の1免除 168万円+扶養親族等の数×38万円
納付猶予 (扶養親族等の数+1)×35万円+32万円
学生納付特例 128万円+扶養親族等の数×38万円

 

 

 

脱退一時金の支給上限月数の見直しについて

日本に短期滞在する外国人に対する特例的な給付である脱退一時金について、令和2年改正法第1条及び第4条の規定により支給上限月数を政令で定めることとされることに伴い、国民年金法施行令及び厚生年金保険法施行令に当該支給上限月数に係る規定を置くとともに、当該支給上限月数については、現行の36月(3年)から60月(5年)に引き上げることとする。

寡婦年金の不支給要件の改正

寡婦年金を支給しないこととする要件を、その夫が障害基礎年金の受給権者であったことがあるとき又は老齢基礎年金の支給を受けていたときから、老齢基礎年金又は障害基礎年金の支給を受けたことがある夫が死亡したときとすることとした。

従来、夫に障害基礎年金の受給権がある場合、その受給権発生日と夫の死亡年月日が同月のときは、障害基礎年金の受給権が発生しているため、寡婦年金を受けることができなかった。

改正後は、老齢基礎年金の要件と同様に、夫が障害基礎年金の支給を受けずに死亡した場合(=障害基礎年金の受給権発生日と死亡年月日が同月のとき)は、寡婦年金の支給要件を満たすことになる。

学生納付特例に係る規定の整備について

学生納付特例の対象となる学生及び学生納付特例事務法人の範囲に係る規定の整備を行うこととする。

年金制度の改革と今後

厚生年金保険法

厚生年金保険における標準報酬月額の上限の改定(令和2年9月)

厚生年金保険法における従前の標準報酬月額の上限等級(31級・62万円)の上に1等級が追加され、上限が引き上げられる。

改正後の標準報酬月額等級の最低と最高は、次の通りとなる。

  • 1等級→88,000円
  • 32等級→650,000円

厚生年金保険の保険料率

第1号・2号・3号厚生年金被保険者に係る保険料率は、法定の上限(18.3%)に達しており、現在以上は上がらない。
一方、第4号厚生年金被保険者に係る保険料率は、法定の上限に達しておらず、段階的に引上げ途上である。

  • 第1号厚生年金被保険者(民間被用者)→1000分の183(18.3%)
  • 第2号厚生年金被保険者(国家公務員)→1000分の183(18.3%)
  • 第3号厚生年金被保険者(地方公務員)→1000分の183(18.3%)
  • 第4号厚生年金被保険者(私学共済職員)→1000分の164.78の範囲内で軽減した率

離婚分割の標準報酬改定請求の請求期限の特例に係る期間を延長

厚生年金保険法第78条の2第1項の規定による標準報酬改定請求(合意分割請求)の請求期限は、離婚した日の翌日から2年とされている。

ただし、按分割合を定める審判等が長期化し、離婚から2年を経過した日後に審判等が確定した場合、当該確定した日の翌日から起算して1月を経過する日までの間は標準報酬改定請求を行うことができる特例が設けられている。

この請求期限の特例について、按分割合を定める審判等が確定した日の翌日から起算して6か月を経過する日までの間は標準報酬改定請求が可能となるよう改正を行う。

審判等から1か月という請求期限は短すぎるとの意見を踏まえつつ、通常必要となる準備期間のほか、権利関係を早期に確定させる必要性を考慮して合理的な範囲内で延長を図ることとし、6か月としている。

厚生年金保険法における日本年金機構の調査権限の整備

現在、国税庁から、従業員を雇い給与を支払っている法人事業所の情報の提供を受ける等により、適用の可能性がある事業所への加入指導を実施しているが、厚生年金保険法第100条に基づく、事業所に対する立入調査については、現在は、適用事業所のみが対象とされている。

このため、未適用事業所であるものの、「適用事業所である蓋然性が高いと認められる事業所」については、法的権限に基づく立入調査が行えず、任意の指導等によって適用対策を進めている。

見直しの方向性こうした事業所に対しても、法的権限に基づく立入調査の対象に加える改正を行うことで、未適用事業所への実効性ある対応を可能とし、社会保険の適切な適用の促進に資するよう、規定の明確化を行う。

介護保険法

更新認定の有効期間の上限の引き上げ

要介護・要支援更新認定の二次判定において、直前の要介護度と同じ要介護度判定された者について、有効期間の上限を、36か月から48か月に延長することを可能とした。

確定給付企業年金法

老齢給付金の支給開始時期の設定可能範囲の拡大(令和2年6月5日施行)

老齢給付金の支給開始時期について、事業主等は60歳から70歳までの範囲で規約に定めることができることになった。

確定給付企業年金(DB)については、一般的な定年年齢を踏まえ、これまでは60歳から65歳の間で労使合意に基づく規約において支給開始時期を設定することができた。
 
今般、企業の高齢者雇用の状況に応じたより柔軟な制度運営を可能とするため、支給開始時期の設定可能な範囲を70歳までに拡大する。

確定拠出年金法

簡易企業型年金及び中小事業主掛金納付制度の範囲の拡大

中小企業向けに設立手続を簡素化した「簡易企業型年金(簡易型DC)」や、企業年金の実施が困難な中小企業がiDeCoに加入する従業員の掛金に追加で事業主掛金を拠出することができる「中小事業主掛金納付制度(iDeCoプラス)」について、制度を実施可能な従業員規模を100人以下から300人以下に拡大した。

確定拠出年金制度における脱退一時金の支給要件の見直しについて(DCにおける中途引き出しの改善)

確定拠出年金制度における脱退一時金の支給要件である通算拠出期間が1月以上3年以下であることについて、令和2年改正法第21条の規定によりその期間を政令で定めることとされることに伴い、確定拠出年金法施行令に当該期間に係る規定を置くとともに、当該期間については、1月以上5年以下と定めることとする。

脱退一時金の支給要件のうち通算拠出期間が政令事項とされ、国民年金における脱退一時金の支給上限年数の引上げ(3年→5年)と平仄を合わせて改正される。

執筆/資格の大原 社会保険労務士講座

金沢 博憲金沢 博憲

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